この記事では「尽力」について解説する。

端的に言えば尽力の意味は「全力を尽くすこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生の「むかいひろき」を呼んです。一緒に「尽力」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を活かし、「言葉」について分かりやすく解説していく。

「尽力」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 33168628

それでは早速「尽力」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「尽力」の意味は?

「尽力」には、次のような意味があります。

ある目的の実現のために、力を尽くすこと。「町の復興に―する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「じん‐りょく【尽力】」

「尽力」は「あることを達成するために全力を尽くす」ことを表す言葉です。「尽力します」「尽力いたします」「尽力した」のように動詞として使用されることが多いですね。「尽力」のように名詞で使用されることもあります。
日常会話ではあまり使用されませんが、ビジネスシーンなどかしこまった場面で使用される表現です。

「尽力」の語源は?

次に「尽力」の語源を確認しておきましょう。「尽力」の語源は正確なことが分かっていません。ただ、鎌倉時代には既に使われていた古い言葉のようです。

『正法眼蔵』という鎌倉時代の仏教思想書に「仏祖の道得を弁肯するとき、この道得おのづから三年・八年・三十年・四十年の功夫となりて、尽力道得するなり」という記述が見られます。

昔は「じんりき」と読むこともあったそうですが、現在は「じんりょく」と読むのが一般的です。

\次のページで「「尽力」の使い方・例文」を解説!/

「尽力」の使い方・例文

「尽力」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.首相はA国との関係改善のために尽力した。
2.お客様の問題解決のために尽力いたします。
3.先生のご尽力のおかげで志望校に合格できました。
4.計画が成功したのは、田中さんのご尽力の賜物です。
5.いじめ問題解決のためにご尽力くださいますよう、お願い申し上げます。

×.問題解決のために尽力を尽くします。

どの例文も「力を尽くす」というニュアンスで使われているのは共通しています。

例文1は、「関係改善のために全力を尽くした」という意味です。「尽力する」という形は、新聞記事やレポートで使用されることが多いですね。

例文2は、「問題解決のために全力を尽くします」という意味です。「わたし(達)が全力を尽くします」という意味の時は、多くは「尽力いたします」の形で使用します。ビジネス場面で取引先やお客様に対して使用することが多い形ですね。

例文3は、「先生が全力でサポートしてくれたおかげで…」という意味です。「力を尽くしてくれたこと」に対してお礼をする時は、「ご尽力のおかげで」を使用します。

例文4の「ご尽力の賜物」も、「力を尽くしてくれたこと」に対する感謝を表す表現です。「ご尽力の賜物です。」の形で、普通は文末で使用されます。

例文5は、「いじめ問題の解決に力を貸してくださいますよう…」という意味です。相手に対して「力を貸してほしい」「全力を尽くして手助けしてほしい」とお願いするときは、「ご尽力ください」を使用します。

最後に、「尽力を尽くす」という表現は誤りです。「頭痛が痛い」と同じタイプの誤用で、「尽くす」という意味が二重になってしまうからですね。

「尽力」の類義語は?違いは?

image by PIXTA / 19212756

「尽力」の類義語には「注力」「力添え」「献身」「努力」があります。それぞれ少しずつニュアンスが異なるので、一緒に確認していきましょう。

その1「注力」

「注力」は「あることに力を入れること、力を尽くすこと」という意味を持った、「尽力」とよく似た言葉です。

「注力」には「あることに力を集中させる」というニュアンスがありますが、「尽力」と異なり、「全力を出し尽くす」「100%の力を出す」というニュアンスがありません

たとえば、「今月の受験勉強は、英語に注力したいと思います。」という文では、「英語に力を集中させて取り組む」という意味になりますが、「英語に全力をささげて取り組む」という意味にはなりません。

全力か、そうでないか」が「尽力」と「注力」の違いですね。

\次のページで「その2「力添え」」を解説!/

その2「力添え」

「力添え」は、「他人の仕事を手助けすること、力を貸すこと」という意味を持った言葉です。「お」をつけて「お力添え」の形で使用することが多いですね。

相手に何か手伝ったもらった時に、「お力添えありがとうございました。」のように使うことが多いです。逆に、相手に何かを手伝ってほしい時に「お力添えをお願いいたします。」のように使うことも多いですね。

この「力添え」は、どんな小さな手助け・細かな手助けにも使用可能です。一方、「尽力」の場合は「全力を出す」というニュアンスがあるので、小さな手助け・細かな手助けには使用できません。

その3「献身」

「献身」は「他人やある物事のために、自身を犠牲にして尽くすこと」という意味の言葉です。

「尽力」との大きな違いは、「自身を犠牲にする」というニュアンスがあるかないか。「献身」には「自身を犠牲にする」というニュアンスがありますが、「尽力」にそのニュアンスはありません。

「献身的な対応」「献身いたします。」といった形で使用されることが多いです。

その4「努力」

「努力」も「ある目的のために力を尽くして励むこと」という意味を持った、「尽力」と似た言葉です。

「尽力」との大きな違いは、「努力」は「自分のために」力を尽くします。一方、「尽力」は「他者のために」力を尽くすことを表す言葉です。

力を尽くす相手が他人か自分か」が、「尽力」と「努力」の大きな違いですね。

「尽力」の対義語は?

image by PIXTA / 32815017

「尽力」の対義語には「骨惜しみ」があります。意味を見ていきましょう。

「骨惜しみ」

「骨惜しみ」は「苦労するのを嫌がって怠けること、手を抜くこと」という意味を持った言葉です。

「尽力」が「力を尽くすこと」を表すのに対し、「骨惜しみ」は「力を出さず手を抜くこと」を表しています。まさに反対の意味ですね。

\次のページで「「尽力」を使いこなそう」を解説!/

「尽力」を使いこなそう

この記事では「尽力」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「尽力」は「あることを達成するために全力を尽くす」ことを表す言葉です。類義語と比較したとき、「全力を尽くす」というニュアンスがあるかないかが、意味の違いを見分ける鍵になります。

対義語は「骨惜しみ」です。こちらは「力を出さず手を抜くこと」を表します。

今回、皆さんに「尽力」の意味や使い方を伝えるために「骨惜しみ」せずに「尽力」いたしました。意味や使い方が伝わっていれば幸いです!

" /> 「尽力」の意味や使い方は?例文や類語を日本語教師の大学院生がわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

「尽力」の意味や使い方は?例文や類語を日本語教師の大学院生がわかりやすく解説!

この記事では「尽力」について解説する。

端的に言えば尽力の意味は「全力を尽くすこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生の「むかいひろき」を呼んです。一緒に「尽力」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を活かし、「言葉」について分かりやすく解説していく。

「尽力」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 33168628

それでは早速「尽力」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「尽力」の意味は?

「尽力」には、次のような意味があります。

ある目的の実現のために、力を尽くすこと。「町の復興に―する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「じん‐りょく【尽力】」

「尽力」は「あることを達成するために全力を尽くす」ことを表す言葉です。「尽力します」「尽力いたします」「尽力した」のように動詞として使用されることが多いですね。「尽力」のように名詞で使用されることもあります。
日常会話ではあまり使用されませんが、ビジネスシーンなどかしこまった場面で使用される表現です。

「尽力」の語源は?

次に「尽力」の語源を確認しておきましょう。「尽力」の語源は正確なことが分かっていません。ただ、鎌倉時代には既に使われていた古い言葉のようです。

『正法眼蔵』という鎌倉時代の仏教思想書に「仏祖の道得を弁肯するとき、この道得おのづから三年・八年・三十年・四十年の功夫となりて、尽力道得するなり」という記述が見られます。

昔は「じんりき」と読むこともあったそうですが、現在は「じんりょく」と読むのが一般的です。

\次のページで「「尽力」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: