この記事では「精進」について解説する。

端的に言えば精進の意味は「一所懸命に努力すること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、日本文学を専攻し研究している翠を呼んです。一緒に「精進」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/翠

中古の日本文学を研究している。様々な時代やジャンルの作品を読み、ことばに触れている。中学校と高校の国語科の教員免許も取得しており、ことばについて分かりやすく説明する。

「精進」の意味や語源・使い方まとめ

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「精進」という言葉は、ビジネスなどのかしこまった場面でたびたび耳にすることでしょう。しかし、「精進」とはどのような意味で、どのような形で使うのが適切なのかよく分からない…という方も中にはいるのではないでしょうか。それでは早速「精進」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「精進」の意味は?

辞書によると、「精進」には、次のような意味があります。

(1)({梵}vrya の訳。毘梨耶とも音訳)ひたすら仏道修行にはげむこと。また、その心のはたらき。

(2)一定期間、言語・行為・飲食を制限し、身をきよめて不浄を避けること。物忌みすること。潔斎すること。精進潔斎。

(3)一般に、魚や肉類を食べないで菜食すること。また、その料理。

(4)一所懸命に努力すること。

(5)品行をよくすること。女色をつつしむこと。

出典:日本国語大辞典第二版(小学館)「精進」

現代のビジネスの場面において、「精進」は四つめの意味にあるように、「一所懸命に努力する」という意味で使われることが多いです。確かに現代において「精進」という言葉は「一つのことに集中し努力する」というイメージがありますね。しかし、辞書におけるその他の意味を見ると分かるように、「精進」という言葉は、もともと仏教の用語でした。

「仏道修行に専念する」ということが、「仕事や勉強などの広い場面で何かに専念する」という意味に変化したのですね。また、肉食や女色を禁止していた仏教の世界においては、「肉や魚を食べないこと」「女色を禁じること」も「精進」と言ったことが分かります。

お盆の時期に食べる動物性食品のない料理を「精進料理」と言い、菜種油などの植物性油を「精進油」と言いますが、これは仏教において肉や魚を食べないという意味の「精進」からきたものです。また、身内に不幸があった際、四十九日が明ける日に食べる「精進落とし」は、忌引きのために動物を食べない生活から通常の生活に戻るための区切りとなっています。

「精進」の語源は?

次に「精進」の語源を確認しておきましょう。先ほど見たように、「精進」とはかつて仏教の用語でした。仏教との結びつきの強い、古代インドのサンスクリット語では「vīrya(ヴィーリャ)」と読み「男らしさ」という意味があります。現代の「精進」とは意味が違いますね。

人々が仏様になるために行う修行に「波羅蜜」というものがあります。波羅蜜には十一通りもしくは六通りといった、二パターンの修行が存在しますが、「精進」は、その内のどちらにも含まれているのです。「精進」は、そこでは「常に活発で、献身的で、揺れ動かず、後戻りせず不屈である心の意思」「勤勉」といった意味を持っています。

「精進」という字にも注目しましょう。「精」という字は「まじりけのない」という意味を持っています。「目標に向かってひたむきに進む」ことが、仏道修行における「精進」の意味なのです。

つまり、「精進」の語源は仏教用語にあり、人々が悟り仏様になるために重要とされてきた修行の名前なのでした。

\次のページで「「精進」の使い方・例文」を解説!/

「精進」の使い方・例文

「精進」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.今後わが社のサービスを皆様に、さらにご満足していただけるよう一層精進してまいります。

2.この度は皆様に多大なるご迷惑をおかけしたことを、深くお詫び申し上げます。これからは、皆様からのご指摘をふまえて、ご期待に応えられるよう一層精進していく所存です。

3.昨年は大変お世話になり、深く感謝申し上げます。今年はより精進を重ねてまいります。どうぞよろしくお願い致します。

4.御社のために力の限り精進致しますので、よろしくお願い致します。

5.彼もこれから精進していくと思いますので、どうぞご指導のほどよろしくお願いします。

例文を見ると、「精進」はかしこまった場所の挨拶の場面で多く使われていますね。

1の例文では、ビジネスメールなどの会社の挨拶で用いられます。ここでは、「精進」は「精進してまいります」という形で使われていますが、これは使い方として間違いではありません。この「まいる」は「精進する」という動詞の直後に来るため、補助動詞として使われています。補助動詞は、本動詞の直後に付き、本来の動詞としての意味がほとんどない動詞です。「精進する」の後ろに「まいる」を付けることで、自分の立場をへりくだって言う、謙譲のニュアンスを出すことができます。

2の例文では、「精進」が謝罪の場面で用いられていますね。「精進」はこのように、謝罪に際して相手に誠意を示すためにも使うことができます。

3の例文は年賀状などで用いるものです。お世話になった取引先や上司などの目上の人に対して使うといいいでしょう。また、「精進を重ねる」という言葉は、「精進を何度も繰り返す」というニュアンスになり、一生懸命頑張るという自分の決意を相手に伝えるのに適した用法です。

4の例文は、履歴書や新入社員の挨拶などで用いることができるでしょう。

5の例文は、部下などの自分より目下の者を紹介するときに用います。自分より目下の者でしたら、他者を主語にして「精進」を使っても差し支えありません。反対に、自分より目上の人を主語として「精進」を使うのは失礼になりますので避けましょう。

「精進」の類義語は?違いは?

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ここまでで「精進」の意味や用法について紹介してきました。

ここからは、「精進」の類義語について見ていきましょう。

その1「邁進」

「邁進」は「まいしん」と読みます。「精進」と同じようにこちらもビジネスの場でよく使われていますよね。

「邁進」は「何事をも恐れることなく前進すること。」という意味を持ち、「力強く突き進む」「猪突猛進」といったイメージです。「コツコツと一所懸命に努力する」という「精進」とは少し意味が異なります。また、ことばの歴史としても「邁進」の方がはるかに新しいことばです。

「精進」と意味が似ているところもありますが、恐れず突き進むのか、一所懸命に努力するのかどちらを表現したいのかで使い分けましょう。

\次のページで「その2「尽力」」を解説!/

その2「尽力」

「尽力」も「力を尽くすこと。努力。」という意味を持ちます。「精進」には「一所懸命に努力する」という意味がありますが、「尽力」にはありません。

「尽力」は「精進」とは異なり目上の人に用いることもできます。その際は「ご尽力」と言葉を丁寧にして

・ご尽力いただきありがとうございました。
・ご尽力を賜りますようお願い申し上げます。

というように使いましょう。もちろん、目下の者に「尽力」を使うことはできます。

その3「研鑽」

「研鑽」は「学問などを深くきわめること。」という意味を持ちます。学問だけではなく、仕事や教養などに深く取り組むことに対して使うこともできますよ。「精進」とも似ていますが、「研鑽」ということばは「探究」「研究」といったイメージが強いです。

現代では「自己研鑽」という言葉が広く使われていますが、これは「キャリアアップ」と言い換えることもできるでしょう。また、実際に「研鑽」ということばを使う際には「研鑽を積む」「研鑽を重ねる」といった言い回しになることが多いです。

「精進」の対義語は?

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ここでは「精進」の反対の意味を持つ言葉について紹介します。「精進」とは「一所懸命に努力する」という意味ですから、対義語は「なまけた」という意味を持つことばです。

その1「怠惰」

「怠惰」は「しなければならないことをなまけること。おこたること。」を言います。向上心がなく、自分に甘くだらしがない際に使いますね。

「怠惰」は形容動詞ですので、「怠惰する」という言い回しはできません。「怠惰な生活」「怠惰な日々」と、何が怠惰なのか、何を怠惰に行うのかはっきりさせましょう。

\次のページで「その2「懈怠」」を解説!/

その2「懈怠」

「精進」はもともと仏教の用語ですから、仏教の用語における「精進」の対義語もあります。それが「懈怠」です。

「懈怠」は「けだい、けたい、かいたい」と読みます。仏教の用語としての意味は「心が勇敢ではないこと。善行を修めるのに積極的ではないこと。」です。現在は法律の用語で「義務付けられている行為をしないこと。一定の訴訟行為をなすべき期日にそれを怠り、または期間内に一定の訴訟行為をしないで過ごすこと。」という意味を持ちます。

「精進」を使いこなそう

この記事では「精進」の意味・使い方・類語などを説明しました。「精進」は仏教の用語に語源を持ち、女色の禁止などの意味も持ちますが、「一所懸命に努力する」という意味を現代では一般的に使っています。ビジネスの場面や学校のスピーチなどかしこまった場面で多く使われますが、「精進」の主語を誰に対して使っているかを確認して用いましょうね。「精進」の正しい意味を学習して、これからの生活も日々精進していきましょう。

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「精進」の意味や使い方は?例文や類語を文学院生がわかりやすく解説!

「精進」の使い方・例文

「精進」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.今後わが社のサービスを皆様に、さらにご満足していただけるよう一層精進してまいります。

2.この度は皆様に多大なるご迷惑をおかけしたことを、深くお詫び申し上げます。これからは、皆様からのご指摘をふまえて、ご期待に応えられるよう一層精進していく所存です。

3.昨年は大変お世話になり、深く感謝申し上げます。今年はより精進を重ねてまいります。どうぞよろしくお願い致します。

4.御社のために力の限り精進致しますので、よろしくお願い致します。

5.彼もこれから精進していくと思いますので、どうぞご指導のほどよろしくお願いします。

例文を見ると、「精進」はかしこまった場所の挨拶の場面で多く使われていますね。

1の例文では、ビジネスメールなどの会社の挨拶で用いられます。ここでは、「精進」は「精進してまいります」という形で使われていますが、これは使い方として間違いではありません。この「まいる」は「精進する」という動詞の直後に来るため、補助動詞として使われています。補助動詞は、本動詞の直後に付き、本来の動詞としての意味がほとんどない動詞です。「精進する」の後ろに「まいる」を付けることで、自分の立場をへりくだって言う、謙譲のニュアンスを出すことができます。

2の例文では、「精進」が謝罪の場面で用いられていますね。「精進」はこのように、謝罪に際して相手に誠意を示すためにも使うことができます。

3の例文は年賀状などで用いるものです。お世話になった取引先や上司などの目上の人に対して使うといいいでしょう。また、「精進を重ねる」という言葉は、「精進を何度も繰り返す」というニュアンスになり、一生懸命頑張るという自分の決意を相手に伝えるのに適した用法です。

4の例文は、履歴書や新入社員の挨拶などで用いることができるでしょう。

5の例文は、部下などの自分より目下の者を紹介するときに用います。自分より目下の者でしたら、他者を主語にして「精進」を使っても差し支えありません。反対に、自分より目上の人を主語として「精進」を使うのは失礼になりますので避けましょう。

「精進」の類義語は?違いは?

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ここまでで「精進」の意味や用法について紹介してきました。

ここからは、「精進」の類義語について見ていきましょう。

その1「邁進」

「邁進」は「まいしん」と読みます。「精進」と同じようにこちらもビジネスの場でよく使われていますよね。

「邁進」は「何事をも恐れることなく前進すること。」という意味を持ち、「力強く突き進む」「猪突猛進」といったイメージです。「コツコツと一所懸命に努力する」という「精進」とは少し意味が異なります。また、ことばの歴史としても「邁進」の方がはるかに新しいことばです。

「精進」と意味が似ているところもありますが、恐れず突き進むのか、一所懸命に努力するのかどちらを表現したいのかで使い分けましょう。

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