今回は、「ドルトンの原子説」について解説していきます。

ドルトンの原子説は、19世紀初頭に発表された原子関する仮説のことです。この仮説は、今日私たちが当たり前のことだと思っている化学の理論に非常に近いものとなっている。それゆえ、ドルトンの原子説は、当時としては先進的なものだったと言えるでしょう。ぜひ、この機会にドルトンの原子説についての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

ドルトンの原子説とは?

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ドルトンの原子説は、19世紀初頭にイギリスの物理学者・化学者ジョン・ドルトンが発表した理論です。この理論によって、近代および現代の化学の基礎が作られたと表現したとしても過言ではありません。現在中学校や高校で学習する化学の内容の多くは、ドルトンの原子説において述べられている内容に一致していますよ。

この記事では、ドルトンの原子説がどのような理論であるのかを解説しています。そして、この理論が化学の進歩にどのような影響を与えたのかということについても考えてみましょう。その一環として、ドルトンの原子説と関わりの深い法則についてご紹介しようと思います

はじめは、ドルトンの理論がどのようなものであるのか、どのような歴史をたどったのかといったことについて学びましょう。それでは、早速説明をはじめますね。

原子という概念の確立

原子という概念の確立

image by Study-Z編集部

今日を生きる私たちにとって、あらゆる物質が原子という粒から構成されているということは、当たり前のことのように思われます。このような概念は、中学校や高校に理科の授業においても、扱われていますよね。もはや、原子の存在というものは常識であると言えます。

ですが、昔の人々にとっては、このような理論は当たり前ではありませんでした。電子顕微鏡も存在しないような時代では、原子の存在を確認することもできません。では、原子の概念が提唱され始めたのはいつ頃なのでしょうか

原子のようなものが存在するという考えは、古代ギリシャの哲学者が最初に論じていたようです。ですが、サイエンスの視点で真剣に議論されるようになったのは、18世紀ごろだと考えられています。ニュートンなどが活躍した時代です。その後、ジョン・ドルトンが体系的な仮説である原子説を発表しました

ドルトンの原子説における原則

ドルトンの原子説における原則

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ここでは、ドルトンの原子説において提唱された5つの原則について解説します。この5つの原則こそが、原子説の真髄ですよ。

1つ目の原則は、「ある特定の元素の原子は、他の元素の原子と異なり、違いは質量によって判断できる」というものです。2つ目の原則は、「同じ元素の原子は、大きさ、質量、性質が一致する」というものですよ。3つ目の原則は、「化合物は2種類以上の原子が一定の割合で結合してできている」という内容になっています。4つ目の原則は、「化学反応では、原子の結合が変化するだけであり、原子が消滅したり、新たに発生したりすることはない」というものです。そして、5つ目の原則は「物質は原子という粒子から構成され、それ以上分割することができない」というものですよ。

これらの原則は、現在の化学理論に極めて近いものですよね。ドルトンの原子説が提唱された当時、いかに先進的な理論であったのかということがうかがい知れます。

\次のページで「ドルトンの原子説における矛盾点」を解説!/

ドルトンの原子説における矛盾点

ドルトンの原子説における矛盾点

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ドルトンの原子説は、今日の化学理論に近いものですが、いくつかの矛盾点があります。1つ目の矛盾点は、「同じ元素の原子は、大きさ、質量、性質が一致する」という部分です。これは、同位体の存在を否定していますよね。同位体は、陽子の数は等しいが、中性子の数が異なるような原子同士のことを表しています。つまり、化学的な性質は同じだが、質量はわずかに異なる原子が存在するという意味です。

また、「物質は原子という粒子から構成され、それ以上分割することができない」という点も間違っています。原子は、物質の最小単位ではありません。原子は、陽子、中性子、電子に分割することができますよね。さらに、これらの粒子より小さな、クォークという素粒子が発見されています。陽子や中性子、電子はクォークから構成されていますよ。

ドルトンの原子説と関係の深い法則

ドルトンの原子説と関係の深い法則

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続いては、ドルトンの原子説と関係の深い法則について学んでいきましょう。ここでは、2つの法則をご紹介します。以下で紹介する法則は、ドルトンが原子説を考える上でヒントとしたものです。そして、これらの法則は、ドルトンの原子説を用いることでメカニズムがよりはっきりするようになったものですよ

ですから、この2つの法則について学ぶことで、ドルトンの原子説が化学の進歩にどのような影響を与えたのかということが理解できます。それでは、解説を進めていきますね。

質量保存の法則

ドルトンの原子説が発表される以前に、アントワーヌ・ラヴォアジエが質量保存の法則を発見していました。質量保存の法則は、化学反応の前後で物質の質量は変化しないとするものです。この法則は、経験則によるものですよ。

例として、炭酸カルシウム(石灰石)に塩酸を加えて、二酸化炭素を発生させる実験を考えてみましょう。この実験では、反応前の炭酸カルシウムと塩酸の総質量と反応後の液体と気体となった二酸化炭素の総質量が等しくなります。これが質量保存の法則です。

そして、この法則はドルトンの原子説における原則である「化学反応では、原子の結合が変化するだけであり、原子が消滅したり、新たに発生することはない」につながっていると考えられます。また、ドルトンの原子説を用いると、質量保存の法則が成り立つ理由がよりはっきりしますよね。

\次のページで「倍数比例の法則」を解説!/

倍数比例の法則

最後に、倍数比例の法則について説明します。倍数比例の法則は、ドルトンが原子説を研究する途中で発見された法則です。そして、倍数比例の法則は、原子説の原則を支える重要な証拠とも表現されることがあります

倍数比例の法則は、同じ元素成分をもつ2つの化合物において、一種類の原子を同じ質量だけもつときに、もう一方の原子の質量比が簡単な整数比となるというものです。同じ元素成分をもつ2つの化合物の例としては、酸素と炭素で構成される二酸化炭素と一酸化炭素の組や水素と炭素で構成されるメタンとエタンの組などが挙げられます。

現代化学・近代化学の基礎を作ったドルトン

ドルトンが発表した原子説は、世界で初めて物質を構成する原子の概念を体系化した仮説です。この仮説には、いくつかの誤りが存在しました。ですが、ドルトンの原子説には、現代および近代の化学で用いらているような先進的な考え方がつまっていたのです。

それゆえ、ドルトンの原子説の発表は、現代化学・近代化学の夜明けの瞬間であったと表現することもできるかもしれません。ぜひ、この記事を読んで、ドルトンの原子説について学んでみてください。

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化学原子・元素物理物質の状態・構成・変化理科量子力学・原子物理学

3分で簡単ドルトンの原子説!理論の考え方を理系学生ライターが徹底わかりやすく解説!

今回は、「ドルトンの原子説」について解説していきます。

ドルトンの原子説は、19世紀初頭に発表された原子関する仮説のことです。この仮説は、今日私たちが当たり前のことだと思っている化学の理論に非常に近いものとなっている。それゆえ、ドルトンの原子説は、当時としては先進的なものだったと言えるでしょう。ぜひ、この機会にドルトンの原子説についての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

ドルトンの原子説とは?

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ドルトンの原子説は、19世紀初頭にイギリスの物理学者・化学者ジョン・ドルトンが発表した理論です。この理論によって、近代および現代の化学の基礎が作られたと表現したとしても過言ではありません。現在中学校や高校で学習する化学の内容の多くは、ドルトンの原子説において述べられている内容に一致していますよ。

この記事では、ドルトンの原子説がどのような理論であるのかを解説しています。そして、この理論が化学の進歩にどのような影響を与えたのかということについても考えてみましょう。その一環として、ドルトンの原子説と関わりの深い法則についてご紹介しようと思います

はじめは、ドルトンの理論がどのようなものであるのか、どのような歴史をたどったのかといったことについて学びましょう。それでは、早速説明をはじめますね。

原子という概念の確立

原子という概念の確立

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今日を生きる私たちにとって、あらゆる物質が原子という粒から構成されているということは、当たり前のことのように思われます。このような概念は、中学校や高校に理科の授業においても、扱われていますよね。もはや、原子の存在というものは常識であると言えます。

ですが、昔の人々にとっては、このような理論は当たり前ではありませんでした。電子顕微鏡も存在しないような時代では、原子の存在を確認することもできません。では、原子の概念が提唱され始めたのはいつ頃なのでしょうか

原子のようなものが存在するという考えは、古代ギリシャの哲学者が最初に論じていたようです。ですが、サイエンスの視点で真剣に議論されるようになったのは、18世紀ごろだと考えられています。ニュートンなどが活躍した時代です。その後、ジョン・ドルトンが体系的な仮説である原子説を発表しました

ドルトンの原子説における原則

ドルトンの原子説における原則

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ここでは、ドルトンの原子説において提唱された5つの原則について解説します。この5つの原則こそが、原子説の真髄ですよ。

1つ目の原則は、「ある特定の元素の原子は、他の元素の原子と異なり、違いは質量によって判断できる」というものです。2つ目の原則は、「同じ元素の原子は、大きさ、質量、性質が一致する」というものですよ。3つ目の原則は、「化合物は2種類以上の原子が一定の割合で結合してできている」という内容になっています。4つ目の原則は、「化学反応では、原子の結合が変化するだけであり、原子が消滅したり、新たに発生したりすることはない」というものです。そして、5つ目の原則は「物質は原子という粒子から構成され、それ以上分割することができない」というものですよ。

これらの原則は、現在の化学理論に極めて近いものですよね。ドルトンの原子説が提唱された当時、いかに先進的な理論であったのかということがうかがい知れます。

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