今回は「非電解質」について解説していきます。

非電解質は、物理化学の基礎的な用語の一つです。このような表現をすると、小難しいように聞こえますが、非電解質の概念は中学校の理科の教科書にも載っているほど有名です。この記事では、非電解質の定義や特徴を説明するだけでなく、非電解質の具体例についても複数紹介するつもりです。ぜひ、この機会に非電解質についての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

非電解質とは?

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非電解質は、物理化学を学習すると登場する用語の一つです。物理化学の用語と聞くと、難しい話題のように感じますが、非電解質については中学校の理科でも学習します。ですから、非電解質を学ぶにあたって、過剰に身構える必要はありませんよ。

この記事では、最初に非電解質の定義や特徴などについて説明します。その後、非電解質の具体的な例を挙げていきますよ。具体例を学ぶことで、非電解質に対する理解は深まるかと思います。それでは早速、非電解質についての解説を始めていきますね

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電解質との比較

非電解質の対極にある電解質について学ぶことで、非電解質という言葉の意味を理解することができます電解質は、水に溶かすと電離という現象が起こる物質のことを指しますよ。電離とは、化合物が水に溶ける際、陽イオンと陰イオンに分離することです。

例として、食塩(塩化ナトリウム)を水に溶かした食塩水を考えてみましょう。この水溶液には陽イオンのナトリウムイオンと陰イオンの塩化物イオンが解けていますよ。ですから、食塩は電解質であると判断できます。

一方で、非電解質は以上のような電解質とは全く異なる性質をもつのです非電解質は、水に溶かすときに電離が起こりません。つまり、非電解質は陽イオンと陰イオンに分離することなく、水に溶け込むことができるのですね。

非電解質の特徴

非電解質の特徴

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続いては、非電解質の特徴について考えていきましょう。その特徴の一つは、非電解質が溶解した水は電気をほとんど通さないということですよ電流の担い手になるイオンが溶液中に存在しないからです。純粋に近い水(精製水や蒸留水など)が電気をほとんど通さないということも、同様の理論で説明できます。

また、非電解質を水を溶かすと、酸の元となる水素イオンや塩基の元となる水酸化イオンが生じることもありません。ですから、非電解質を水に溶かした場合には、液性は中性に近くなります。つまり、非電解質溶液のpHは7に近い値になるのです。

非電解質の具体例

ここまで、非電解質の定義や特徴といった理論に近い内容の話をしてきました。以下では、非電解質の具体例として3種類の物質を紹介していきます。これらの物質は、私たちの生活を支える重要な化学物質ですよ。

非電解質の具体的な例を確認することで、非電解質についての理論もより深く理解できるようになるかと思います。理論との関連性を意識しながら、読み進めてみてくださいね。

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アルコール

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アルコールは、燃料消毒液洗浄剤として使われる物質です。また、アルコールの一種であるエタノールは酒類に含まれています。このようなことから、アルコールは私たちにとって身近な物質であると言えますね。アルコールは、炭素・水素・酸素から成る有機化合物で、構造中に酸素と水素が隣り合って結合した[-OH]というかたまりが存在することが特徴です。この[-OH]という構造のことをヒドロキシ基または水酸基と呼びます。

そして、アルコールは非電解質です。ここでは、アルコールが非電解質であることを活かした事例をご紹介しますね。純度の高いアルコール(無水エタノールなど)は、電子基板の洗浄剤などに利用できます。電子基板には、多くの電子部品が取り付けられているのです。電子基板を電気の通るもので洗浄すると、意図していない箇所に電気が流れてしまう恐れがあります。そのため、アルコールは電気を通さないので、このような用途に向いているのですね。

砂糖

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次に紹介する非電解質は砂糖です。砂糖は、甘い味のする調味料で、料理をする上で欠かせないものとなっています砂糖は炭水化物に分類され、炭素・水素・酸素から成る有機化合物ですよ。砂糖の主成分はショ糖(スクロース)です。この物質は、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)が結合して出来ています。

砂糖は非電解質なので、当然ながら砂糖水は電気を通しません。また、砂糖は電離しないので、砂糖水が酸性や塩基性を示すことはありません。酸は酸っぱさ、塩基は苦みの原因になります。このようなことからも、砂糖が甘みを感じる調味料であることが実感できますよね。

近年になって、砂糖のように甘みを感じる人工的な物質の研究が進められてきました。人工甘味料ですね。この物質は砂糖よりも少ない量で、強い甘みを感じられる物質です。ですから、健康食品などへの応用が期待されています。そして、この人工甘味料の多くも非電解質であるとされていますよ

ベンゼン

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最後に、ベンゼンという非電解質について紹介します。ベンゼンが非電解質としての性質を活かしたような用途で使われる事例は非常に少ないのですが、幅広い分野で利用される重要な物質なので今回はとりあげました

ベンゼンは、環状につながった6つの炭素原子の周囲に、水素が6つ結合した構造をもちます。そして、6つの炭素原子は同一平面上に存在していますよ。また、炭素原子の周りには電子雲と呼ばれる電子が高確率で存在する場所が存在します。

ベンゼンは、様々な樹脂繊維の原料になったり、多くの試薬の原料になったりしますよ。具体的には、一部のプラスチック製品、ゴムタイヤなどにベンゼンの構造を含む化合物が使用されています。それゆえ、ベンゼンは工業的に価値のある物質だと言えますね。ただし、ベンゼンには発がん性などの毒性があるので、取り扱いには注意が必要です

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非電解質について学ぼう!

非電解質の概念は中学校の理科で学習するような比較的簡単なものです。しかしながら、性質などを深く理解しているという方は多くはないかもしれません。この記事では、具体的な例を挙げながら、非電解質の性質を詳しく説明しました。そして、その性質がどのように活かされているのかについても触れましたよ。

初歩的な内容でありながら、奥の深い非電解質について、ぜひこの機会について学んでみてください。雑学として知っておいても損はないはずです。

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化学物質の状態・構成・変化理科

3分で簡単非電解質!電解質との違いとは?理系学生ライターがわかりやすく解説!

今回は「非電解質」について解説していきます。

非電解質は、物理化学の基礎的な用語の一つです。このような表現をすると、小難しいように聞こえますが、非電解質の概念は中学校の理科の教科書にも載っているほど有名です。この記事では、非電解質の定義や特徴を説明するだけでなく、非電解質の具体例についても複数紹介するつもりです。ぜひ、この機会に非電解質についての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

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現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

非電解質とは?

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非電解質は、物理化学を学習すると登場する用語の一つです。物理化学の用語と聞くと、難しい話題のように感じますが、非電解質については中学校の理科でも学習します。ですから、非電解質を学ぶにあたって、過剰に身構える必要はありませんよ。

この記事では、最初に非電解質の定義や特徴などについて説明します。その後、非電解質の具体的な例を挙げていきますよ。具体例を学ぶことで、非電解質に対する理解は深まるかと思います。それでは早速、非電解質についての解説を始めていきますね

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