今回は「可逆反応」について解説していきます。

可逆反応は、化学反応の一種です。物理化学の基本的な内容の一つです。可逆反応の概念は、化学反応に関する考察をする際に不可欠なものになっている。今回は、可逆反応とは何かを解説するだけでなく、身近な事例を含めた可逆反応の具体例も紹介します。ぜひ、この機会に可逆反応についての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

1.不可逆反応と可逆反応

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この記事のメインテーマは、可逆反応です。可逆反応というのは、化学反応の分類の1つで、その対極に不可逆反応が存在します。そのため、可逆反応について理解するためには、不可逆反応についても理解する必要がありますよ。

この記事では、最初に不可逆反応と可逆反応の比較を行い、可逆反応についての理解を深めていきます。そして、その後に可逆反応の具体例をいくつか紹介しますね。具体例を学ぶことで、可逆反応の理論に対する理解も深まるはずです。

また、見慣れない用語や言葉が登場することがあるかもしれません。その際は、用語や言葉の定義を丁寧に確認しましょう。

1-1不可逆反応とは?

1-1不可逆反応とは?

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一般的な化学反応A+B→C+Dを考えます。物質AおよびBから、物質CおよびDが生成するという反応です。不可逆反応では、物質AおよびBが反応して、物質CおよびDに変化してしまうと、反応が逆戻りすることはありません。つまり、反応は右向きにのみ進行するということです。

ほとんどの不可逆反応では、反応物の安定性よりも生成物の安定性が十分に高くなっています。そのため、一度生成物が出来上がると、生成物が不安定な反応物に戻るのは、簡単ではなくなるのです。以上が不可逆反応の説明となります。

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1-2可逆反応とは?

1-2可逆反応とは?

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可逆反応では、不可逆反応の場合と異なり、反応物から生じた生成物が再び反応物に戻ることがあります。このように、生成物が反応物に戻るような反応を逆反応と呼びますよ。可逆反応は一般的に、A+B⇄C+Dと表されます。不可逆反応を表す化学反応式と違い、逆反応を表す左向きの矢印が加わっていますよね

可逆反応では、どのように反応が進んでいくのかを考えていきましょう。例として、A+B⇄C+Dという反応を考えますね。反応初期では、反応物AおよびBから生成物CおよびDが次々と生成されますよ。時間が経過すると、生成物の濃度が増えていきます。それによって、生成物CおよびDから反応物AおよびBが生成する反応が生じますよ

さらに、時間が経つと生成物と反応物が出来上がる速度が一致し、見かけ上反応が泊まった平衡状態に達します。これが、可逆反応の特徴です。

2.可逆反応の例

ここまでは、不可逆反応との比較を通して、可逆反応とは何かを解説してきました。以下では、可逆反応の具体例をいくつか紹介します。身近な事例もご紹介しますので、ぜひ目を通してみてくださいね。

具体例を知ることで、可逆反応の理論に関する知識もより確かなものになるはずです。それでは、可逆反応の具体例の説明を始めますね。

2-1グルコースの異性化

2-1グルコースの異性化

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一つ目に紹介する可逆反応の例は、グルコースの異性化です。グルコース(ブドウ糖)は、単糖類の一種ですよ。グルコースには様々な種類があり、構造の異なるアルファグルコースベータグルコース鎖状グルコースがそれぞれ存在します。これらの相互変化は、可逆反応ですグルコースを水溶液とし、十分に時間が経過すると平衡状態となり、3種のグルコースは決まった割合に落ち着きます

また、鎖状グルコースの構造中には、還元作用のあるアルデヒド基が含まれていますよ。そのため、グルコースは、銀鏡反応フェーリング反応を生じさせることができます。これらの反応は、アルデヒド系の化合物に特有なものであり、有機化合物の同定のために活用されているのです。

\次のページで「2-2アンモニアの生成」を解説!/

2-2アンモニアの生成

2-2アンモニアの生成

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触媒を用いて、水素分子H2と窒素分子N2を反応させると、アンモニア分子NH3が生じます。化学反応式で表現すると、H2+N2⇄NH3となりますよ。これは、アンモニアを工業的に量産する際に用いられている化学反応です。このようなアンモニア製造法は、ハーバー・ボッシュ法と呼ばれています。触媒には、酸化鉄Fe3O4が用いられることが一般的ですよ

この反応は、可逆反応ですから、時間が経過すると平衡状態に達します。平衡状態に達すると、それ以上アンモニア分子を生じさせることは不可能となりますよね。これは、用意した水素分子と窒素分子のすべてをアンモニアにすることができないことを意味しますよ

このような理由から、実際にアンモニアを製造する際は、工夫が必要となります。その工夫とは、温度や圧力をコントロールし、生成されるアンモニアの量を最大化することです。ただし、このような工夫には手間がかかるので、経済性が低下します。

2-3ニクロム酸イオンとクロム酸イオンの反応

2-3ニクロム酸イオンとクロム酸イオンの反応

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最後に紹介する可逆反応の例は、ニクロム酸イオンCr2O72とクロム酸イオンCrO42の反応です。両者は、簡単な操作で相互変化することが知られており、可逆反応と捉えることができます。簡単な操作というのは、pHの操作のことです。pHは溶液に含まれている水素イオン数を指標化したもので、酸を加えるとpHは小さくなり、塩基を加えるとpHは大きくなりますよ。

クロム酸イオンCrO42が多く含まれる水溶液は、黄色を示します。ここに、酸を加えてpHを大きくすると、溶液は橙赤色に変化しますよ。ニクロム酸イオンCr2O72を含む水溶液は橙赤色ですから、クロム酸イオンCrO42がニクロム酸イオンCr2O72に変化したことがわかりますね。一方、ニクロム酸イオンCr2O72が含まれる水溶液に塩基を加えてpHを小さくすると、クロム酸イオンCrO42が生じて溶液は橙赤色から黄色に変化します。

可逆反応について学ぶ意義

可逆反応は、物理化学の基礎的内容の一つです。それゆえ、化学平衡などの発展的内容を理解するためには、可逆反応の知識が不可欠となります。今回、具体例としてとりあげた化学反応の最適条件を求めるためにも、発展的内容が必要なのです。

また、このような発展的な内容を学ばない場合であっても、可逆反応の概念は知っておいて損はしないであろうものですよ。ぜひ、この記事を読んで、可逆反応についての理解を深めてみてくださいね。

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3分で簡単可逆反応!どんな反応?不可逆反応とは?理系学生ライターがわかりやすく解説!

2-2アンモニアの生成

2-2アンモニアの生成

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触媒を用いて、水素分子H2と窒素分子N2を反応させると、アンモニア分子NH3が生じます。化学反応式で表現すると、H2+N2⇄NH3となりますよ。これは、アンモニアを工業的に量産する際に用いられている化学反応です。このようなアンモニア製造法は、ハーバー・ボッシュ法と呼ばれています。触媒には、酸化鉄Fe3O4が用いられることが一般的ですよ

この反応は、可逆反応ですから、時間が経過すると平衡状態に達します。平衡状態に達すると、それ以上アンモニア分子を生じさせることは不可能となりますよね。これは、用意した水素分子と窒素分子のすべてをアンモニアにすることができないことを意味しますよ

このような理由から、実際にアンモニアを製造する際は、工夫が必要となります。その工夫とは、温度や圧力をコントロールし、生成されるアンモニアの量を最大化することです。ただし、このような工夫には手間がかかるので、経済性が低下します。

2-3ニクロム酸イオンとクロム酸イオンの反応

2-3ニクロム酸イオンとクロム酸イオンの反応

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最後に紹介する可逆反応の例は、ニクロム酸イオンCr2O72とクロム酸イオンCrO42の反応です。両者は、簡単な操作で相互変化することが知られており、可逆反応と捉えることができます。簡単な操作というのは、pHの操作のことです。pHは溶液に含まれている水素イオン数を指標化したもので、酸を加えるとpHは小さくなり、塩基を加えるとpHは大きくなりますよ。

クロム酸イオンCrO42が多く含まれる水溶液は、黄色を示します。ここに、酸を加えてpHを大きくすると、溶液は橙赤色に変化しますよ。ニクロム酸イオンCr2O72を含む水溶液は橙赤色ですから、クロム酸イオンCrO42がニクロム酸イオンCr2O72に変化したことがわかりますね。一方、ニクロム酸イオンCr2O72が含まれる水溶液に塩基を加えてpHを小さくすると、クロム酸イオンCrO42が生じて溶液は橙赤色から黄色に変化します。

可逆反応について学ぶ意義

可逆反応は、物理化学の基礎的内容の一つです。それゆえ、化学平衡などの発展的内容を理解するためには、可逆反応の知識が不可欠となります。今回、具体例としてとりあげた化学反応の最適条件を求めるためにも、発展的内容が必要なのです。

また、このような発展的な内容を学ばない場合であっても、可逆反応の概念は知っておいて損はしないであろうものですよ。ぜひ、この記事を読んで、可逆反応についての理解を深めてみてくださいね。

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