この記事では「折衝」について解説する。

「折衝」については耳慣れない奴も多いでしょう。ビジネスシーンでの出番が多いと言えば多いが、それでも頻出する単語とは言い難い。そのため、ふいに出てくると「これは何?どう読むの?どういう意味?」とぎょっとされる言葉でもあるな。

元建築系企業社員、現言葉大好きライターのsasaiを呼んです。一緒に「折衝」の意味や語源、言い換えなどを見ていきます。

ライター/sasai

元会社員の現役フリーライター。言葉が好きで文章が好き。読むのも書くのも大好きで、海外小説からビジネス書まで何でも読む本の虫。こだわりをもって言葉の解説をしていく。

「折衝」ってどういう意味?

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「折衝」の意味は検索すると下記の結果が出てきます。

折衝(せっしょう)とは、利害の一致しない相手と、問題の解決に向けて、話し合いなどの手段によって駆け引きすること。双方が納得できるように互いの要求をすり合わせ、落とし所を探り、折り合いを付ける、そうした営みと解釈される。

出典:Weblio辞書「折衝 意味」

ポイントは「誰に対して」「何を行い」「何をゴールとするのか」の3つとなります。

まず、「誰に対して」については「利害の一致しない相手」です。話し合いが難航するのが、この時点でほぼ決定しています。次の「何を行い」については「話し合いによる駆け引き」です。手段はあくまで話し合いであり、議論というよりは駆け引きとなります。そして肝心なゴールは「落としどころを見つける」ことです。つまり、話し合いが決裂したり決着がつかないままになった場合、それは「折衝」したということになりません。

「折衝」の読み方は難しい?

「折衝」は上記に記載のあるとおり、「せっしょう」と読みます。読み間違いが発生するというよりは、そもそも読めない、読み方に想像がつかないと思われることが多いです。しばしば難読単語とみなされることもあります。「折衝」の「折」の字は「骨折(こっせつ)」の「せつ」であり、「衝」の字は「衝撃(しょうげき)」の「しょう」であるため、漢字を分解するとやや当たりを付けやすいでしょう。

\次のページで「「折衝」の使い方」を解説!/

「折衝」の使い方

「折衝」は以下のように使います。

1.相手の会社と「折衝」を重ね、ようやく結論が出た。
2.彼女は「折衝」を得意とする有能な社員だ。
3.このプロジェクトは多方面に対する「折衝」が必要になるだろう。

使用する機会としては、主にビジネスシーンでの場面となります。相手と駆け引きを伴う話し合いが行われる場面は、ビジネスの世界か、政治の世界にほぼ限定されているからです。日常生活において「折衝」という言葉が出てくることは、あまりありません。「折衝」の知名度の低さの原因は、この使用場面での絞られ方も大きいといえます。

政治・経済には「折衝」を含める言葉が多数!

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「折衝」という単語が含まれる言葉をいくつか解説します。主にビジネス・政治の世界において使用されますが、ビジネスも政治も、私達の生活になくてはならないものです。いつどのような場面で出てきてもうろたえずに済むよう、本記事を参考に押さえてください。

その1 「折衝力」

「折衝力」とは、「折衝」を行う「能力」のことです。「折衝」の意味が分かっていれば、「折衝力」という能力がいかに大きなものか推し量れるでしょう。「折衝力」を持つ人は、どのような会社でも重宝されます。就職活動の際は、自己アピールにも使用できる言葉です。「私は折衝力に長けています」と自信を持って言うことができれば、かなりのイメージアップに繋がります。

その2 「折衝経験」

「折衝経験」とは「折衝」を行った「経験」のことです。「折衝」の指す範囲に対し、人によって認識にややズレが生じやすい言葉でもあります。「折衝に当たったことがある経験」、つまり相手と駆け引きをしたことがあるとして「折衝経験」という人。もしくは「折衝を遂げた経験」、つまり「駆け引きの末に結論を出した」ことを「折衝経験」という人、両方がいます。

しかし「折衝」に当たって最も難しくかつ肝心な部分は、「落としどころに話を落ち着かせる」という点にあると言えるでしょう。話し合いのテーブルにつくだけでよいのであれば、ある程度誰であっても可能ですが、双方が納得する結論まで辿り着くのは至難の業となります。したがって、前者の「折衝」の範囲は、厳密には「折衝経験がある」とは言い難いです。

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その3 「顧客折衝」

「顧客折衝」という言葉はビジネスでたびたび登場する単語です。文字通り、「顧客」に対する「折衝」を指しています。「顧客折衝」の難しい部分は、「顧客」とは利害が一致しない場合もありますが、かといっておろそかに扱えないという点です。

「利害が一致しない相手」はビジネスにおいて多数存在していますが、競合他社などライバルである立場の相手に対しては、良い条件を引き出すことが目的となります。いわば、駆け引きに勝つ事がゴールとなるわけです。しかし顧客に対しては、自分の利益だけを追求していると、結論が出た後でそっぽを向かれてしまいます。

おまけ 「交渉」とどう違うの?同じじゃない?

「折衝」はしばしば「交渉」と同じではとみなされることもあります。双方相手と対話するという点は共通しており、「このように話し合ったら折衝であり、こうなったら交渉である」などという定義があるわけでもありません。したがって、部分的に同じではあります。

「折衝」と「交渉」の違いは、結論にあると言えるでしょう。上記のトピックに記載のあるとおり、「折衝」は最終的に「双方が納得する結論を出す」ことを指します。それに対して「交渉」は「話し合い」そのものを指しており、結論が出るか出ないかは関係がありません。

「折衝」の語源は?

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「折衝」の語源は以下の通りです。

折衝は、中国の古典である「晏子春秋」から生まれた故事成語である。

~中略~

斉に攻め入りたい晋が高官を派遣し、様子を探るべく酒席で斉の君主に対しわざと礼儀を欠いた行いをしたところ、同席していた晏子らが大国である晋に臆することなくその行いや要求をはねのけたのである。この斉の毅然とした対応を受けて晋は斉を攻めることを諦めたが、これについて孔子は、「夫不出於尊俎之間 而知千里之外 其晏子之謂也 可謂折衝矣」と発言し、酒の席から相手を見通し矛先を折くとはまさしくこの事で、さすが晏子の手腕だとして評価した。

折とは、「くじく」と読み、利害の相反する相手の攻撃をはねのけることを意味し、衝とは、当時の中国で戦に用いられていた戦車を指す言葉で衝いてくる矛先を意味する。これらのやり取りが転じて、利害が一致しない相手と駆け引きし折り合いを付けるといった意味の折衝という言葉が生まれたとされている。

出典:Weblio辞書「折衝 意味」

内容が少々難しく見えるかもしれませんが、端的にまとめると、「こちらを格下だと思い、話し合いの場で無礼な振舞をした相手に対して、へりくだることなく毅然とした態度で接したため、相手が考えを改めた」という話です。

上記の故事成語は話し合いというよりも、態度が評価されたという話になりますが、いずれにしろ「武力を使うことなく、相手のことを見通し双方結論に達した」という点は現在の「折衝」と通じています。単なる交渉とは違い、相手を出し抜こうと双方考えていることから、「駆け引き」というニュアンスもすでに存在していることがわかるでしょう。

\次のページで「時代を問わず求められる「折衝」」を解説!/

時代を問わず求められる「折衝」

「折衝」の示している行為は、時代を問わず求められていることです。話し合いにより、利害の一致しない相手と妥協点を探るという行為は、たとえ「折衝」という言葉を知らなくても、経験がある人も多いでしょう。

だからこそ、「折衝」という言葉を知ることは有意義です。「折衝」に関する知識はなくても「駆け引きをして双方納得する落としどころを見つける」、と表現することもできます。しかし「折衝」という言葉を知って置き換えた方が、自分の考えをより周りに正確に伝えることができ、やり取りがスムーズです。「折衝」に限りませんが、「このことを示す言葉って、一言で何かないかな?長々と説明するのは嫌だな…」と感じることはないでしょうか。そういう時こそ、言葉の知識を利用して、正確かつ簡潔に物事を表現することができるのです。

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国語言葉の意味

読み方すらもパッとはわからない「折衝」の意味って?意味・使い方・語源を言葉大好きライターがわかりやすく解説!

この記事では「折衝」について解説する。

「折衝」については耳慣れない奴も多いでしょう。ビジネスシーンでの出番が多いと言えば多いが、それでも頻出する単語とは言い難い。そのため、ふいに出てくると「これは何?どう読むの?どういう意味?」とぎょっとされる言葉でもあるな。

元建築系企業社員、現言葉大好きライターのsasaiを呼んです。一緒に「折衝」の意味や語源、言い換えなどを見ていきます。

ライター/sasai

元会社員の現役フリーライター。言葉が好きで文章が好き。読むのも書くのも大好きで、海外小説からビジネス書まで何でも読む本の虫。こだわりをもって言葉の解説をしていく。

「折衝」ってどういう意味?

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「折衝」の意味は検索すると下記の結果が出てきます。

折衝(せっしょう)とは、利害の一致しない相手と、問題の解決に向けて、話し合いなどの手段によって駆け引きすること。双方が納得できるように互いの要求をすり合わせ、落とし所を探り、折り合いを付ける、そうした営みと解釈される。

出典:Weblio辞書「折衝 意味」

ポイントは「誰に対して」「何を行い」「何をゴールとするのか」の3つとなります。

まず、「誰に対して」については「利害の一致しない相手」です。話し合いが難航するのが、この時点でほぼ決定しています。次の「何を行い」については「話し合いによる駆け引き」です。手段はあくまで話し合いであり、議論というよりは駆け引きとなります。そして肝心なゴールは「落としどころを見つける」ことです。つまり、話し合いが決裂したり決着がつかないままになった場合、それは「折衝」したということになりません。

「折衝」の読み方は難しい?

「折衝」は上記に記載のあるとおり、「せっしょう」と読みます。読み間違いが発生するというよりは、そもそも読めない、読み方に想像がつかないと思われることが多いです。しばしば難読単語とみなされることもあります。「折衝」の「折」の字は「骨折(こっせつ)」の「せつ」であり、「衝」の字は「衝撃(しょうげき)」の「しょう」であるため、漢字を分解するとやや当たりを付けやすいでしょう。

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