キャンプやBBQで紙や木を燃やした後、黒い燃えかすが出来ることでしょう。またBBQで肉や野菜を火の中に落としてしまった場合も燃えカスができる。これらの燃えカスを「炭(すみ)」と言ったり、「灰(はい)」と言ったりする。両者の違いは一体何でしょうか。また、違いは何でしょうか?理科教員免許持ちのライターR175と解説していこう。

ライター/R175

とある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の教員免許持ち。教科書には出てこない日常の身近な現象に結びつけて分かりやすい解説を強みとする。

1.炭化反応

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炭と灰の違いを理解する上で「炭化反応についても抑えておく必要があります。炭化反応とは、字の如く「炭に化ける」反応のことで、炭とは炭素のこと。炭素は揮発しにくいため、有機物など炭素を含む分子を特定条件下で燃焼させると炭素が残こる、これが炭化反応です。本記事では、「炭」と「灰」の違いに焦点を当てながら炭化反応について述べたいと思います。

2.完全燃焼と不完全燃焼

目標に向かって努力し、力を出し切れた場合を完全燃焼、思うような成果を残せなかったら「不完全燃焼」という言い方をしますね。理科でいう完全燃焼、不完全燃焼もこれに近い概念で、完全燃焼では燃焼しきっている不完全燃焼では燃焼できるものがまだ残っている状態です。

燃焼とは

まず燃焼に関して触れておきましょう。燃焼とは、可燃物が熱を発生させながら激しく酸素と結びつく酸化反応」のことです。特に気体が燃焼する現象は「炎」と呼ばれます。可燃物としてイメージする有機物の酸化だけでなく、例えばマグネシウムなどの金属が酸化する反応も燃焼です。

また、広い意味では生体内で起きる酸化反応も「燃焼」であり、例えば「脂肪の燃焼」といった使い方をしますが、これは脂肪酸が酸化る反応を指します。

完全燃焼と灰

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キャンプファイヤで燃やす紙や木材などの有機物(主にC、H、Oの元素から成る)を熱エネルギーを与えて酸化させると、最終的には二酸化炭素(CO2)と水(H2O)になりますね。十分な酸素を与えて燃焼させて有機物を燃え尽きさせて、二酸化炭素と水に変える場合が完全燃焼です。例としてメタンの反応式は以下のようになります。

\次のページで「不完全燃焼と炭」を解説!/

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完全燃焼では、Cは全て二酸化炭素となってしまい残りません。残るのは、生物体内に微量に存在し、燃焼することができない無機物の残留物、特に’カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの金属からなる化合物のみであり、これらが「」の正体です。

不完全燃焼と炭

一方で、酸素が十分に供給されない状態で燃焼させ、二酸化炭素や水に変化しきらず、炭素(C)や一酸化炭素(CO)の状態で残る場合が不完全燃焼となります。炭素(C)は、元々結合していたOやHは熱分解によって結合が切られるのですが、その後酸素と結びつくことが出来ずに残っている状態で、一酸化炭素はその炭素が酸化される時に十分な酸素がないためにCO2まで至らず、不完全に酸化がされている状態です。上述の化学反応式にて、酸素が少ないと一部の炭素はOとむずびつくことができません。「」は木材を温度等をコントロールし意図的に不完全燃焼させ炭素の状態で残したもので燃料となります。

火災で起きる燃焼はほとんどが不完全燃焼

火災において、恐ろしいのは炎よりも一酸化炭素中毒と言われています。なぜなら一酸化炭素を吸い込むと体内に酸素を取り込みにくくなるから。一酸化炭素は酸素より200~250倍程度血中のヘモグロビンと結合しやすく、本来結合すべき酸素よりも優先して結合していまい、その結果酸素が運搬されにくくなるのです。

火災現場では酸素の供給が少ない状態で燃焼が進むため一酸化炭素が多く発生します。室内にある空気中の酸素ではとても足りません。例えば、120gのグラファイト(大きさは5cm立方より小さい)が燃焼する場合を考えてみましょう。炭素の分子量を12とすると、120gの炭素は10mol。10molの炭素を完全燃焼させるには10molの酸素が必要ですね。標準状態で1molの酸素が22.4Lとすると、10molでは224L。空気中の酸素の割合は約20%ですから、これだけの酸素を得るためには1120Lの空気が必要で、これはお風呂役6杯分の体積に相当します。わずか5cm立方の炭素を燃焼させるだけでこれだけの空気が必要なわけですから、酸素不足の状態で燃焼されるのが容易に想像されますね、

3.炭化反応

3.炭化反応

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「炭化反応」は「炭」を得るための反応、すなわち不完全燃焼で、特に炭素の状態で多く残るように設計されています。炭素Cを含む化合物に熱を加えると、まずは熱分解によって炭素原子と他の原子・分子との結合が切られますが、周囲に酸素があると炭素が燃焼されて二酸化炭素となって失われてしまいますね。

そこで炭化装置では、極力酸素が入らないようにします。具体的には、一旦炉内を真空引きしたのち、アルゴンや窒素などの反応性が低い気体を入れてから熱をかけるのです。ただし炉内を完全真空にできない以上、微量に酸素が残ったままとなるため、一部は二酸化炭素として失われてしまいます。

4.炭化反応と汚泥物の処理

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ところで、水処理の過程で発生する「汚泥」を炭化反応させて、環境負荷の少ない処理をするだけでなく、バイオマスエネルギーとして利用する取り組みがなされています。

汚泥の脱水処理

排水処理にて発生する汚泥は放置すると、腐敗や悪臭、感染症の原因となり衛生面で問題があるため適切に処理する必要があります。汚泥は99%以上が水分であるため、このまま熱処理することができません。水分のみをろ過したり、遠心分離装置によって水分を飛ばしたりする等の脱水処理を行い水分を75%程度まで減らす工程が必要です。この処理を施したものが脱水ケーキまたは単に「ケーキ」と呼ばれることもあります。

「ケーキ」というとお菓子を思い浮かべますが、英語の"cake"は「平たく固めたもの」を意味し、脱水した汚泥もこれに相当するわけです。この脱水ケーキは英語で[Dewatered cake]などと表現されスペルはお菓子のケーキと同じ単語が当てられています。

 

\次のページで「脱水ケーキの炭化処理」を解説!/

脱水ケーキの炭化処理

脱水ケーキを炭化炉にて不完全燃焼させれば、バイオマスエネルギーとして利用可能です。脱水ケーキに含まれる有機物(主にC、O、Hの元素)を、酸素を与えないで熱をかけると、これらの結合が切られOとHは水となりますが、揮発性の低い炭素分はそのまま残ります。脱水ケーキを焼却した場合、残るのは「灰」に当たる産業廃棄物ですが、炭化処理を行えば「炭」として産出され、燃料として利用可能です。

加えて、炭化処理では脱水ケーキを焼却する場合と比較してCO2ガスの発生を大幅に削減できるため「クリーン」な処理方法と言えます。

炭と灰の違いおよび炭化反応

炭は不完全燃焼によって残留する炭素のことで、は炭素が完全燃焼し、燃焼させることができない微量の金属化合物などが残ったものです。

可燃物が一般に、炭素と微量の金属化合物から成ると考えると、炭素が残っていたら「炭」で、炭素を燃焼させてしまった後の状態が「灰」となります。

炭化反応は酸素を除去する等意図的に不完全燃焼させて、炭素の状態で残るよう設計されたものです。

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化学物質の状態・構成・変化理科

炭化反応とは?炭と灰の違いは燃焼にある?理科教員免許を持つライターがわかりやすく解説

キャンプやBBQで紙や木を燃やした後、黒い燃えかすが出来ることでしょう。またBBQで肉や野菜を火の中に落としてしまった場合も燃えカスができる。これらの燃えカスを「炭(すみ)」と言ったり、「灰(はい)」と言ったりする。両者の違いは一体何でしょうか。また、違いは何でしょうか?理科教員免許持ちのライターR175と解説していこう。

ライター/R175

とある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の教員免許持ち。教科書には出てこない日常の身近な現象に結びつけて分かりやすい解説を強みとする。

1.炭化反応

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炭と灰の違いを理解する上で「炭化反応についても抑えておく必要があります。炭化反応とは、字の如く「炭に化ける」反応のことで、炭とは炭素のこと。炭素は揮発しにくいため、有機物など炭素を含む分子を特定条件下で燃焼させると炭素が残こる、これが炭化反応です。本記事では、「炭」と「灰」の違いに焦点を当てながら炭化反応について述べたいと思います。

2.完全燃焼と不完全燃焼

目標に向かって努力し、力を出し切れた場合を完全燃焼、思うような成果を残せなかったら「不完全燃焼」という言い方をしますね。理科でいう完全燃焼、不完全燃焼もこれに近い概念で、完全燃焼では燃焼しきっている不完全燃焼では燃焼できるものがまだ残っている状態です。

燃焼とは

まず燃焼に関して触れておきましょう。燃焼とは、可燃物が熱を発生させながら激しく酸素と結びつく酸化反応」のことです。特に気体が燃焼する現象は「炎」と呼ばれます。可燃物としてイメージする有機物の酸化だけでなく、例えばマグネシウムなどの金属が酸化する反応も燃焼です。

また、広い意味では生体内で起きる酸化反応も「燃焼」であり、例えば「脂肪の燃焼」といった使い方をしますが、これは脂肪酸が酸化る反応を指します。

完全燃焼と灰

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キャンプファイヤで燃やす紙や木材などの有機物(主にC、H、Oの元素から成る)を熱エネルギーを与えて酸化させると、最終的には二酸化炭素(CO2)と水(H2O)になりますね。十分な酸素を与えて燃焼させて有機物を燃え尽きさせて、二酸化炭素と水に変える場合が完全燃焼です。例としてメタンの反応式は以下のようになります。

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