この記事では「固執」について解説する。

端的に言えば固執の意味は「こだわる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生「むかいひろき」を呼んです。一緒に「固執」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を活かし、「言葉」について分かりやすく解説していく。

「固執」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 42508702

それでは早速「固執」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「固執」の意味は?

「固執」には、次のような意味があります。

あくまでも自分の意見を主張して譲らないこと。「自説に―する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「こ‐しつ【固執】」

「固執」は、「自分の意見にこだわり譲らないこと」「自分の意見を頑固に譲らないこと」を意味する言葉で、良くない意味で使われることが一般的です。

「固執」の読み方は「こしつ」が現代では正しい読み方とされています。ただ『日本国語大辞典』によると、かつては「こしゅう」の読みが正しかったそうで、現代も「こしゅう」と読んでも問題はありません。その証拠に、パソコンやスマートフォンの入力では「こしつ」でも「こしゅう」でも変換ができます。

\次のページで「「固執」の語源は?」を解説!/

「固執」の語源は?

次に「固執」の語源を確認しておきましょう。
実は「固執」の語源はハッキリとしたことが分かっていません。ただ、古くから使われていた言葉のようです。室町時代の『旱霖集』(かんりんしゅう)という詩集には、すでに「固執」が「山のように自分の意見を動かさない」という意味で使われています。

*旱霖集〔1422〕虎関和尚行状「師平居淡乎如水、意不忤物、事或不可。固執如山」

出典:日本国語大辞典「こ‐しゅう[‥シフ] 【固執】」

「固執」の使い方・例文

「固執」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.たくさんの専門家から案を批判されたが、大統領は自身の案に固執して修正をしようとしない。
2.間違ったやり方に固執して勉強を続けた結果、志望校に合格できなかった。
3.自分の地位に固執して不正を認めない政治家がいる。

3つの例文全てに、「こだわって譲らないこと」「頑固に譲らないこと」というニュアンスが入っています。そしてどれも「固執」が良くない意味マイナスの意味で使われていますね。

例文1は、「大統領はたくさんの専門家から批判されても、自身の案にこだわって譲らず、修正をしようとしない」という意味です。

例文2は、「間違ったやり方を頑固に続けて勉強をした結果…」という意味になります。

例文3は、「自分の地位に頑固にこだわり、不正を認めない政治家がいる」という意味です。「意見」や「考え」以外にも、「自分に関する立場・地位にこだわって譲らないこと」を表すときは「固執」を使うことができます

\次のページで「「固執」の類義語は?違いは?」を解説!/

「固執」の類義語は?違いは?

image by PIXTA / 30856955

「固執」の類義語は「執着」「執心」「拘泥」「執拗」です。意味やニュアンスが少しずつ違うので、今回まとめて覚えてしまいましょう!

その1「執着」

「執着」は「ある物事に心をとらわれて、そこから気持ちが離れられないこと」を表す言葉です。

「固執」との違いは、「固執」が「自分の意見や考え、立場や地位へのこだわり」を表現するのに対し、「執着」の場合は「自分の意見や考え、立場や地位以外へのこだわり」にも使用することができます。

たとえば、「田中さんはお金に執着しているので、少しでも安く物を買おうとする。」のように、「お金」や「元交際相手」といったモノやヒトに対しても、「執着」は使用可能です。

その2「執心」

「執心」は「ある物事に異常な関心を持ち、いつまでもそれにこだわること」という意味を持った、「固執」とよく似た言葉です。

「固執」との違いは、「執心」はこだわりの対象が「」の時によく使用されます。特に「特定のある異性に対してのこだわり」を持つ…という意味で、からかっているようなニュアンスで使用されることが多いです。

たとえば…「山田くんは、片思い中の石川さんにご執心だ。」のように使用されます。

その3「拘泥」

「拘泥」は「こうでい」と読み、「必要以上に何かにこだわること」という意味を持った「固執」に似た言葉です。

「固執」との違いは、「拘泥」には「必要以上に」というニュアンスがあるのに対し、「固執」にはそのニュアンスがありません。また、「固執」が「自分の意見や考え、立場や地位へのこだわり」を表現するのに対し、「拘泥」は「自分の意見や考え、立場や地位以外へのこだわり」にも使用可能です。

たとえば、「山田さんのチームは勝利に拘泥して、危険なプレーをしてくるので試合をしたくない。」のように使用されます。ここでは「山田さんのチームは必要以上に勝利にこだわって…」という意味です。

その4「執拗」

「執拗」は「しつよう」と読み、「自分の意見にいつまでもこだわり続けること、しつこいこと」という意味を持つ言葉です。

「固執」との違いは、「固執」は「固執する」と動詞として用いられるのに対し、「執拗」は「執拗」と形容動詞として用いられます。「執拗する」という言い方はしません。また、「固執」が「自分の意見や考え、立場や地位へのこだわり」を表現するのに対し、「執拗」は「自分の意見や考え、立場や地位以外へのこだわり」にも使用可能です。

たとえば、「田中さんは毎日執拗にデートに誘ったため、石井さんに嫌われてしまった。」のように使用されます。ここでは「しつこくデートに誘ったため…」という意味です。

「固執」の対義語は?

image by PIXTA / 61466164

「固執」の対義語には「譲歩」や「妥協」があります。詳しく見ていきましょう。

\次のページで「その1「譲歩」」を解説!/

その1「譲歩」

「譲歩」には、「自分の考え、主義の一部または全部を引っ込めて、他の意見に従うこと」という意味があります。「自分の意見にこだわり譲らないこと」を表す「固執」とは、反対の意味にあたりますね。

その2「妥協」

「妥協」は、「対立している事柄について、お互いの主張を少しずつ譲り合って、一致点を見出して解決すること」という意味があります。「お互いの主張を少しずつ譲り合う」点が、「固執」の「自分の意見にこだわり譲らないこと」という意味と反対にあたりますね。

「固執」を使いこなそう

この記事では「固執」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「固執」は「自分の考えや意見をこだわって譲らない、頑固に譲らない」という意味の言葉で、良くない文脈で使われます。
「固執」と他の類義語との違いは、「固執」のこだわりの対象は「自分の考えや意見、地位や立場のみであることです。

これからの時代、自分の昔ながらの考えに「固執」していると、時代の波に置いていかれるかもしれません。時には「譲歩」したり「妥協」したりしながら前に進んでいきましょう!

" /> 「固執」の意味や使い方は?例文や類語を日本語教師がわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

「固執」の意味や使い方は?例文や類語を日本語教師がわかりやすく解説!

この記事では「固執」について解説する。

端的に言えば固執の意味は「こだわる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生「むかいひろき」を呼んです。一緒に「固執」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を活かし、「言葉」について分かりやすく解説していく。

「固執」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 42508702

それでは早速「固執」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「固執」の意味は?

「固執」には、次のような意味があります。

あくまでも自分の意見を主張して譲らないこと。「自説に―する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「こ‐しつ【固執】」

「固執」は、「自分の意見にこだわり譲らないこと」「自分の意見を頑固に譲らないこと」を意味する言葉で、良くない意味で使われることが一般的です。

「固執」の読み方は「こしつ」が現代では正しい読み方とされています。ただ『日本国語大辞典』によると、かつては「こしゅう」の読みが正しかったそうで、現代も「こしゅう」と読んでも問題はありません。その証拠に、パソコンやスマートフォンの入力では「こしつ」でも「こしゅう」でも変換ができます。

\次のページで「「固執」の語源は?」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: