この記事では「所感」について解説する。

端的に言えば所感の意味は「ある事柄に対する感想」ですが、より正確な意味や語の構造を理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語学の研究者の船虫堂を呼んです。一緒に「所感」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/船虫堂

今回の記事を担当するのは文学博士で日本語学の研究者の船虫堂だ。言葉に対して幅広い興味を持つ船虫堂が、丹念な調査をもとにわかりやすく語句の解説をしていく。

「所感」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「所感」の意味や語構造・使い方を見ていきましょう。「所感」とはある事柄に対する感想を指す言葉です。やや硬い印象を与える言葉なので日常会話では伝わりにくいかもしれません。ビジネスメールなど書き言葉で用いられることが多いです。

「所」がつく熟語は「所感」以外にも「所持」、「所望」、「所収」など身近なことばからやや硬めの言葉までいろいろありますが、これらの熟語はみな同じ構造をしています。構造を理解して「所感」の意味合いを理解し、使い方をマスターしていきましょう。

「所感」の意味は?

「所感」の意味について、今回は小学館の通称\"ニッコク\"こと『精選版 日本国語大辞典』を引用します。仏教の専門用語としての意味もありますが、ここでは現代の言葉として通用している3の意味に注目していきましょう。

しょ-かん【所感】

〘名〙

① 仏語。前世での行為が、その結果としてもたらすもの。

※覚海法橋法語(12C終‐13C前)「此業力所感の故に、業の尽不尽に依て生を改めて」

② 取得すること。現物を手に入れること。

※上井覚兼日記‐天正一二年(1584)四月二三日「此度御所感被成候所々、有馬殿へ悉皆被下候する事も」

③ 感じるところ。心に感じる思い。心に感じたこと。感想。〔教育・心理・論理術語詳解(1885)〕

※手巾(1916)〈芥川龍之介〉「今日の事件を材料にして、早速、所感を書いて送る事にしよう」 〔古列女伝‐母儀伝〕

出典:『精選版 日本国語大辞典』(小学館)

辞書の3の説明が今回取り上げる「所感」の意味です。「感じるところ」とはまさに文字通りですね。また、「感想」とも書かれており、簡単に言えば「所感」とは感想であることが分かります。

「所感」の語源は?

漢文で用いられる「所」の使い方と熟語の成り立ちを理解することで「所感」と言うことばの仕組みをとらえましょう。「所」は後続する動詞(動作)の対象となる場所や物事(、または理由)を表す、つまりその動作を名詞化します。ですから、「所感」は後続する「感」、つまり感じた事柄を表すわけです。

ちなみに、「所持」は「持っていること」を、「所望」は「望んでいること」、「所収」は(その資料に)収められていることを表します。「所得税」の「所得」も同じ仕組みですね。漢文で返り点を付けるとしたら「所レ感」となり、「感ずるところ」のように訓読します。

\次のページで「「所感」の使い方・例文」を解説!/

「所感」の使い方・例文

「所感」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.先日行われた研修の所感をお送りします。ご査収ください。
2.日常の業務について所感を述べてください。
3.弊社のサービスに対するご所感をお聞かせください。

このように、「所感」は、対象となるものごとに対して感じたこと、つまり感想を述べる時に使います。硬い文章で使える語であるため、ビジネスシーンなど、「感想」ではやや幼い感じがする、もう少しかしこまったニュアンスを出したい時などに有用です。

この他、企業ウェブサイトなどでは「年頭所感」と称して1年の始まりに前年の振り返りと新年の抱負を述べる記事を掲載しているところもあります。

また、例文3のように、相手に対して感想を求める際には、「ご所感」や「御所感」と書いて敬語表現にしましょう。

「所感」の類義語は?違いは?

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「所感」の類義語として、「感想」や「インプレッション」がまず挙げられるでしょう。

また、「意見」等の直接的な表現を避ける用法についても紹介します。

その1「感想」

「感想」は所感とほぼ同義ですが、日常的に使用される語であったり、小学生の読書感想文など低い世代でも使用できる、馴染みのある語であるため、「所感」よりもやわらかい、フランクな印象を与えることが予想されます。特にアカデミックやビジネスの場面では、雰囲気を和らげる意図が無いのであれば「感想」と言う言葉は避け、別の表現で言い換えた方が穏当でしょう。

\次のページで「その2「インプレッション」」を解説!/

その2「インプレッション」

「インプレッション」は「感想」に相当する英語"Impression"から来ている外来語です。翻訳であるためこちらも意味は変わりませんが、ほかにも外来語が多用されているような文体の文章など、使用する場面は限られるでしょう。

その3「意見」の婉曲表現

また、特にビジネスシーンにおいて、対人の場面で客先や上司などの仕事に対して「意見(を述べる)」と言う表現は使いにくいものです。このように、「意見」や「反論」など、相手の言ったことや話したことに対して何かを言いたい時、直接的な表現を用いるのがはばかられる場合に「所感」と言う言葉を用いてニュアンスをやわらげるという場面を目にします。となると、「意見」も婉曲的な表現として、広い意味での「所感」の類義語と言えるのではないでしょうか。

「所感」の英訳は?

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「所感」の英訳はなんでしょうか。「感じたこと」ですから、以下のような動詞"feel"を用いた表現も考えられますが、

How do you feel about current life?
現在の生活に対する所感を述べてください(どう感じていますか)。

ここでは「所感」を名詞的に訳した"impressions"と"sentiments"について紹介していきます。

その1「impression」

「所感」または「感想」の英訳として第一にあがってくるのがこの"impression"、動詞"impress"(印象を与える、印象づける)と語源を同じくする名詞です。多くの場合、動詞"give"や"state"とともに用いられます。

1.Please give your impressions of our services.
弊社のサービスに対するご所感をお聞かせください。
2.I would like to state my impressions of our company\'s performance.
わが社の業績について所感を述べさせていただきます。

その2「sentiment」

"impression"より情緒的、感情の混ざった「所感」を表すのに"sentiment"という単語を用いる場合があります。関連語である"sentimental"(感傷的な)からもそのニュアンスが読み取れるでしょう。

\次のページで「「所感」を使いこなそう」を解説!/

1.He wrote about his sentiments on the movie he saw yesterday.
彼は昨日観た映画の所感を綴った。
2.This is my sentiment on this diplomatic issue.
これが今回の外交問題についての所感だ。

「所感」を使いこなそう

まとめると、「所感」とはある事柄に対する感想を指す言葉で、「感想」よりも硬い文章で使う語です。使用場面によって使い分けましょう。また、今回の「所」がつく熟語のように、後のなりたちから意味を理解することも言葉の意味を理解する助けになるでしょう。

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国語言葉の意味

「所感」の意味や使い方は?例文や類語を日本語学者がわかりやすく解説!

この記事では「所感」について解説する。

端的に言えば所感の意味は「ある事柄に対する感想」ですが、より正確な意味や語の構造を理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語学の研究者の船虫堂を呼んです。一緒に「所感」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/船虫堂

今回の記事を担当するのは文学博士で日本語学の研究者の船虫堂だ。言葉に対して幅広い興味を持つ船虫堂が、丹念な調査をもとにわかりやすく語句の解説をしていく。

「所感」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「所感」の意味や語構造・使い方を見ていきましょう。「所感」とはある事柄に対する感想を指す言葉です。やや硬い印象を与える言葉なので日常会話では伝わりにくいかもしれません。ビジネスメールなど書き言葉で用いられることが多いです。

「所」がつく熟語は「所感」以外にも「所持」、「所望」、「所収」など身近なことばからやや硬めの言葉までいろいろありますが、これらの熟語はみな同じ構造をしています。構造を理解して「所感」の意味合いを理解し、使い方をマスターしていきましょう。

「所感」の意味は?

「所感」の意味について、今回は小学館の通称\”ニッコク\”こと『精選版 日本国語大辞典』を引用します。仏教の専門用語としての意味もありますが、ここでは現代の言葉として通用している3の意味に注目していきましょう。

しょ-かん【所感】

〘名〙

① 仏語。前世での行為が、その結果としてもたらすもの。

※覚海法橋法語(12C終‐13C前)「此業力所感の故に、業の尽不尽に依て生を改めて」

② 取得すること。現物を手に入れること。

※上井覚兼日記‐天正一二年(1584)四月二三日「此度御所感被成候所々、有馬殿へ悉皆被下候する事も」

③ 感じるところ。心に感じる思い。心に感じたこと。感想。〔教育・心理・論理術語詳解(1885)〕

※手巾(1916)〈芥川龍之介〉「今日の事件を材料にして、早速、所感を書いて送る事にしよう」 〔古列女伝‐母儀伝〕

出典:『精選版 日本国語大辞典』(小学館)

辞書の3の説明が今回取り上げる「所感」の意味です。「感じるところ」とはまさに文字通りですね。また、「感想」とも書かれており、簡単に言えば「所感」とは感想であることが分かります。

「所感」の語源は?

漢文で用いられる「所」の使い方と熟語の成り立ちを理解することで「所感」と言うことばの仕組みをとらえましょう。「所」は後続する動詞(動作)の対象となる場所や物事(、または理由)を表す、つまりその動作を名詞化します。ですから、「所感」は後続する「感」、つまり感じた事柄を表すわけです。

ちなみに、「所持」は「持っていること」を、「所望」は「望んでいること」、「所収」は(その資料に)収められていることを表します。「所得税」の「所得」も同じ仕組みですね。漢文で返り点を付けるとしたら「所レ感」となり、「感ずるところ」のように訓読します。

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