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5分で分かる「σ結合」分子が安定な理由とは?原子はなぜ結合を作る?京大卒研究者が解説!

2-2.σ軌道のエネルギーと電子の安定性

次に原子同士が近づいて生まれたσ軌道に電子を入れていきましょう。σ軌道などの分子でも一つの軌道の定員は電子2つであり、低いエネルギーの軌道から順番に埋まるというルールも原子と同じです。水素原子はそれぞれ電子を1つずつ持っているので、水素分子の電子数は2つになりますね。さて結合軌道と反結合軌道のエネルギーは水素原子のエネルギーと異なっており、結合軌道のエネルギーはより安定な状態になり反結合軌道のエネルギーはより不安定な状態となります。

水素分子では電子が2つとも結合軌道に入ることができるため、原子一つで存在するときよりもエネルギー的にお得、つまりより安定な状態になるのです。そのため水素は原子一つで存在するのではなく、2つの原子が結合した分子として存在しているわけですね。

2-3.ヘリウムが分子を作らない理由

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最後にヘリウムについて水素と同じように考えてみましょう。ヘリウムとは原子番号2の元素であり、風船を膨らませるガスとして使われたり、吸うと声が一時的に変わるガスの原料として聞いたことがある人がいるかもしれません。さてヘリウムは自然界において分子を形成せず、単独の原子として存在しています。

 

ではなぜヘリウムは分子を作らないのでしょうか。この理由は先ほどのエネルギー準位図を用いて考えると簡単に理解できます。ヘリウム原子が持っている電子の数は2つであるため、仮に2つのヘリウムで分子を作った場合は電子の数は4つです。この4つの電子を先ほどの水素と同様に分子軌道に埋めていくと、結合軌道に電子が2つ、反結合軌道に電子が2つ入ります。つまり水素分子で得られていたエネルギーの安定性がヘリウム分子では失われてしまうのです。

量子化学によって原子や分子の結合を理解できるようになった

今回はσ結合の形成の仕組みについて、量子化学の理論に基づく原子の電子軌道を用いて説明しました。電子は波と粒の両方の性質を持っている、電子がどこに存在するか特定することはできない、といった量子化学の考え方は直感には反するかもしれません。

 

しかしこのような量子化学の考え方を用いることで分子の結合のような根本的な問題を理解することができるようになり、それが20世紀の化学の大きな発展に繋がっています。そう考えると、量子化学が進歩したおかげで今の私たちの生活があるとも言えるかもしれませんね。

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