化学原子・元素有機化合物物質の状態・構成・変化理科量子力学・原子物理学

5分で分かる「σ結合」分子が安定な理由とは?原子はなぜ結合を作る?京大卒研究者が解説!

1-1.波と粒の両方の性質を持つ電子

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原子や電子のようなミクロの世界は我々の日常的な世界とは異なり、直感的には理解しにくい現象が度々起こります。そのような理解しにくいことであり、かつ重要な考え方の一つが「電子や原子は波としての性質と粒としての性質を持っている」ということです。高校化学では原子核の周りを電子が粒としてぐるぐると回っているという模式図で原子を勉強したかと思いますが、これは電子の性質を正確に表してません。

電子が粒として原子の周りをぐるぐると回る、この考え方は直感的には分かりやすいですね。しかし実際は波で強いところと弱いところがあるように、電子はある空間のなかで分布を持って存在しています。つまりどれだけ高性能なカメラや顕微鏡を使っても「ここに電子がいる」と特定することはできず、「このあたりに電子が存在する確率は〇〇%」といった確率でしか語ることができないのです。

1-2.電子の運動を表すシュレーディンガー方程式

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Nobel foundation – http://nobelprize.org/nobel_prizes/physics/laureates/1933/schrodinger-bio.html, パブリック・ドメイン, リンクによる

このような電子が波と粒の性質を両方持っている、という考え方は様々な実験から観測された結果を説明するために生まれたものでした。そこで20世紀初めの科学者は次に「波と粒の二重性」を説明できる理論の構築にチャレンジし始めました。物理において「物事を理解する」というのは「数式を使って自然現象を適切に表す」という意味になります。このような理論の一つとして、オーストリアのシュレーディンガーという科学者は今ではシュレーディンガー方程式と呼ばれる電子の運動を記述した式を発表しました。

 

ここでは議論を簡単にするためにシュレーディンガー方程式の細かい話は省略します。大事なポイントはシュレーディンガー方程式を解くことで電子が原子の周りのどのあたりに存在しているか(空間分布)、各電子が持っているエネルギーの大きさはどれくらいか、という点がわかるということです。この電子のエネルギーと空間分布をまとめて電子軌道と呼びます。

1-3.原子の電子軌道

次に電子軌道をもう少し細かく見ていきましょう。上で述べたように電子軌道ごとにエネルギーの大きさは異なり、各軌道のエネルギーの高低差を表したものをエネルギー準位図と呼びます。ここで大事なポイントが2つあり、電子はエネルギーが深いところから順番に埋まっていくということ、一つの電子軌道の定員は2個ということです。

 

ちなみにこの電子軌道が高校化学で習う電子殻に対応します。K殻に入ることができる電子は2個、L殻に入る電子は8個、といった内容を習いませんでしたか。この電子殻はシュレーディンガー方程式を解くことによって得られる電子軌道に対応しており、同じエネルギーを持つ電子軌道をまとめてK殻やL殻などと呼んでいます。

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この章では電子は波と粒の両方の性質を持つ不思議な物質であることと、電子の運動を表すためにはシュレーディンガー方程式を解く必要があることを学んだ。そしてシュレーディンガー方程式を解くことで得られるのが電子軌道だ。

 

次の章では原子の電子軌道が重なるとどうなるか、という点からσ結合の形成について見てみよう。結合が形成される流れを学んだ後に水素とヘリウム分子の比較を行っていくぞ。

2.原子の電子軌道と分子の結合の関係

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これからいよいよσ結合について考えていきます。前の章では電子は原子の周りのある空間のなかに存在しており、その空間分布とエネルギーをまとめて電子軌道と呼ぶことを学びました。σ結合を初めとする共有結合とは2つの原子の電子軌道が重なることによって生まれる結合です。この章ではσ結合に対する理解を深めるため、まずは一番シンプルな分子である水素分子を考え、その後になぜヘリウム分子は存在しないのか、という点を考えていきましょう。

2-1.原子の電子軌道の重なりとσ結合

分子の結合を考えるときもシュレーディンガー方程式からスタートします。ここでも細かい数学的な表現は省略して、代わりに直感的に考えていきましょう。水素の電子は1個であり、この電子はエネルギー的に最も深い電子軌道であるs軌道に入ります。ちなみにs軌道は原子の周りを球状に覆っている軌道です。

 

前の章では電子は波のような性質を持っている、というお話をしました。さて、波はお互いに強め合ったり弱め合う、干渉と呼ばれる現象を起こします。この干渉という現象は電子軌道でも起こり、2つの電子軌道が近づいたときにお互いに強め合ったり弱め合うのです。

水素分子の場合はそれぞれの軌道がお互いに強め合う場合、弱め合う場合に対応する2種類の結合が生まれます。強め合う軌道のことを結合軌道と呼んで1sσ軌道と表し、弱め合う軌道のことを反結合軌道と読んで1sσ*軌道と表し、これらの軌道をまとめた言葉がσ結合です。

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