化学有機化合物物質の状態・構成・変化理科

5分で分かる「無極性溶媒」水と油はなぜ混ざらない?分子の極性について京大卒の研究員が解説!

2.無極性溶媒の種類と特徴

無極性溶媒は分子内の電子の偏りが小さいこと、主に炭素や水素から作られるということを説明しました。では次にどのような構造を持った分子が無極性溶媒になるのか、そして無極性溶媒にはどんな特徴があるのかを見ていきましょう。

2-1.無極性溶媒を見分けるポイント

まずはどんな溶媒が無極性溶媒で、どんな溶媒が極性溶媒なのか見分けていきましょう。極性溶媒か見分けるためには分子がどんな原子から作られているか見ることが重要です。では以下の分子が無極性溶媒なのかどうか考えてみましょう。

ヘキサンやベンゼンは炭素と水素しか持っておらず、分子内で電子の偏りは起こらないためこれらの溶媒は無極性溶媒になります。逆に酸素が隣の水素から電子を引っ張り、分子の中で電子の偏りが生じるためエタノールは極性溶媒です。

ややこしいのが炭素と塩素が繋がった四塩化炭素という溶媒で、炭素と塩素では塩素のほうが電気陰性度が高いため電子の偏りは起こりそうに見えますね。しかし四塩化炭素は無極性溶媒です。この理由として、四塩化炭素は正四面体の頂点に塩素が配置されており、綱引きのようにそれぞれの塩素原子がお互い逆向きに電子を引っ張り合うため分子全体として電子の偏りが消えてしまいます。その結果、四塩化炭素は無極性溶媒になるのです。

2-2.無極性溶媒の沸点が低い理由

image by iStockphoto

無極性溶媒の特徴は極性溶媒に比べて沸点が低いこと、揮発しやすいことなどです。例えば先ほど紹介した炭素と水素だけでできているヘキサンは水よりも沸点が低く、すぐに揮発していきます。水よりも大きな分子であるヘキサンの沸点はなぜ水よりも低いのでしょうか。

極性溶媒と無極性溶媒の違いは電子の偏りが分子の中で生じているかどうかという点ですが、分子の中で電子が偏ったらどうなるでしょうか。ここで極性溶媒、無極性溶媒それぞれで2つの分子が近づいた場合を考えてみましょう。水は酸素がマイナス、水素がプラスになっているため、酸素と水素が近づくとプラスとマイナスの間で静電気的な引力が働きます。このような静電気的な引力は比較的強い力であるため、沸騰、すなわち分子を気化させるためにより高い温度での加熱が必要になるのです。

 

ちなみにヘキサンのような無極性溶媒では電子の偏りがないため静電気的な引力は起こりません。このような無極性溶媒ではファンデルワールス力という弱い力で分子が繋がっています。低い温度でもこのような弱い力を切断されるため、無極性溶媒の沸点は相対的に低くなるのです。

2-3.無極性溶媒が溶解しやすい物質

image by iStockphoto

最後にものが溶媒に溶ける、という現象を考えていきましょう。「ものが溶ける」ということを化学の用語で書くと「溶質(もの)が溶媒(溶かす液体)に溶解する」ということで、非常にざっくりとした表現では「似た者同士は溶け合う」という性質があります。

分かりやすいのが水と塩です。水は極性溶媒であり、塩(塩化ナトリウム)はナトリウムがプラスに、塩素がマイナスに帯電したイオンになっている物質であり、お互いのプラスとマイナスが引き合うため塩は水に溶解します。一方で水と油の場合、水は周りに油があるときよりも水同士で一緒にいるほうが静電気的な引力を感じられるため、このようなどちらか一方が極性溶媒の場合は2つの物質は混ざりません。

逆に無極性溶媒はプラスチックを溶かすものが多いです。プラスチックは主成分が炭素と水素でありほぼ無極性であるため、極性を持っていない無極性溶媒と馴染みやすく、水のような極性溶媒とは馴染みにくい性質を持っています。

極性が異なると溶媒の性質は大きく変わる

物質の極性は分子に含まれる原子によって大きく変わり、この極性の大きさが溶媒の性質も決めることを学びました。水と油の極性は大きく異なっており、これが水と油が混ざらない理由です。

無極性溶媒は沸点が低かったり、水では溶かすことができない無極性の分子を溶かすことができるなど、様々な特徴を持っています。このような溶媒の性質の違いが分子という小さな世界の極性という物性で説明できる、言うならば分子のようなミクロの視点から沸点などのマクロな性質を説明できるという点が化学の面白さの一つなのかもしれません。

1 2
Share: