5分で分かる「無極性溶媒」水と油はなぜ混ざらない?分子の極性について京大卒の研究員がわかりやすく解説!
今回は分子の極性について学んだ後にどのような分子が無極性溶媒になるのか、そして無極性溶媒にはどんな特徴があるのかを考えていく。化学に詳しいライターの珈琲マニアが解説します。
ライター/珈琲マニア
京都大学で化学を専攻し、今はメーカーの研究員として勤務。業務で日常的に多くの試薬を使用しており、無極性溶媒の取り扱い経験も豊富。
1.分子の極性
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水と油、という言葉があるように水と油の性質は全く異なりますし、水と油は混ざり合わずに分離します。ではこのような水と油の違いはなぜ生まれるのでしょうか。この違いを理解するために重要な性質が「ものの極性」です。
無極性溶媒の代表例は石油に含まれるベンゼンや油などの有機溶媒であり、極性溶媒の代表として水が挙げられます。この記事では「無極性溶媒」の性質を理解するためにまずは「極性」という言葉についてまず一緒に学びましょう。
1-1.極性の由来である分子の結合と電子
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自然界に存在するものは全て原子から作られており、炭素や酸素、水素などの一つ一つの原子がつながることで多種多様な物質が生まれます。このような分子を作る結合として、共有結合やイオン結合などを受験勉強で学んだ人もいるのではないしょうか。ではこれらの結合はどのように作られるのでしょうか。
結合はお互いの原子が電子を渡したり、受け取ったり、お互いに電子を出し合ったりすることで作られます。この結合を作り出す電子、というものが実は極性に関係しているのです。
1-2.原子が電子を引く力を表す電気陰性度
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原子が電子を渡したり受け取ったりすることで分子の結合は作られると述べました。ではどんな原子が電子を受け取りやすく、どのような原子が電子を渡しやすいのでしょうか。アメリカの化学者であるポーリングは原子がどれだけ電子を欲しがっているか、という指標として電気陰性度というものを提案しました。以下に代表的な原子の電気陰性度を示します。
ここで重要なポイントはナトリウムなどのアルカリ金属は電気陰性度が低く、塩素などのハロゲン化合物は電気陰性度が高め、そして炭素や水素の電気陰性度はちょうど中間程度であるという点です。
1-3.極性とは分子における電子の偏り
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次に電気陰性度が異なる原子がつながったときにどんな現象が起こるのか考えていきましょう。例えば水は酸素と水素から作られる分子であり、酸素のほうが電気陰性度が高めであるため水素から酸素に電子は引っ張られます。これを言い換えると酸素に電子が偏り、逆に水素は電子不足になる、つまり相対的に酸素にはマイナス、水素にはプラスの電荷が発生するともいえますね。このように分子の中で電子が偏っている分子のことを「極性分子」と呼び、分子のプラスとマイナスをまとめて「双極子(プラス、マイナス、2つの極を持っている)」と呼びます。
一方でベンゼンや油は主に炭素と水素から作られており、各原子の電気陰性度はほとんど同じであるため、分子の中で電子の偏りはほとんどありません。このような電荷の偏りが無い分子や溶媒を「無極性分子」や「無極性溶媒」と呼びます。
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