突然ですがみんなは水に塩が溶ける理由を知っているか?その理由を考えるうえでポイントになるのが今日勉強する「極性溶媒」という言葉です。極性溶媒という言葉は聞き慣れないかもしれないが、実は水やエタノールなどの身近な化合物も極性溶媒の一つになるんです。

今日は極性という言葉の意味を学んだ後に極性溶媒の特徴について勉強していこう。メーカーで化学の研究を行っている珈琲マニアと一緒に解説していきます。

ライター/珈琲マニア

京都大学で化学を学び現在はメーカーの研究員として勤務。学生時代の専門は物理化学であり、現在も様々な試薬を取り扱っているため分子に関する知識が豊富。

1.極性とは電子の偏りで生まれる現象

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水、お酒に入っているエタノールなどのアルコール、少し前のサスペンスドラマでよく出てきたクロロホルムなど、世の中には極性溶媒と呼ばれる液体がたくさんあります。極性溶媒とは分子の中で一部の原子に電子が偏っている溶媒であり、分子の中に電子を引っ張りやすい原子が含まれるのが特徴です。このような分子の「極性」は物質の溶解性に関連する要素の一つであり、塩が水に溶解しやすい理由にも水の極性が関係しています。

この章では極性という性質を理解するためにまずは原子が電子を引き寄せるとはどういうことか、という点を考えてみましょう。

1-1.原子の種類と沸点の違い

世の中の物質は全て炭素や酸素、水素などの原子が結合することで作られており、原子の数や種類、つながり方で物質の性質は大きく変わります。例えばメタン、アンモニア、水はいずれも水素とつながった化合物であり、真ん中の原子が異なるだけです。しかし、これらの3つの化合物の性質は大きく異なります。

ではこれらの物質の性質の違いはなぜ生じるのでしょうか。性質の違いを決める理由は複数ありますが、ここでは物質の極性に着目してこれらの3つの化合物の違いを見ていきます。

1-2.電子の引きやすさを示す電気陰性度

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物質の極性とは一言で表すと「分子の中でどれだけ電子が偏っているか」ということです。分子の結合は原子がお互いに電子を渡すことによって作られています。原子同士が協力して原子の間に架け橋を作っているようなイメージですね。

量子化学が発展して分子の研究が進むにつれて、原子によって電子の欲しがりやすさは異なっており、分子の中で電子を奪う原子や電子を渡したがる原子がいることがわかってきました。このような原子が電子をどれだけ欲しがっているか、という指標をアメリカの化学者ポーリングは電気陰性度というパラメータで表しました。塩素やフッ素のようなハロゲン原子や窒素や酸素は電気陰性度が高い、すなわち電子を奪いたがる、逆にリチウムやナトリウムは電気陰性度が低い、つまり電子を渡したがる傾向があります。

1-3.電気陰性度と分子の極性

表と比較しながら改めてメタン、アンモニア、水分子を見てみましょう。水素に比べて窒素や酸素の電気陰性度は高めです。そのためアンモニアや水では周りの水素から中心の原子に向かって電子が引っ張られ、真ん中の原子は電子過剰でマイナスに、逆に水素は電子不足でプラスの電荷を持ちます。

簡単に言うと分子の中でプラスとマイナスの部分があるということですね。このように分子の中で電子の偏りがある溶媒を極性溶媒と呼びます。極性溶媒の代表例としては水がありますが他にも食用酢の原料である酢酸や、化学でよく使われる溶媒であるアセトニトリルなどの有機溶媒も極性溶媒の一つです。

\次のページで「2.極性溶媒の特徴」を解説!/

2.極性溶媒の特徴

前の章では分子の中でプラスとマイナスの電荷の偏りがあるものを極性分子と呼び、そのような液体を極性溶媒と呼ぶことを説明しました。では極性溶媒はどのような性質を持っているのでしょうか。この章では極性溶媒と無極性溶媒の沸点の違いや、極性溶媒はどのような物質を溶かすのか、などの点を見ていきましょう。

2-1.極性溶媒の沸点が高い理由

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極性溶媒では分子の中でプラスとマイナスの性質を持った原子があるということを述べました。では極性溶媒の中でそれぞれの分子のプラスとマイナスの部分が近づいたらどうなるでしょうか。プラスの電荷とマイナスの電荷を持ったものはお互いに引き合うため、極性分子もプラスとマイナスの部分がお互いに引き合います。

例えば水はプラスの電荷に偏った水素原子とマイナスに偏った酸素原子の間で静電気の引力が強く働く、代表的な極性溶媒の一つです。つまり電気の力によって水分子がお互いにしっかりと繋がっているということですね。アンモニアや水がメタンよりも沸点が高いのはこの静電気の引力のおかげであり、この力に勝つためにより高い温度が必要となって沸点が高くなるのです。特に水ではこの引力は非常に強いため、水はメタンやアンモニアに比べて沸騰させるために相対的に高温での加熱が必要となります。

2-2.極性分子に特徴的な水素結合

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ちなみに水やアンモニアでも見られたとおり、水素原子はプラスになりやすい代表的な原子です。そして静電気的な引力の中でも、水素原子がプラスになって他の分子とくっつく場合を水素結合と呼んでいます。

水素結合は様々な分子で見られ、特に生物、バイオ系の分子で重要な結合です。例えばタンパク質は複雑な立体構造を作っていますが、立体構造を作るために隣り合うペプチド分子同士が水素結合を形成しています。

2-3.極性溶媒が溶かしやすい物質

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極性溶媒は極性を持った化合物を溶かしやすい傾向を持っています。「ものが溶ける」とは化学の用語で書くと「溶質(もの)が溶媒(溶かす液体)に混和する(均一に溶解する)」ということ。ここでは水に塩が溶けるという現象を分子の目線から見てみましょう。

塩(塩化ナトリウム)はナトリウムと塩素の化合物です。電気陰性度の値はナトリウムで0.9、塩素で3.0と大きな差があるため塩化ナトリウムではナトリウムから塩素は電子を完全に引っこ抜いてしまいます。ちなみにこのような片方の原子に電子が完全に移った分子の結合をイオン結合と呼び、ナトリウムやハロゲン化物、酸性分子の水素イオン(プロトン)などがイオン結合を作る代表です。

では、このように電子が偏った塩化ナトリウムは水とサラダ油、どちらのほうが馴染みそうでしょうか。水は分子の中にプラスとマイナスの部分があり、塩化ナトリウムもプラスとマイナスの部分を持っているため、水と塩化ナトリウムは電気的にくっつくことが可能になります。

なお、サラダ油のような主に水素と炭素から作られる分子ではプラスとマイナスの部分がありません。そのため水は塩を溶かしますがサラダ油には塩がほとんど溶けないのです。

電子の偏りという分子の特徴が沸点や溶解性に影響する

私たちの身近に存在する水やエタノール、これらは極性溶媒の一種であり、分子の中で原子が電子を引っ張ることで電気的にプラスとマイナスの部分が生まれます。この電気的な引力によって水などの極性溶媒は他の分子よりも沸点が高くなることを学びました。

水の沸点が100℃であったり、水が塩を溶かすという現象は私たちにとって当たり前のことかもしれません。しかしこれらは水が極性を持っているために起こる現象です。当たり前に見える現象の裏にどのような自然のルールがあるのか、それを探すのも化学の面白さの一つですし、自然現象を理解することで最新のテクノロジーの発展につながるとも言えるでしょう。

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突然ですがみんなは水に塩が溶ける理由を知っているか?その理由を考えるうえでポイントになるのが今日勉強する「極性溶媒」という言葉です。極性溶媒という言葉は聞き慣れないかもしれないが、実は水やエタノールなどの身近な化合物も極性溶媒の一つになるんです。

今日は極性という言葉の意味を学んだ後に極性溶媒の特徴について勉強していこう。メーカーで化学の研究を行っている珈琲マニアと一緒に解説していきます。

ライター/珈琲マニア

京都大学で化学を学び現在はメーカーの研究員として勤務。学生時代の専門は物理化学であり、現在も様々な試薬を取り扱っているため分子に関する知識が豊富。

1.極性とは電子の偏りで生まれる現象

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水、お酒に入っているエタノールなどのアルコール、少し前のサスペンスドラマでよく出てきたクロロホルムなど、世の中には極性溶媒と呼ばれる液体がたくさんあります。極性溶媒とは分子の中で一部の原子に電子が偏っている溶媒であり、分子の中に電子を引っ張りやすい原子が含まれるのが特徴です。このような分子の「極性」は物質の溶解性に関連する要素の一つであり、塩が水に溶解しやすい理由にも水の極性が関係しています。

この章では極性という性質を理解するためにまずは原子が電子を引き寄せるとはどういうことか、という点を考えてみましょう。

1-1.原子の種類と沸点の違い

世の中の物質は全て炭素や酸素、水素などの原子が結合することで作られており、原子の数や種類、つながり方で物質の性質は大きく変わります。例えばメタン、アンモニア、水はいずれも水素とつながった化合物であり、真ん中の原子が異なるだけです。しかし、これらの3つの化合物の性質は大きく異なります。

ではこれらの物質の性質の違いはなぜ生じるのでしょうか。性質の違いを決める理由は複数ありますが、ここでは物質の極性に着目してこれらの3つの化合物の違いを見ていきます。

1-2.電子の引きやすさを示す電気陰性度

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物質の極性とは一言で表すと「分子の中でどれだけ電子が偏っているか」ということです。分子の結合は原子がお互いに電子を渡すことによって作られています。原子同士が協力して原子の間に架け橋を作っているようなイメージですね。

量子化学が発展して分子の研究が進むにつれて、原子によって電子の欲しがりやすさは異なっており、分子の中で電子を奪う原子や電子を渡したがる原子がいることがわかってきました。このような原子が電子をどれだけ欲しがっているか、という指標をアメリカの化学者ポーリングは電気陰性度というパラメータで表しました。塩素やフッ素のようなハロゲン原子や窒素や酸素は電気陰性度が高い、すなわち電子を奪いたがる、逆にリチウムやナトリウムは電気陰性度が低い、つまり電子を渡したがる傾向があります。

1-3.電気陰性度と分子の極性

表と比較しながら改めてメタン、アンモニア、水分子を見てみましょう。水素に比べて窒素や酸素の電気陰性度は高めです。そのためアンモニアや水では周りの水素から中心の原子に向かって電子が引っ張られ、真ん中の原子は電子過剰でマイナスに、逆に水素は電子不足でプラスの電荷を持ちます。

簡単に言うと分子の中でプラスとマイナスの部分があるということですね。このように分子の中で電子の偏りがある溶媒を極性溶媒と呼びます。極性溶媒の代表例としては水がありますが他にも食用酢の原料である酢酸や、化学でよく使われる溶媒であるアセトニトリルなどの有機溶媒も極性溶媒の一つです。

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