
3分で簡単にわかる「共沸」!なぜ2つの液体が沸騰しても組成が変わらない?京大出身研究員がわかりやすく解説!
1-1.沸騰とは分子の気化現象の一つ

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皆さんは「ものが沸騰する」という言葉を聞いて何を思い浮かべるでしょうか。一般的には沸騰といえば水のことを指すかと思います。水は100℃まで加熱するとボコボコと泡を立てて沸騰しますよね。この「沸騰」という現象は化学では「気化」に関連する現象の一つとみなされます。
気化するということは「気体に変化する」ということです。物質には固体、液体、気体の3つの状態があり、それぞれの状態をミクロの視点で見ると分子の動き方が全く異なります。固体は分子がきっちりと詰め込まれて自由に動くのが不可能な状態、液体は分子同士が緩やかにつながっている状態、気体は分子同士の繋がりが解消して一個一個の分子で動いている状態です。
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1-2.沸点は大気圧と蒸気圧が等しくなる温度
水を例にして沸騰という現象をもう少し深く掘り下げてみましょう。実は20℃程度の温度でもある程度の量の水は気化しています。例えば濡れたタオルを部屋に置いておくと徐々に乾いていきますが、これはタオルの水が徐々に気化しているためです。このような気体に変化した物質が持つ圧力を蒸気圧と呼びます。
この蒸気圧は温度が上がるとともに大きくなり、蒸気圧と大気圧が同じになるのが沸騰する温度、すなわち沸点です。大気圧に押されていた液体が熱によって解放されるイメージですね。沸騰を化学の用語で書き直すと「液相から気相へ蒸発する成分の蒸気圧(圧力)が大気圧と等しくなる温度」となります。
ちなみに沸騰する温度は大気圧によって変わるため、高い山のような気圧が低い場所では水の沸点は変わり、富士山の頂上では水の沸点は90℃弱です。高い山では気圧が下がる、すなわち水を押す力が弱くなるため低い蒸気圧でも沸騰することができるというわけですね。
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2.混合溶液の沸騰現象

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では次に今回のテーマである共沸という現象について説明します。沸騰とは液体の蒸気圧が大気圧と等しくなる温度であることを前の章で説明しましたが、では沸点が異なる2つの化合物を混ぜて加熱すると溶液はどのように沸騰するのでしょうか。
ポイントは2つの化合物を混ぜる比率です。この比率がある値になると2つの化合物が一緒に沸騰する共沸という現象が起こります。まずは2つの化合物が混ざったときの蒸気圧を考えてみましょう。
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