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5分でわかる「共沸」なぜ2つの液体が沸騰しても組成が変わらない?京大出身研究員が分かりやすく解説!

2-1.混合溶液の蒸気圧

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2つの化合物を混ぜた場合、混ぜた溶液の蒸気圧はそれぞれの化合物の蒸気圧に従って決まります。それぞれの化合物の蒸気圧の足し合わせになるというイメージですね。そして混ぜた溶液の蒸気圧は2つの化合物の割合によって決まり、この蒸気圧と2つの化合物の割合を表したグラフは蒸気圧曲線と呼ばれます。

 

2-2.混合溶液の沸騰と蒸留操作

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では次に縦軸を温度、横軸を2つの化合物の比率にして考えてみましょう。化合物Aの温度をTA℃、化合物Bの沸点をTB℃とします。このとき、AとBの比率を変えたときの沸点は比率によって変化しており、それをグラフにしたのが以下の図です。このグラフでは2つの境界線があり、線の下側が液体、上側が気体、そして2つの境界線の間は液体と気体が混ざった状態になっています。

ところでみなさんは蒸留という言葉を聞いたことがありますか。ウィスキーなどのお酒を飲む人は聞いたことがあるかもしれませんね。蒸留とは液体を沸騰させて気体を別の容器に回収して冷やして液体に戻すことで沸点が異なる成分を分離する操作のことです。ウィスキーの場合は蒸留装置を使ってエタノールや香りの成分の純度を上げているわけですね。

 

この蒸留という操作を沸点曲線で表してみましょう。2つの溶液の混合物を加熱すると、ある温度で境界線を超えて沸騰が始まることは上の図で説明しました。この沸騰したときの気体の組成はもとの液体の組成とは異なっており、沸騰する温度と気体の境界線が交差する点が気体の組成になります。そしてこの気体を液体に戻した後にもう一度気化させるとまた組成が変わる、つまり沸騰→液化→もう一度沸騰、という操作を繰り返すと沸点が低い成分を濃縮することができるのです。

2-3.共沸が起こる混合溶液

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先ほどの蒸留の説明では境界線は片方に向けて単調に下がっていきました。しかし物質によってはこの境界線が山や谷、つまり極大点や極小点を持つことがあり、例えば水とエタノールの混合溶液の液体、気体の境界線も極小点を持っています。このような混合溶液で蒸留をすると溶液はいずれ極小点に到達して、極小点に到達した後は何回蒸留しても組成が変わることがありません。この組成が変わらない点を共沸点と呼びます。共沸点は化合物によって異なっており、例えば胃酸に含まれている塩化水素と水の共沸点は塩化水素が約20%の点です。

 

ちなみに最初にお話したスピリタスというアルコール度数96%のお酒は水とエタノールの共沸点に到達するまで蒸留を繰り返して作られています。その蒸留回数はなんと70回を超えるとのこと。ちなみに私も一度だけ試しにスピリタスを飲みましたがエタノールが口の中で一気に広がり、一口も喉を通りませんでした。

共沸とは身近な化合物でも見られる不思議な現象

沸点が異なる溶液を混ぜると沸点が低い液体が先に気化する、それが直感的なイメージかもしれません。しかし共沸点ではその直感とは異なり、沸点が異なる溶液が組成を変えずに気化していきます。

 

共沸はエタノールや水などの身近な物質でも起こる現象です。身近な物質でも直感とは異なる現象が起こること、そしてそのような不思議な現象も法則や理論を用いることで合理的に説明できること、これらが化学の面白さの一つなのかもしれません。

 

イラスト提供元:いらすとや

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