この記事では「トランジット」について解説する。

端的に言えば、トランジットの意味は「通過すること」です。日本では飛行機の乗り継ぎという意味で使われることが多いが、他にもいろいろな分野で使われている。幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。一緒に「トランジット」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「トランジット」の意味

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「トランジット」というと、飛行機の乗り継ぎが思い浮かびますよね。それ以外に意味があるの?と思われるかもしれませんが、実は他にもいろいろな意味で使われているのです。

「トランジット」の基本的な意味

まずは、辞書で「トランジット」の意味をチェックしてみましょう。

1 通行すること。通過すること。
2 航空機で目的国に行く途中、給油その他のために一時他国の空港に立ち寄ること。乗客は空港外には出られず、空港外で宿泊する場合には一時的な通過査証(トランジットビザ)が発給される。
3 インターネットで、プロバイダーが相互にネットワークを接続する方法の一。上位の大規模なプロバイダーが下位の小規模なプロバイダーに対して、経路情報を有償で提供し、パケットを中継すること。→ピアリング

出典 デジタル大辞泉(小学館)「トランジット」

「トランジット」の本来の意味は「通行すること」「通過すること」です。飛行機以外でも、いろいろな分野で使われていますので、それぞれの意味を見ていきましょう。

飛行機の乗り継ぎ

「トランジット」という言葉は、日本では飛行機の「乗り継ぎ」という意味で使われることが多いですね。飛行機が目的地に向かう途中、給油や機内食の補給のために立ち寄った中継地でいったん飛行機から降りて待機し、その後に同じ機体に乗って最終目的地まで行くことをいいます。短時間の場合は機内で過ごすこともありますね。

物流の「トランジット」

「トランジット」するのは人だけではありません。航空輸送で、中継地の空港に到着した荷物を、同じ航空機に積んだまま、または別の飛行機に積み替えて、最終の目的地まで運ぶことも「トランジット」なのです。また、海上輸送の場合、輸送途中の港で別の船に積み替えることを「トランシップ」といいます。

\次のページで「天文学の「トランジット法」」を解説!/

天文学の「トランジット法」

天体を観測しているときに、その天体の手前を小さな天体が横切っていくように見えることを「トランジット」(通過)と言います。例えば、太陽の手前を金星が横切ることは「金星の太陽面通過」です。

太陽系外の惑星を見つける方法の一つとして「トランジット法」があります。「トランジット法」は公転している惑星が恒星の前を通過する(トランジット)際、惑星が恒星の一部を隠すために恒星がほんの少し減光することを観測して惑星を見つける方法です。

占いの「トランジットホロスコープ」

西洋占星術では、ホロスコープという天体の配置図を用います。人が生まれたときの星の位置を基にして作られるネイタルホロスコープは、人が持って生まれた宿命を示すものです。それに対して、現在の天体の運行を示すホロスコープは、「トランジットホロスコープ」と呼ばれ、周囲の環境などの外的な要素を示すもの。本来の運命に、外部からの力がどのように影響するかを読み解いていきます。

土木・建築で使う「トランシット」

「トランシット」角度を測るための測量機器で、土木や建築の現場で使われています。望遠鏡が鉛直軸、水平軸の2軸で回転して目標間の角度を精密に測ることができるのです。「トランジット」ではなく「トランシット」と言われていますが、英語の綴りは「transit」で、違いはありません。元は、天文測量で、天体が子午線を通過する時刻を観測するのに使用されていたことから「トランシット」と呼ばれるようになりました。

「トランジット」の語源と使い方

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次に、「トランジット」の語源と例文を見てみましょう。

「トランジット」の語源は?

「トランジット」の語源は、英語の「transit」です。辞書を見てみましょう。

名詞
1不可算名詞
a通過,通行.
b(空港などでの)乗り継ぎ,トランシット.
c移り変わり,変遷,変化;死去.
2不可算名詞 《主に米国で用いられる》輸送,運搬;輸送機関,交通機関.
3不可算名詞 [具体的には 可算名詞] 【天文】
a(天体の)子午線通過; (小天体の)他の天体面通過.
b(天体の)望遠鏡視野通過.
形容詞限定用法の形容詞
1通過[通行]の.
2(空港などの)乗り継ぎ(用)の.
動詞 他動詞
〈…を〉横切って通る.
自動詞
通過する.

出典:新英和中辞典(研究社)「transit」

\次のページで「「トランジット」の例文」を解説!/

辞書を見ると日本語の「トランジット」より意味が多いことがわかります。「通過する」「乗り継ぎ」以外に、「移り変わり」や「変遷」「輸送機関」や「交通機関」などの意味もありますね。ある天体を観測しているときに、別の天体がその前を横切っていくように見えることも「transit」といいます。

「トランジット」の例文

次に、「トランジット」の例文を見てみましょう。

1.ヨーロッパへのフライトの途中、イスタンブール空港に着陸した。トランジットが長時間なので、市内観光のツアーに参加。長距離の旅ならではの過ごし方を満喫した。
2.航空輸送でのトランジットには、経由地での貨物の積み間違い、積み替え時の破損などの課題がある。
3.科学館の観望会で、小さな金星が大きな太陽を横切っていく様子を観察したことが、天文学者を目指す原点となった。今ではトランジット法で太陽系外惑星を探索することが私の仕事になっている。

1.は、飛行機の乗り継ぎという意味です。2.は輸送での荷物の積み替えという意味で「トランジット」が使われています。3.は天文学での「トランジット」ですね。

「トランジット」の類義語

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次に「トランジット」の類義語を見てみましょう。

「トランスファー」「ストップオーバー」

「トランジット」は出発地で搭乗した飛行機で最終目的地まで行くのに対し、「トランスファー」は経由空港で24時間未満のうちに別の飛行機に乗り換えすることをいいます。ちなみに「トランスファー」は英語では「transfer」で、「移転する」という意味です。「ストップオーバー」は、経由地で24時間以上滞在することを意味します。それぞれ微妙に違いますので、混同しないように注意しましょう。

\次のページで「「トランジット」の英訳は?」を解説!/

「トランジット」の英訳は?

「トランジット」の英訳は言うまでもなく「transit」です。

Passengers in transit are shown to a special lounge.
トランジット客は特別休憩室に案内される。

接頭語の「trans-」は「向こうへ」、接尾語の「-it」は「行く」という意味で、「transit」は「通過する」という意味です。「a transit visa」通過ビザ「problems of urban transit」都市の交通問題「the transit from fall to winter」秋から冬への移り変わりという意味になります。

さまざまな分野で使われている「トランジット」を使いこなそう!

この記事では、「トランジット」についての意味、語源、類義語から英訳などを説明しました。

「トランジット」の基本の意味は「通過すること」です。飛行機の乗り継ぎだけでなく、航空物流で荷物を別の飛行機に載せ替えする場合も「トランジット」と言います。また、土木や建築の現場で使う計測機器は「トランシット」でしたね。天体学や占星術、ITの分野でも「トランジット」という言葉は使われています。

ぜひ「トランジット」を乗り継ぎ以外の場面でも使いこなせるようになってくださいね。

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国語言葉の意味

乗り継ぎだけじゃない!「トランジット」の多用な意味・例文・類義語などを日本放送作家協会会員がわかりやすく解説

この記事では「トランジット」について解説する。

端的に言えば、トランジットの意味は「通過すること」です。日本では飛行機の乗り継ぎという意味で使われることが多いが、他にもいろいろな分野で使われている。幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。一緒に「トランジット」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「トランジット」の意味

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「トランジット」というと、飛行機の乗り継ぎが思い浮かびますよね。それ以外に意味があるの?と思われるかもしれませんが、実は他にもいろいろな意味で使われているのです。

「トランジット」の基本的な意味

まずは、辞書で「トランジット」の意味をチェックしてみましょう。

1 通行すること。通過すること。
2 航空機で目的国に行く途中、給油その他のために一時他国の空港に立ち寄ること。乗客は空港外には出られず、空港外で宿泊する場合には一時的な通過査証(トランジットビザ)が発給される。
3 インターネットで、プロバイダーが相互にネットワークを接続する方法の一。上位の大規模なプロバイダーが下位の小規模なプロバイダーに対して、経路情報を有償で提供し、パケットを中継すること。→ピアリング

出典 デジタル大辞泉(小学館)「トランジット」

「トランジット」の本来の意味は「通行すること」「通過すること」です。飛行機以外でも、いろいろな分野で使われていますので、それぞれの意味を見ていきましょう。

飛行機の乗り継ぎ

「トランジット」という言葉は、日本では飛行機の「乗り継ぎ」という意味で使われることが多いですね。飛行機が目的地に向かう途中、給油や機内食の補給のために立ち寄った中継地でいったん飛行機から降りて待機し、その後に同じ機体に乗って最終目的地まで行くことをいいます。短時間の場合は機内で過ごすこともありますね。

物流の「トランジット」

「トランジット」するのは人だけではありません。航空輸送で、中継地の空港に到着した荷物を、同じ航空機に積んだまま、または別の飛行機に積み替えて、最終の目的地まで運ぶことも「トランジット」なのです。また、海上輸送の場合、輸送途中の港で別の船に積み替えることを「トランシップ」といいます。

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