今回は「有性生殖」について勉強していこう。

生殖方法の一つである有性生殖とは何なのか、具体例も合わせて紹介していく。また、もう一つの生殖方法である無性生殖についても学び、それぞれのメリット・デメリットを知ろう。最終的には、有性生殖と無性生殖の違いについて明確に説明できるようになりたい。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

有性生殖とは?

有性生殖(ゆうせいせいしょく)は、2つの個体間で配偶子(はいぐうし)が接合し、ゲノム(DNA)をやりとりすることで新しい個体がつくられる生殖方法です。2つの配偶子に由来する遺伝情報がが混ざり合い、新しい個体が生じます。

生じた個体は両親から遺伝情報を半分ずつ受け継いでいるため、両親のどちらとも同一ではない、新しい遺伝情報をもった個体となるのが、最大の特徴です。これについては後ほど詳しくお話します。

そうですね。有性生殖では生殖細胞…正確にいうと配偶子の接合が重要です。まずは、配偶子について少し詳しく学んでおきましょう。

\次のページで「配偶子」を解説!/

配偶子

配偶子とは?

配偶子とは、生殖細胞の中でもとくに、有性生殖の際に接合する細胞を指します。

そのとおりです。接合する配偶子のうち、大きく運動性のない方の細胞を卵(もしくは卵細胞、卵子)、小さく運動性がある方の細胞を精子といいます。そして、卵と精子の接合をとくに受精とよんでいるんです。

image by iStockphoto

配偶子の大きさや形状は、全ての生物で同じわけではありません。生物種によって差があります。

卵と精子のように、2つの配偶子の間にはっきりとした大きさや形状の違いがみられる場合もあれば、見た目のほとんど変わらないような配偶子による接合が行われる生物もいるんです。

異形配偶子

大きさや形状が大きく異なる配偶子はまとめて異形配偶子とよばれ、異形配偶子同士の接合は異形配偶子接合といいます。

繰り返しになりますが、ヒトの卵や精子といった配偶子は、異形配偶子の良い例です。

一般的に、精子は長い鞭毛をもち、卵に向かって移動することができますが、卵は移動性がありません。その反面、卵には栄養分などの成分が多く含まれています。その成分は、受精によってできた個体の細胞分裂をスムーズに進めるために使われるのです。

\次のページで「同形配偶子」を解説!/

鳥の卵は卵殻につつまれており、ヒトのようにへその緒から栄養を送るということができません。そのため、ある程度の成長に必要な成分が、十分卵に含まれています。卵が栄養豊富なのも納得ですね。

同形配偶子

ほぼ同じ大きさ、形の配偶子は同形配偶子とよばれます。同形配偶子同士の接合は同形配偶子接合です。緑藻の仲間であるクラミドモナスなどでみられます。

接合する配偶子に差がなければ、オスやメスという区別をつけることができません。そのため「オスとメスが行う生殖が有性生殖」というのは、少しもの足りない説明だと私は思います。

無性生殖

有性生殖と異なる生殖方法として、無性生殖が存在します。配偶子の接合は必要なく、からだの一部が新しい個体になる生殖です。

無性生殖には、体がほぼ二等分される分裂や、一部が膨らみ新しい個体が出てくる出芽、植物の栄養生殖や、シダ植物などで見られる胞子生殖などがあります。

Binary fission.png
CC 表示-継承 3.0, リンク

生物によって、有性生殖と無性生殖のどちらで子孫を残すかは異なります。無性生殖をメインにして増殖する生物もたくさんいますが…そういった生物の中には、時折有性生殖も行うものがいるのです。

なぜ、有性生殖と無性生殖の両方を行う必要があるのでしょう?それを考えるには、有性生殖と無性生殖にみられる、それぞれのメリット(長所)とデメリット(短所)について理解しておく必要があります。

有性生殖と無性生殖のメリット・デメリット

有性生殖では、自分のもっていない配偶子を提供してくれる”相手”が必要です。厳しい自然界では”相手”をめぐって他の個体と争いになることも少なくありませんし、群れをつくらない生物では自然界で”相手”に巡り合えない可能性すらあります。これは有性生殖の大きなデメリットです。

一方、有性生殖のメリットは、「新しい個体(子ども)が両親とは異なるゲノムをもつ」ことにあります。それまでの個体よりも環境に適応した形質をもっている可能性があるからです。

image by iStockphoto

無性生殖では”相手”が必要ないため、数を簡単に増やすことができます。条件さえよければ、個体はどんどん増えていくことができるのです。

その反面、新しい個体はすべて親と同じゲノムをもつ、いわば”クローン”。その形質に不利な環境変化がおきたら、すぐに全滅してしまう可能性があります

image by Study-Z編集部

\次のページで「動物の生殖」を解説!/

つまり、「ほとんどは無性生殖でふえるが、たまに有性生殖をおこなう」というタイプの生物は、両者のいいとこどりをしているとも言えます。実際、水中の微生物では、水質が悪化したり、餌が少なくなるなどの危機的な状況におかれると、有性生殖が頻繁にみられるようになったりするんです。

では、最後に動物と植物の有性生殖と無性生殖について、簡単にまとめましょう。

動物の生殖

動物ではその多くが有性生殖で子孫を残します。

私たちがよく知る動物には基本的にオス・メスの区別がありますよね。それぞれのつくる精子と卵による異形配偶子接合で新しい個体をつくります。

視点を哺乳類以外のさまざまな動物にまで広げると、無性生殖によって数を増やす動物もいます。イソギンチャクやプラナリアのように分裂するもの、ヒドラやホヤのように出芽で数を増やすものなどです。

とはいえ、無性生殖ばかりで増殖しているばかりではなく、時に有性生殖もおこない、環境の変化に対応できるようにしています。

植物の生殖

植物で行われる有性生殖は、めしべにある卵細胞に、おしべでつくられた精細胞が受精することでおこなわれます。精細胞は花粉の中に存在し、花粉がめしべの柱頭につく(受粉する)と、花粉管という管をとおって卵細胞までたどり着くのです。受精した卵細胞は種子となります。

植物には、無性生殖によって数を増やすものも少なくありません。植物が種ではなく、栄養器官によって子孫を増やす方法を栄養生殖といいます。

image by iStockphoto

例えば、サツマイモやジャガイモは放っておくと芽や根が出てきます。さらに成長すると、新しいイモがつきますよね。種子からではなくても新しい個体を増やすことができる、栄養生殖の典型です。

他にも、ベンケイソウの不定芽やイチゴのランナーなども有名ですね。さし木で増やすことができる植物もたくさんあります。

しかしながら、これらの植物も、時には受粉して種子を残すのです。やはり無性生殖ばかりというわけにはいかないのでしょう。

「なぜ有性生殖をするのだろう?」

有性生殖や配偶子、あわせて無性生殖についても一通りご紹介してきました。有性生殖についての話をする際には、無性生殖との比較を欠かすことができません。「なぜ有性生殖をするのだろう?」という疑問に対して、そのメリットやデメリットをしっかりと説明できるようになるとよいでしょう。また、動物や植物で見られる有性生殖と無性生殖の種類についても抑えておきたいですね。

高校生の皆さんは、配偶子がつくられる際に起きる特別な細胞分裂である”減数分裂”についても、しっかり学習しておきましょう。

イラスト提供元:いらすとや

" /> 「有性生殖」って何?無性生殖との違いや特徴も!現役講師が簡単にわかりやすく解説 – Study-Z
理科生物

「有性生殖」って何?無性生殖との違いや特徴も!現役講師が簡単にわかりやすく解説

今回は「有性生殖」について勉強していこう。

生殖方法の一つである有性生殖とは何なのか、具体例も合わせて紹介していく。また、もう一つの生殖方法である無性生殖についても学び、それぞれのメリット・デメリットを知ろう。最終的には、有性生殖と無性生殖の違いについて明確に説明できるようになりたい。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

有性生殖とは?

有性生殖(ゆうせいせいしょく)は、2つの個体間で配偶子(はいぐうし)が接合し、ゲノム(DNA)をやりとりすることで新しい個体がつくられる生殖方法です。2つの配偶子に由来する遺伝情報がが混ざり合い、新しい個体が生じます。

生じた個体は両親から遺伝情報を半分ずつ受け継いでいるため、両親のどちらとも同一ではない、新しい遺伝情報をもった個体となるのが、最大の特徴です。これについては後ほど詳しくお話します。

そうですね。有性生殖では生殖細胞…正確にいうと配偶子の接合が重要です。まずは、配偶子について少し詳しく学んでおきましょう。

\次のページで「配偶子」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: