「割愛」の語源は?
次に「割愛」の語源を確認しておきましょう。
「割愛」はもともと仏教の用語で、「人や物事に対する愛着の気持ちを断ち切ること」という意味の言葉でした。愛する家族や故郷を離れて出家することを「割愛」と言っていたそうです。
『梵舜本沙石集』という鎌倉時代の仏教説話集に、「割愛出家の沙門、なんぞ世財をあらそはん」という一文があります。これは、「家族や故郷への愛着を断ち切って出家した僧侶が、どうして財産をめぐって争うことがあろうか」という意味です。(※ちなみに「出家」は髪の毛を剃って、仏教の修行のためにお寺に入ることを意味します。)
時代が下るにつれて、仏教関連以外に世間でも広く使われるようになっていきました。
「割愛」の使い方・例文
「割愛」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。
1.卒業式にたくさんの方からの祝電が届いたが、時間の関係で一部のみを紹介して残りは割愛した。
2.私の所属するA大学に、B大学から山田教授の割愛願いが届いた。
3.割愛出家の沙門、なんぞ世財をあらそはん
例文1では、「惜しいと思うものを、思いきって捨てたり、手放したりする」という意味で使われています。「時間の関係で一部のみを紹介して、残りは紹介したかったが仕方なく紹介しなかった」という意味になりますね。
例文2について、ある大学の先生が他の大学に移動する際、異動先の大学が異動元の大学に「おたくの大学の○○先生を、うちの大学にお譲りください」という内容の書類を出します。その書類が「割愛願い」と呼ばれているのです。例文は「B大学からA大学に、”山田先生をうちに譲ってください”という内容の書類が来た」という意味になります。
例文3について、「愛着の気持ちを断ち切ること」という意味で現代語で使われることは原則ありません。
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