
混成軌道とは何か?この疑問を解決するためにはまず電子のもつ粒子と波動の二重性、主殻・副殻・電子軌道そして電子のスピンについて、そして電子配置のルールについて理解することが必要です。
本記事では量子化学の基礎から混成軌道の内容まで国立大学の理系出身で環境科学を専攻し、混成軌道にも詳しいライターNaohiroと一緒に解説していきます。

ライター/Naohiro
国立大学の理系出身。環境科学について学んだ後技術者として化学に携わってきた知識と経験をもとに、分かりやすい解説を心掛けている。
1. 電子軌道とは

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混成軌道の話に入る前に電子軌道について理解する必要がありますので、解説をすることにしましょう。電子軌道とは「ある一定のエネルギー準位をもつ電子が存在する可能性のある範囲を現わしたもの」になります。「軌道」というと電子が一定の動きをしているような感じを受けますが、実際にはぼやっとした「電子雲(でんしうん)」の中に電子が確率的に存在しているというのが正しいイメージです。
これは電子が粒子と波動の二重性をもつことによります。これは電子軌道について解説していく上で前提となる話ですので、頭の片隅に置いておいてくださいね。
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1-1. ボーア原子模型の矛盾
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高校化学で学ぶボーアの原子模型。ニールス・ボーア(Niels Henrik David Bohr、1885-1962)が1913年に確立したモデルですが、実はこのモデルにはまだ問題がありました。これは電磁気学上電荷をもった粒子が円運動を行う際電磁波(エネルギー)を放出するため、最終的に電子は円運動を維持できなくなり原子核と衝突してしまいます。
それを解消したのが前述したような、オーストリア人理論物理学者シュレーディンガー(Erwin Rudolf Josef Alexander Schrödinger、1887-1961)による波動関数とドイツ人理論物理学者マックス・ボルン(Max Born、1882-1970)による確率解釈の考え方です。
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1-2. 主殻と副殻、電子軌道の理解
それでは早速ですが電子軌道に関する概要を説明していきましょう。高校化学でK殻、L殻、M殻…と呼んでいた電子殻のことを主殻と呼びます。主殻は副殻に分けられ、副殻はさらに電子軌道に分けられるのです。
次に主殻、副殻、電子軌道にそれぞれ対応する整数を主量子数n、方位量子数l(エル)、磁気量子数m、更に電子のスピン量子数をsとします。そうするとそれぞれ以下の通り数値を規定することが可能です。
・主量子数 :n=1, 2, 3, …
・方位量子数:l = 0, 1, 2, …, n-1(n種類)
・磁気量子数:m = -l, -l+1, -l+2, …, -1, 0, 1, …, l-2, l-1, l((2l+1)種類)
・スピン量子数:s = +1/2, -1/2
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