この記事では「佳境」について解説する。

端的に言えば佳境の意味は「興味深い場面」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「佳境」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「佳境」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「佳境」の意味や語源・使い方まとめ

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佳境」は「かきょう」と読みます。テレビのニュースやドラマの宣伝などでしばしば耳にしますね。それでは早速「佳境」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「佳境」の意味は?

まず初めに「佳境」の正しい意味を、辞書からの引用で確かめてみましょう。「佳境」には、次のような意味があります。

1.物語が進行して興趣がそそられるようになったところ。

出典:新明解国語辞典(三省堂)「佳境」

「佳境」とは、物語や演劇などの、興味深い場面や、見せ場のことを言います。「佳境に入る」や「佳境を迎える」、「佳境にさしかかる」などの言い方で用いられることが多いでしょう。現代では物語や演劇などの他に、あらゆる出来事に対して使われるようになりました。例えばスポーツの試合や対局などにも使われています。

その他には、物事の頂点や最盛期を指して使われることも増えてきました。例えば「来年卒業を迎える大学生の就職活動は佳境にはいったところです。」などで、見せ場と言うよりも、一番盛んになる時期に対して「佳境」を使っています。本来の意味とはずれてきていますが、言葉は時代と共に変遷していくものですから、いずれ正しい使い方になるのかも知れません。ただ、現在の正しい意味は「興味深い場面」「見せ場」であることを覚えておいてください。

「佳境」の語源は?

次に「佳境」の語源を確認しておきましょう。「佳境」は、優れている、美しいと言う意味の「佳」と、区切りや、分かれめを意味する「境」と言う漢字からできています。つまり、ここから素晴らしくなっていくところ、と言う意味ですね。

語源は中国の有名な画家、顧愷之の発言からだと考えられています。伝記によると、顧愷之はサトウキビを食べる時、甘くない方から食べるようにしていたそうで、それを不思議に思った人が、なぜ甘くない方から食べるのか聞いてみたそうです。すると、顧愷之は「漸入佳境(漸く佳境に入る)」と答えました。これは「だんだん良いところになってくる」と言う意味で、「だんだん甘くなっていくのがいいんだ」と伝えたのです。このことから、物事が良いところに到達することを「佳境に入る」と言うようになったのですね。

\次のページで「「佳境」の使い方・例文」を解説!/

「佳境」の使い方・例文

それでは、「佳境」の使い方を実際の例文で見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.読んでいる推理小説がいよいよ佳境に入り、文章も緊迫したものになってきた。
2.映画が佳境を迎え、アクションも最高潮の盛り上がりを見せたところで、仕事の電話が入ってしまって興が覚めた。
3.名人と挑戦者の一手も無駄にできぬ緊張感のある戦いだったが、ついに対局が動き出し佳境を迎えている。

「佳境」とは、例文1、2のように物語や映画、小説などの見せ場や山場に使われることが多いです。例文3は、対局に用いられていますが、このように対戦やスポーツなどの試合でも使うことができるでしょう。

先ほども少し述べましたが、「就職活動の佳境」「桃の出荷が佳境」などと、物事の頂点や最盛期に対して用いることが増えてはいますが、本来の意味とは少し違いますので例文としては挙げませんでした。現代ではそのような使い方をしている場合もある、と言うことだけ覚えておいてください。

「佳境」の類義語は?違いは?

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「佳境」の類義語には「たけなわ」が挙げられます。

「たけなわ」

たけなわ」は、宴会などの席で必ず耳にする言葉ですね。「宴もたけなわですが」とよく使われている言葉です。催事で締めの挨拶に非常に良く使われる言葉ですから、意味をしっかりと覚えておきましょう。意味は、行事や季節などが最も盛んになっている、ということです。 漢字では「酣」と書き、「物事の真っ盛り」と言う意味を持っています。これは、お酒が発酵し、じょじょに甘く飲み頃になってきたという意味ももつ言葉です。お酒に関する言葉がもとですが、宴会だけではなく、催事や「春たけなわ」など、季節に対して使うこともあります。「佳境」のように物語や舞台に対しては使えませんが、最高潮、と言う意味が同じですので「佳境」の類義語と言えるでしょう。

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「佳境」の対義語は?

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「佳境」は舞台や物語の山場、と言う意味ですから、ぴったりとした対義語はありません。ですが、対義語に近い表現として「興が醒める」が挙げられますので説明しましょう。

「興が醒める」

興が醒める」は「きょうがさめる」と読みます。「」は、「はじめる」「おこす」、の他にも「おもしろみ」と言う意味を持っている漢字です。そして、「醒める」は、正気を取り戻す、と言うことですから、つまり、それまでせっかく楽しんでいたものに、興味や面白みがなくなることですね。「佳境」が物語などの盛り上がりの面白いところ、と言う意味ですから、面白みが失せて白けると言う「興が醒める」は、対義語に近い表現だと言えるでしょう。

「佳境」は「終盤」ではない!

「佳境」の誤用例として多いのが、物語などの終盤を指して「佳境」と言う使い方です。確かに、物語の盛り上がりと言うのは終盤に多い物ですが、「佳境」の意味はあくまでも、一番興味深い場面、盛り上がる場面、と言うことですから、終盤とは限らないのですね。また、ビジネスシーンで使う場合に「プロジェクトが佳境に入る」と言った場合、プロジェクトが終わりに近づいていると間違った解釈をする場合がありますが、これも間違いです。この場合、重要な局面に入った、と言うのが正しい意味ですね。他にも、ビジネスシーンなどで「大変な苦労をするところ」と言う意味で「佳境」を使う誤用例もありますので、気をつけましょう。

「佳境」を使いこなそう

この記事では「佳境」の意味・使い方・類語などを説明しました。「佳境」は、誤用や、本来の意味とは違っているが一般的に認知されている使い方が多い言葉です。例えば、「年末の買い物の来店客数が佳境に入った」など、「佳境」を、一番最盛期である、と言う意味で用いた場合などですね。これは本来の意味とは違いますが、一般的には違和感なく使われています。言葉は変遷していくものなので、いつかは誤用が正しい使い方になっていく可能性もあるでしょう。しかしまずは正しい意味を知ることが大事です。正しい意味を知ったうえで、本来の意味と違う使い方が一般的にされているのだ、と言う理解をしましょう。

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国語言葉の意味

「佳境」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学部卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「佳境」について解説する。

端的に言えば佳境の意味は「興味深い場面」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「佳境」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「佳境」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「佳境」の意味や語源・使い方まとめ

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佳境」は「かきょう」と読みます。テレビのニュースやドラマの宣伝などでしばしば耳にしますね。それでは早速「佳境」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「佳境」の意味は?

まず初めに「佳境」の正しい意味を、辞書からの引用で確かめてみましょう。「佳境」には、次のような意味があります。

1.物語が進行して興趣がそそられるようになったところ。

出典:新明解国語辞典(三省堂)「佳境」

「佳境」とは、物語や演劇などの、興味深い場面や、見せ場のことを言います。「佳境に入る」や「佳境を迎える」、「佳境にさしかかる」などの言い方で用いられることが多いでしょう。現代では物語や演劇などの他に、あらゆる出来事に対して使われるようになりました。例えばスポーツの試合や対局などにも使われています。

その他には、物事の頂点や最盛期を指して使われることも増えてきました。例えば「来年卒業を迎える大学生の就職活動は佳境にはいったところです。」などで、見せ場と言うよりも、一番盛んになる時期に対して「佳境」を使っています。本来の意味とはずれてきていますが、言葉は時代と共に変遷していくものですから、いずれ正しい使い方になるのかも知れません。ただ、現在の正しい意味は「興味深い場面」「見せ場」であることを覚えておいてください。

「佳境」の語源は?

次に「佳境」の語源を確認しておきましょう。「佳境」は、優れている、美しいと言う意味の「佳」と、区切りや、分かれめを意味する「境」と言う漢字からできています。つまり、ここから素晴らしくなっていくところ、と言う意味ですね。

語源は中国の有名な画家、顧愷之の発言からだと考えられています。伝記によると、顧愷之はサトウキビを食べる時、甘くない方から食べるようにしていたそうで、それを不思議に思った人が、なぜ甘くない方から食べるのか聞いてみたそうです。すると、顧愷之は「漸入佳境(漸く佳境に入る)」と答えました。これは「だんだん良いところになってくる」と言う意味で、「だんだん甘くなっていくのがいいんだ」と伝えたのです。このことから、物事が良いところに到達することを「佳境に入る」と言うようになったのですね。

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