今回のテーマは「フィードバック調節」です。
生物は身体の状態を一定に保つ(恒常性維持)ために様々な調整メカニズムを備えている。その調整するためのメカニズムの一つで主に「ホルモンの分泌」を調節しているのが「フィードバック調節」と呼ばれるシステムです。生物に詳しい現役理系大学院生ライターcaoriと一緒に解説していきます。

ライター/Caori

国立大学院の博士課程に在籍している現役の理系大学院生。とっても身近な現象である生命現象をわかりやすく解説する「楽しくわかりやすい生物の授業」が目標。

フィードバック調節とは

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フィードバックとは、英語の「feedback」に由来する言葉で直訳すると「帰還(元の場所へ帰る)」になります。もともとはIT分野や工学分野で使われる言葉ですが、最近はビジネスの場でも多く使われるので聞いたことがある方も多いかもしれません。

一般にフィードバック調節とは「ある機構で結果を原因側に戻すことで原因側を調節する機構」と表現されています。これを生物の分野に当てはめて言うと、「生成物がその分泌元に働きかけてホルモンの分泌量を増やしたり、逆に減らしたりするための制御システム」のことです。

フィードバック調節が必要な理由

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なぜ「フィードバック調節」のようなシステムが必要なのでしょうか。それは、ホルモンはいつも一定の濃度に保たれるものばかりでなく、「濃度に応じて分泌されるもの」や、「リズムをもって分泌されるもの」が存在するためです。

たとえば、空腹時(血糖値が低いとき)に高くなるものや、一日のうち朝高く夜低いという変動(日内変動)するもの、女性ホルモンのように一か月程度の周期に合わせて増減するものもあります。このため、ホルモンは必要な効果を発揮したら、分泌量が少なくなってもらわないと恒常性が維持できません。このために「フィードバック調節」が存在するのです。刺激に応じてホルモンが分泌され、一定の効果を発揮すると、これによって生じた変化はホルモン分泌を抑制する方向に作用します。これが「ネガティブ(負の)フィードバック調節」。逆に促進する方向に作用する場合は「ポジティブ(正の)フィードバック調節」と呼びます。

フィードバック調節の種類

フィードバック調節の種類

image by Study-Z編集部

前述したようにフィードバック調節は2種類に分けられます。生成物(結果)の増加がホルモンの分泌量を減少させる方向に調節することを「ネガティブ(負の)フィードバック調節」、逆にさらにホルモンの分泌を増加させる方向に調節することは「ポジティブ(正の)フィードバック調節」です。

ここからは実際に生体内で起こっている具体例を交えながら「ネガティブフィードバック」と「ポジティブフィードバック」について解説していきます。

\次のページで「ネガティブフィードバック調節の例」を解説!/

ネガティブフィードバック調節の例

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ネガティブフィードバック調節はあるホルモンが分泌されたときに、生成物がそのホルモンを減らす方向に働いて働きを弱めていく仕組みのこと。実は、生体のほとんどのホルモン調節は、このネガティブフィードバック調節によって調節されているのです。

ここでは血糖値の維持を例に説明をします。「血糖」とは「血液中の糖(グルコース)」のことで、糖は脳にとって重要なエネルギー源のため、血糖値が低すぎると意識障害などを起こし大変危険です。そのため、正常な範囲より血糖値が低下すると膵臓や脳の視床下部が「血糖値が下がっている」ことを感知して、血糖値を上げるように働くホルモンを分泌して血糖を増加させます。

しかし、血糖値を上昇させるホルモンが放出され続けると、今度は高血糖状態になってしまい、これは血管にとって良い状態ではありません。そのため、膵臓や視床下部は血液中のホルモンの量が一定量に達したり、高血糖を感知するとホルモンの分泌を停止します。この「ホルモン濃度の上昇」や「ホルモンの働きによる体内の変化(高血糖)」が “結果” となって”原因”であるホルモンの分泌を止める働きがネガティブフィードバック調節です

「ネガティブフィードバック調節」はホルモンの効果が効きすぎないように止める仕組みなのでわかりやすいですね。

ポジティブフィードバック調節の例

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ポジティブフィードバック調節はあるホルモンが分泌されたときに、さらにそのホルモンが増える方向に働いて、働きをどんどん強めていく仕組みです。「どんどん働きを強めて大丈夫なの?」という疑問もあるかと思いますが、例を見るとわかりやすいかと思います。ポジティブフィードバックの例は少ないので順番に見ていきましょう。

「ポジティブフィードバック」は止血に大きくかかわっています。怪我をして出血をすると、出血を止めるために血小板が活性化し、その活性化された血小板からさらに生理活性物質が放出され、さらに血小板が活性化され、大きな「生体糊(=フィブリン)」を作り出血を止めているのです。

他にも分娩時には、赤ちゃんが出てくるために子宮頸管が伸びると下垂体後葉から「オキシトシン」が分泌されて子宮が収縮して赤ちゃんを押し出そうとします。それが間脳を刺激して、さらにオキシトシンが分泌され、より強い子宮の収縮を起して最終的に分娩にいたる仕組みです。女性の場合には排卵時や母乳の産生にもポジティブフィードバックが関わっています。

ネガティブフィードバックにように弱める反応だけだと、止血はできないし、出産や授乳が途中で止まってしまい、一大事です。このため、途中で止まることなく何かを成し遂げる必要があるときには「ポジティブフィードバック」によって、反応をどんどん強めるように調節されています。

フィードバック調節とアロステリック調節の違い

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最後によく聞かれる「フィードバック調節」と「アロステリック調節」の違いについて解説します。どちらも酵素活性の制御を行ないますが、両者は別物なので注意が必要です。

まず、アロステリック酵素とは、酵素の活性中心とは別の部位に調節因子となる低分子化合物が結合することにより、酵素の立体構造が変化して、酵素活性が調節される酵素のこと。アロステリック調節とは、このような性質をもつアロステリック酵素がそのタンパク質の生理活性を調節する方式のことです。

フィードバック調節は、生成物がその物質を生成する大元の物質を活性化または阻害することにより、その生成物の生成を促進したりあるいは減少させる調節でしたね。フィードバック調節は代謝の流れを調整する機構、アロステリック調節は分子そのものを調整する機構と言うこともできます。

身体を維持する精巧な仕組み「フィードバック調整」

今回はフィードバック調節について具体例を交えて解説しました。

フィードバック調節はとても精巧に調節されている機構ですが、その精巧さゆえに少々の不具合でも身体に大きな影響を与えてしまい、大きな病気につながっています。また、とても重要なシステムがゆえに、テストでも高頻度で出題される分野です。仕組みや具体例を学ぶことで、ご自身の健康やテスト勉強にも役立てて頂けたらと思います。

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タンパク質と生物体の機能理科生物細胞・生殖・遺伝

3分で簡単「フィードバック調節」ホルモンの分泌を調整している機能について現役理系大学院生がわかりやすく解説!

今回のテーマは「フィードバック調節」です。
生物は身体の状態を一定に保つ(恒常性維持)ために様々な調整メカニズムを備えている。その調整するためのメカニズムの一つで主に「ホルモンの分泌」を調節しているのが「フィードバック調節」と呼ばれるシステムです。生物に詳しい現役理系大学院生ライターcaoriと一緒に解説していきます。

ライター/Caori

国立大学院の博士課程に在籍している現役の理系大学院生。とっても身近な現象である生命現象をわかりやすく解説する「楽しくわかりやすい生物の授業」が目標。

フィードバック調節とは

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フィードバックとは、英語の「feedback」に由来する言葉で直訳すると「帰還(元の場所へ帰る)」になります。もともとはIT分野や工学分野で使われる言葉ですが、最近はビジネスの場でも多く使われるので聞いたことがある方も多いかもしれません。

一般にフィードバック調節とは「ある機構で結果を原因側に戻すことで原因側を調節する機構」と表現されています。これを生物の分野に当てはめて言うと、「生成物がその分泌元に働きかけてホルモンの分泌量を増やしたり、逆に減らしたりするための制御システム」のことです。

フィードバック調節が必要な理由

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なぜ「フィードバック調節」のようなシステムが必要なのでしょうか。それは、ホルモンはいつも一定の濃度に保たれるものばかりでなく、「濃度に応じて分泌されるもの」や、「リズムをもって分泌されるもの」が存在するためです。

たとえば、空腹時(血糖値が低いとき)に高くなるものや、一日のうち朝高く夜低いという変動(日内変動)するもの、女性ホルモンのように一か月程度の周期に合わせて増減するものもあります。このため、ホルモンは必要な効果を発揮したら、分泌量が少なくなってもらわないと恒常性が維持できません。このために「フィードバック調節」が存在するのです。刺激に応じてホルモンが分泌され、一定の効果を発揮すると、これによって生じた変化はホルモン分泌を抑制する方向に作用します。これが「ネガティブ(負の)フィードバック調節」。逆に促進する方向に作用する場合は「ポジティブ(正の)フィードバック調節」と呼びます。

フィードバック調節の種類

フィードバック調節の種類

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前述したようにフィードバック調節は2種類に分けられます。生成物(結果)の増加がホルモンの分泌量を減少させる方向に調節することを「ネガティブ(負の)フィードバック調節」、逆にさらにホルモンの分泌を増加させる方向に調節することは「ポジティブ(正の)フィードバック調節」です。

ここからは実際に生体内で起こっている具体例を交えながら「ネガティブフィードバック」と「ポジティブフィードバック」について解説していきます。

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