この記事では「ネグレクト」について解説する。

端的に言えばネグレクトの意味は「育児放棄」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「ネグレクト」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解するのをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「ネグレクト」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「ネグレクト」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「ネグレクト」の意味は?

「ネグレクト」には、次のような意味があります。

1.無視すること。ないがしろにすること。
2.子供に対する適切な養育を親が放棄すること。例えば、食事を与えない、不潔なままにしておく、病気やけがの治療を受けさせない、乳児が泣いていても無視するなどの行為のこと。子供の精神的な発達が阻害され、人格形成に悪影響を与えるといわれる。養育放棄。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「ネグレクト」

「ネグレクト」とは、子どもや高齢者、障害者や入院中の患者など、いわゆる弱者への虐待のひとつです。衣食住の世話や介護をおこたり、ほうっておくことをいいます。ペットの飼育をおこたることもネグレクトです。最近では、お風呂に入らなかったり食事をまともにとらなかったりして、自分自身のニーズをほうっておくことも「セルフネグレクト」と呼びます。

ネグレクトと聞いてまず思い浮かぶのは、子どもを放置したままにする「育児放棄」ではないでしょうか。厚生労働省によると、平成30年度にネグレクトが原因で死亡した子どもの人数は、暴力などの身体的虐待によるものを上回りました。みなさんも、ネグレクトに関連する悲しいニュースを耳にしたことがあるはずです。

ネグレクトには、消極的ネグレクトと積極的ネグレクトの2つのパターンがあります。消極的ネグレクトとは、経済的に困難があったり、保護者自身が病気や障害をもっていたりして、ネグレクトに「なってしまう」パターンのこと。積極的ネグレクトとは、必然となる理由なしに、育児を放棄するパターンです。

さらに、長くひとりにしたり適切な衣食住を与えなかったりする身体的ネグレクト、子どもの言うことを無視したりする情緒的ネグレクト、具合が悪くても診察を受けさせない医療的ネグレクト、学校に通わせない教育的ネグレクトと細分化されます。

「ネグレクト」の語源は?

次に「ネグレクト」の語源を確認しておきましょう。「ネグレクト」の語源は英語の「neglect」。同じ言葉のようですが、意味には少し違いがあります。日本語で「ネグレクト」といえば一般的に「育児放棄」をさしますが、英語の「neglect」は「無視する」「おこたる」「見過ごす、やり忘れる」と広い意味をもつ動詞です。neglectひとつで、意志的に「無視する」、なまけの気持ちから「おこたる」、不注意で「見過ごす、やり忘れる」といろいろなニュアンスを表します。「ネグレクトをする」という意味もありますよ。派生語には「negligence」があり、こちらは名詞です。「義務不履行」「怠慢」「過失」という意味があります。

さらに語源をさかのぼると、ラテン語の「選別をしない」という意味にたどり着くそう。「lect」はラテン語の「legere(選ぶ)」からきており、「neg」は否定を表す接頭辞です。「選別をしない」という意味が「おこたる」イメージにつながります。

では、日本語での「ネグレクト」という言葉は、いつごろから使われるようになったのでしょう。それは平成12年、「児童虐待防止法」が施行されたころからです。それ以前にも、英語と同じ「無視する」という意味で使われてはいました(例・国民の声をネグレクトしている)。しかしメジャーな言葉ではなく、一般には広まりませんでした。「育児放棄」をさす言葉として認識されてからは、広く使われています。

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「ネグレクト」の使い方・例文

「ネグレクト」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.ネグレクトが子どもに与える影響は大きく、トラウマとなって大人になっても苦しむことがある。
2.ひとり親世帯の母親・父親を困窮や孤立から救い支援することで、ネグレクトの悪化を防ぐことができる。
3.ネグレクトに関する相談件数は10年で約2倍に増加している。

ネグレクトは家庭内という「閉じられた空間」で行われるため、周囲が気づかず悪化することも少なくありません。乳幼児の場合、ネグレクトは死に直結する虐待です。その兆候を見つけたら早期発見につなげる必要があります。予防接種や乳幼児健診を受けていないことや、幼稚園や保育園を長期にわたって休むこと、学校の無断欠席が多いことなど、医師や教師、ソーシャルワーカーの気づきが命を救うこともあるでしょう。

一方、ネグレクトはそれを行う保護者に問題があると考えがちですが、支援が必要な場合もあります。パートナーからDVを受けている場合、保護者自身が子ども時代にネグレクトを経験している場合、若くして出産したため養育者として未熟な場合など、事情はさまざまです。苦しい状況におかれている家庭を救う社会の仕組みが必要とされています。

「ネグレクト」の類義語は?違いは?

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「ネグレクト」の類義語には「放置」「怠慢」などがあります。

「放置」

「放置」とは、かまわずほうっておくこと。ネグレクトは、まさしく「子どもを放置すること」です。

「放置子(ほうちご)」という言葉があるのを知っていますか。インターネット上で生まれた言葉で、親にきちんと監視されていない子どものことです。迷惑を考えず友達の家に入りびたるなど、できればかかわりたくない、というのが代表的なイメージ。その親に対し「子どものことをもっとしっかり見ろよ」という含みをもった言葉です。しかし、やっかいに見える放置子ですが、ネグレクトを含む虐待を受けている可能性もないとはいえません。冷静に観察できる大人の目が必要です。

ちなみに、放置と似て異なる言葉に「放任」があります。放任というと自由な感じがあり、むしろ肯定的なイメージになりますよね。子ども本人の意思を尊重するというニュアンスが、ネグレクトと全く違うところです。

\次のページで「「怠慢」」を解説!/

「怠慢」

「怠慢」とは、しなければならないことを、なまけておこたることです。まさに養育の「怠慢」をネグレクトと呼びます。

職務怠慢(しょくむたいまん)という言葉は聞いたことがありますね。職務上すべきことを、なまけておろそかにすることです。職務怠慢であれば、処分を受けるのは自業自得であり、問題がおきたなら責任を負うべきでしょう。しかし、ネグレクトは責任を負って済む問題ではありません。子どもの将来という、親であっても責任を負いきれない大きなものに影響がおよぶのですから。

「ネグレクト」の対義語は?

「ネグレクト」の対義語には「愛護」があります。

「愛護(あいご)」

「愛護(あいご)」とは、かわいがり守ることです。愛護は「虐待」の対義語でもあります。ネグレクトは虐待の種類のひとつです。

「動物愛護(どうぶつあいご)」という言葉がありますね。動物をかわいがり、かばって守ることです。ネグレクトを受けている子どもの中には、自分が虐待にあっていることを自覚していない子どももいます。適切な愛護を受けて、守られるとはどういうことなのかを知る必要があるでしょう。

「ネグレクト」の英訳は?

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「ネグレクト」の英訳は「child neglect」です。

「child neglect」

日本語の「ネグレクト」は、もともと英語の「neglect」に由来しますが、「neglect」をそのまま日本語に訳すと「無視する」「おこたる」「見過ごす」となります。日本で「ネグレクト」という場合は「育児放棄」を指すことが多いため、「育児放棄」の英語訳である「child neglect」が英訳として適切です。

虐待にはネグレクトのほかに、身体的虐待、心理的虐待、性的虐待もあります。ネグレクトより広い意味で「子どもに対する虐待」というときには「child abuse」を使うとよいでしょう。

ちなみに高齢者に対するネグレクトは「elder neglect」、高齢者に対する虐待は「elder abuse」となります。

\次のページで「「ネグレクト」を使いこなそう」を解説!/

「ネグレクト」を使いこなそう

この記事では「ネグレクト」の意味・使い方・類語などを説明しました。

ネグレクトの増加にともない、その規定も広がっています。以前は法律上の決まりで、ネグレクトをおこなう者としては保護者のみがカウントされていました。現在では保護者以外の同居人もネグレクトをおこなう者としてカウントされます。「ネグレクト」という言葉がたくさん使われることで、逆に、ネグレクトの芽を摘む効果を期待したいですね。

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「ネグレクト」の意味や使い方は?例文や類語を読書家Webライターがわかりやすく解説!

「ネグレクト」の使い方・例文

「ネグレクト」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.ネグレクトが子どもに与える影響は大きく、トラウマとなって大人になっても苦しむことがある。
2.ひとり親世帯の母親・父親を困窮や孤立から救い支援することで、ネグレクトの悪化を防ぐことができる。
3.ネグレクトに関する相談件数は10年で約2倍に増加している。

ネグレクトは家庭内という「閉じられた空間」で行われるため、周囲が気づかず悪化することも少なくありません。乳幼児の場合、ネグレクトは死に直結する虐待です。その兆候を見つけたら早期発見につなげる必要があります。予防接種や乳幼児健診を受けていないことや、幼稚園や保育園を長期にわたって休むこと、学校の無断欠席が多いことなど、医師や教師、ソーシャルワーカーの気づきが命を救うこともあるでしょう。

一方、ネグレクトはそれを行う保護者に問題があると考えがちですが、支援が必要な場合もあります。パートナーからDVを受けている場合、保護者自身が子ども時代にネグレクトを経験している場合、若くして出産したため養育者として未熟な場合など、事情はさまざまです。苦しい状況におかれている家庭を救う社会の仕組みが必要とされています。

「ネグレクト」の類義語は?違いは?

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「ネグレクト」の類義語には「放置」「怠慢」などがあります。

「放置」

「放置」とは、かまわずほうっておくこと。ネグレクトは、まさしく「子どもを放置すること」です。

「放置子(ほうちご)」という言葉があるのを知っていますか。インターネット上で生まれた言葉で、親にきちんと監視されていない子どものことです。迷惑を考えず友達の家に入りびたるなど、できればかかわりたくない、というのが代表的なイメージ。その親に対し「子どものことをもっとしっかり見ろよ」という含みをもった言葉です。しかし、やっかいに見える放置子ですが、ネグレクトを含む虐待を受けている可能性もないとはいえません。冷静に観察できる大人の目が必要です。

ちなみに、放置と似て異なる言葉に「放任」があります。放任というと自由な感じがあり、むしろ肯定的なイメージになりますよね。子ども本人の意思を尊重するというニュアンスが、ネグレクトと全く違うところです。

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