この記事では「生みの親より育ての親」について解説する。

端的に言えば生みの親より育ての親の意味は「自分を産んだ恩よりその後養い育てた恩の方が強い」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

情報誌系のライターを10年経験した1804を呼んです。一緒に「生みの親より育ての親」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/1804

元情報誌系ライター。言葉の由来や意味を調べるのが好きで、最近知ったお気に入りは「あなたは私のオレンジの片割れ」。先日受けた知能検査で言語性IQ141が出た。

「生みの親より育ての親」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「生みの親より育ての親」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「生みの親より育ての親」の意味は?

「生みの親より育ての親」には、次のような意味があります。

自分を生んでくれただけの実の親より、養育してくれた親のほうがありがたいということ。生みの恩より育ての恩。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「生みの親より育ての親」

「生みの親より育ての親」は字面通り、自分を産んだ恩やありがたみよりもその後自分を実際に養い、無育てた恩の方が勝るものだという意味合いの慣用句です。

今回の「親」とは必ずしも父親母親といった血縁関係にある人物を指すものではありません。特に「育ての親」恩師や先輩など本人が恩を受けた相手や環境を総称した表現であり、心身共に本人がありがたいと感じていたり、成長の助けとなった存在全般を指すことができます。「生みの親」の段階ではなしえなかったという事実を踏まえ、それ以上に世話や指導に当たっていた人物の苦労やかけた手間暇を本人や第三者が褒めたたえる構文がメインです。

もちろん、現実的には産むことと育てることのどちらに価値があるかというのは個々人によるものであり、一概にこちらと決めつけることはできません。その上で今回の「生みの親より育ての親」が使われる場面というと、血縁関係や産んだ事実よりもその後受けた愛情や育て方、周囲の人間関係といった外的要因を肯定する文脈や状況であると言えますね。

例えば、本人にとっての「生まれ」に何かしらの事情があり(親が金銭面などやむを得ない理由で子供を手放すなど)、それでもなお誰かが現在に至るまで代わりに育ててまっすぐ育った、といった使い方は分かりやすい例でしょう。

なお、必ず「人」に向けなければならないという縛りはありません。生き物であれば使える言葉なので、文脈によっては動物に使うこともあり得ます。

「生みの親より育ての親」の使い方・例文

この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「生みの親より育ての親」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.女性に学問は必要なしという考えの家に生まれた私でも大学に行きたいと思わせてくれた高校の先生のおかげで今の私があります。「生みの親より育ての親」ですね。


2.去年の今頃あんなに衰弱していたあの子犬が人に懐くなんて、正に「生みの親より育ての親」だなあ。

3.たとえ両親がいないからといって不幸なのではない。「生みの親より育ての親」だ。

いずれの例文も、

・「今」がある程度良い状況であることを前提に、その状態まで導いた存在を称賛しているという構文を取っている

という点で共通していますね。また、

・その称賛の対象が指導者や世話役にあたる存在であること

・「労力、時間、手間を惜しまずかけた」すなわち「継続した時間」のニュアンスを持つ言い回し

という点も抑えておくとより正確でしょう。

「生みの親より育ての親」の類義語は?違いは?

それでは、今度は「生みの親より育ての親」の類義語について見ていきましょう。

その1「産んだ子より抱いた子」

これは「生みの親より育ての親」と全く同じ意味の言葉です。

平安時代の上流階級の家の子供は産んだ母親ではなく乳母が面倒を見ていたというイメージが分かりやすいかと。他にも、冒頭で紹介したように「生みの恩より育ての恩」といった言い回しもあります。「恩」という概念に重きが置かれていることも、後述しますが今回の重要なポイントです。

その2「遠くの親戚より近くの他人」

遠方にいる親類よりも、近隣にいる他人の方が万が一の時頼りになる。血の繋がりがあっても往来が少なければ縁は薄くなるが、赤の他人であっても自分の近くにいる人のほうが、かえって力になってくれるという言い回しですね。

「生みの親より育ての親」とは「人間関係は必ずしも血筋ではない」という意味合いで共通した要素を持っていますが、意味合いとしては微妙に違ってきます。具体的には、

・「遠くの…」は自分との物理的距離、つまり日常の中で/実際/現実問題の中で助けてもらったというニュアンスを持つ

・「遠くの…」は何か助けてもらったなど特定の事に焦点を当てるのに対し、「生みの…」は上述した通り育てられた「過程」つまりある程度時間がかかっているというニュアンスがある

といった違いです。「先日腰を痛めた時に救急車を呼んでくれたのは隣に住むおばちゃんだった」なんて時は、「遠くの親戚より近くの他人」がしっくりきますよ。

\次のページで「「生みの親より育ての親」の対義語は?」を解説!/

「生みの親より育ての親」の対義語は?

それでは今度は「生みの親より育ての親」と反対の意味を持つ言葉について触れていきましょう。

「血は水よりも濃い」

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「血は水よりも濃し」「水は血にならない」とも言います。文字通り、血の繋がった血縁者同士の絆は、どれほど深い他人との関係よりも深く強いものであるという意味です。

英語訳は同様の意味の諺としてBlood is thicker than water。thickerというのは「粘り気がより強い」つまり「濃度が濃い」という訳になります。

「血は水よりも濃い」に限らず、「生み(血筋)>育て(後天的要素)」という意味合いを持つ言葉なら、多かれ少なかれ「生みの親より育ての親」と反対の意味を持つ言葉になりうるのではないでしょうか。

それこそ、例えば2021年1月現在も審議されている日本における夫婦別姓問題。

家族は全員同じ名字であるべきという論者の主張の一つとして「家族の絆が揺らぐ」というものが挙げられます。そのような考えはまさしく「血は水よりも濃い」に通じるものがあるでしょう。

「生みの親より育ての親」の英訳は?

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「生みの親より育ての親」の英語訳に当たる言葉は、「A foster parent is dearer than a real parent.」です。

「A foster parent is dearer than a real parent」

「生みの親より育ての親」の英語訳に当たる言葉は、「A foster parent is dearer than a real parent」。foster parentは里親、つまり血の繋がりの無い親、real parentは生みの親を指します。英語でも「血の繋がりがある」という意味で「本当の」という意味のrealを用いるのですね。

また、今回の「生みの親『より』育ての親」の「より」に当たるのはthan dearer。dearは「親愛なる」という意味で手紙などでもよく見かける言葉でしょう。日本語の意味では「より強く感じる」のは「恩義」や「ありがたさ」といった言葉で表される感情であったのに対し、英語では「親愛な、いとしい、かわいい、敬愛する、大切な」といった「愛情」にフォーカスしているのが印象的。

このニュアンスの違いは、「恩」という言葉の持つ仏教圏とキリスト教圏での意味合いの違いに起因するものです。仏教において「恩」とは自分が受けている恵みを指す言葉。そしてその存在に気づき、感謝することをとても重視します。「おかげさまで」といった表現にも通じるものがあると言えますね。一方キリスト教でも恵みを感じることは重視されているのですが、あくまでこれは神からのものというニュアンスがあるため、「(人間が他者に抱く)愛」というニュアンスを持つdearが用いられるのではないでしょうか。

「生みの親より育ての親」を使いこなそう

この記事では「生みの親より育ての親」の意味・使い方・類語などを説明しました。

意味としては難しい要素の無い言い回しですが、なかなかスッと出てこないフレーズだという方もいらっしゃったのではないでしょうか。しかし、使うべき時にピシッと決められれば一言で一段深い理解や共感を得ることができるのがことわざの一番の魅力。血縁が無いからこそ、その無償の行為の尊さを伝えられるという概念は洋の東西を問いません。ぜひこの際覚えて、ここぞというタイミングで使えるようになってみましょう。

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「生みの親より育ての親」の意味や使い方は?例文や類語を元情報誌系Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「生みの親より育ての親」について解説する。

端的に言えば生みの親より育ての親の意味は「自分を産んだ恩よりその後養い育てた恩の方が強い」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

情報誌系のライターを10年経験した1804を呼んです。一緒に「生みの親より育ての親」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/1804

元情報誌系ライター。言葉の由来や意味を調べるのが好きで、最近知ったお気に入りは「あなたは私のオレンジの片割れ」。先日受けた知能検査で言語性IQ141が出た。

「生みの親より育ての親」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「生みの親より育ての親」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「生みの親より育ての親」の意味は?

「生みの親より育ての親」には、次のような意味があります。

自分を生んでくれただけの実の親より、養育してくれた親のほうがありがたいということ。生みの恩より育ての恩。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「生みの親より育ての親」

「生みの親より育ての親」は字面通り、自分を産んだ恩やありがたみよりもその後自分を実際に養い、無育てた恩の方が勝るものだという意味合いの慣用句です。

今回の「親」とは必ずしも父親母親といった血縁関係にある人物を指すものではありません。特に「育ての親」恩師や先輩など本人が恩を受けた相手や環境を総称した表現であり、心身共に本人がありがたいと感じていたり、成長の助けとなった存在全般を指すことができます。「生みの親」の段階ではなしえなかったという事実を踏まえ、それ以上に世話や指導に当たっていた人物の苦労やかけた手間暇を本人や第三者が褒めたたえる構文がメインです。

もちろん、現実的には産むことと育てることのどちらに価値があるかというのは個々人によるものであり、一概にこちらと決めつけることはできません。その上で今回の「生みの親より育ての親」が使われる場面というと、血縁関係や産んだ事実よりもその後受けた愛情や育て方、周囲の人間関係といった外的要因を肯定する文脈や状況であると言えますね。

例えば、本人にとっての「生まれ」に何かしらの事情があり(親が金銭面などやむを得ない理由で子供を手放すなど)、それでもなお誰かが現在に至るまで代わりに育ててまっすぐ育った、といった使い方は分かりやすい例でしょう。

なお、必ず「人」に向けなければならないという縛りはありません。生き物であれば使える言葉なので、文脈によっては動物に使うこともあり得ます。

「生みの親より育ての親」の使い方・例文

この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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