ミニマムライフ世代とは、収入はあっても必要最低限のものだけで満足する人々のこと。1980年から1988年のあいだに生まれた層にこの傾向があるとされている。大きな買い物よりも貯金を優先、傷つくのが怖い、リスクを恐れるなどの特徴がある。ミニマムライフ世代は日本の消費にも大きな影響を与えると注目されるようになった。

ローリスク・ローリターンを良しとするミニマムライフ世代がどうして生まれたのか、現代社会に詳しいライターひこすけと一緒に解説していきます。

ライター/ひこすけ

アメリカ文化や歴史を専門とする元大学教員。マイホームやマイカーを持たず貯金や資産運用に興味を持つ人が周りに多い。そのような価値観を持つ世代をミニマムライフと表現されていることを知り、気になって調べてみた。

ミニマムライフ世代とは?

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ミニマムライフ世代とは、最低限の生活で満足する世代のこと。上昇志向が強く社会的に・経済的に成功することを目標とする上の世代と一線を画する価値観を持っています。消費行動にも大きな変化が見られることもあり、経済的な面からも注目されるようになりました。

1980年から1988年のあいだに生まれた世代

1980年から1988年のあいだに生まれた世代のことをミニマムライフ世代と表現されます。大企業に勤めており十分に収入があるにも関わらず貯金を重視。車を買わない、マイホームを持たない、出費を抑えた質素な生活を好みます。

この世代に属ずる人々は約1150万人。この時期に生まれた人たち全員の傾向ではありませんが、買い物から生き方に至るまで大きなチャレンジをしないと言われています。このような価値観から縮み思考の世代と表現されることも。それ以前の成功を求める価値観とは相反する世代として位置づけられています。

ミニマムライフ世代はコスパを重視

ミニマムライフ世代が大きなチャレンジを避けるのはコスパを重視するから。チャレンジをするためには一定のリスクを伴います。起業等する場合はそれなりの時間やお金をつぎ込むことも必要となるでしょう。リスクを負って確実に成功できるならいいのですが、必ずしもそうなるとは限りません。

リスクを背負わず楽に生活するのが一番、これがミニマムライフ世代に共通する価値観です。そこで生活にかかるお金や時間の量を最大限に節約。その結果、大きなチャレンジを避けて、生きがいややりがいよりも安定を重視するようになります。ポジティブな言い方をすれば現実志向。ネガティブな言い方をすれば冷めていると言ってもいいでしょう。

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ミニマムライフ世代の特徴1 お金を使わない

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ミニマムライフ世代は、バブル崩壊から就職氷河期に至るまでの日本の景気悪化を経験。景気が良かった時代を知らない世代です。そのためお金に対する感覚はかなりシビア。生活に必要な最低限のものだけを買って、残りは貯金に回す傾向があります。

消費するより貯金を重視する

ミニマムライフ世代より前の世代は、大企業に就職できればあとは安泰。定年までの雇用が保障されていました。そのためローンを組むなどして思い切った買い物をすることが可能。しかしながらミニマムライフ世代は、企業神話が崩壊しているため、定年まで雇用が保障されているとは思っていません。

ちょうど派遣会社が躍進し、非正規雇用が増加した時代。そのためミニマムライフ世代は、大企業に勤めていて高収入であっても、贅沢にお金を使うことを好みません。必要最低限のものだけを買って残りは貯金や資産運用。購買意欲が低いことから日本経済を停滞させるという懸念があるほどです。

身動きできる状態を好む

また、ミニマムライフ世代は、大きな買い物を控える傾向があります。住まいは、住宅ローンを組んでマイホームを取得するのではなく賃貸を好む人が多数。一定以上の年齢になっても車を持たないのもミニマムライフ世代の特徴だと言われています。

これは、ミニマムライフ世代の節約意識であると同時に、身動きできる状態を好むことのあらわれ。かつては不動産は投資先としての魅力がありましたが、この世代のころには地価は下落。住宅を購入することはそれなりのリスクを伴うことに。そこで、状況の変化に対応できるように身軽な状態でいることを好むのです。

ミニマムライフ世代の特徴2 無駄な苦労をしたくない

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ミニマムライフ世代のもうひとつの特徴が無駄な苦労を避けるということ。多くの時間や労力を割いたのに報われない、あるいは失敗に終わることを避けようとします。大きな夢を持つよりも確実に実現することを重視。石橋をたたいて渡るという特徴があります。

不景気の日本では夢を見れない

ミニマムライフ世代がこのような価値観を持つようになったのは日本の景気と密接な関係があります。バブルが崩壊して日本の景気が後退。経済的な成功者と思われていた人が瞬く間に資産を失いました。永遠に存在すると思われていた大企業が倒産するケースも出てきます。

そのような日本を目の当たりにしてきたミニマムライフ世代は夢を見ることを躊躇。大金を得ることより、実直にお金を貯める、貯金を守ることを優先させます。ハイリスク・ハイリターンよりもローリスク・ローリターン。成功するか分からない不確かなものに対してお金を投資することはしません。

人生を堅実に設計する

どうなるか分からないことにチャレンジするよりも人生を堅実に設計するのがミニマムライフ世代のやり方。何歳までにいくら貯金をする、何歳までこのようなスキルを身に付けるなど、人生を計画的にとらえる傾向があります。

このようにリスクを回避する傾向から結婚が遅くなることもミニマムライフ世代の特徴。ひとりのほうがリスクが少ないと考える人も少なくありません。子どもも持たないか、持ったとしても将来の教育資金等を考えて、ひとりにとどめることも多いようです。

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ミニマムライフ世代の特徴3 現在よりも将来に目を向けている

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お給料が入ると外食したり自分にご褒美を買ったりする人も多いでしょう。ミニマムライフ世代は、今お金があったとしても、それで贅沢することはしません。なぜなら彼ら・彼女らは、今よりも将来に目を向けているからです。

目の前にある楽しみに興味なし

バブル世代は男女土わずブランドものに興味がある人が多数。ボーナスが入ったら豪華ディナーや海外旅行にお金をつぎ込む人が多数いました。日本の景気が上昇しているときは今を楽しむ余裕があります。しかし、景気後退後の日本しかしらないミニマムライフ世代は、入ったお金をすぐにつぎ込むことはしません。

そのためハイブランドを購入する人は減少。外食も高級なお店よりも近くのファミレスを選ぶ傾向があります。海外旅行も安くていけるアジアや、国内旅行で十分に満足。ミニマムライフ世代は、ボーナスを目の前にある楽しみではなく貯金に回すため、消費が停滞して日本が滅びると言われることもありました。

将来に備えて貯金や資産運用をする

ミニマムライフ世代の台頭により注目が集まっているのが投資。資産運用は、お金を今つかうのではなく、20年後や30年後を見据えて行うもの。将来のためにお金をキープすることを好むミニマムライフ世代の価値観に合致していました。

この世代はデジタルネイティブでもあるためインターネットの利用に長けています。そのため、国境を越えた投資に取り組み、リスクを分散した資産運用で頭角をあらわす人も出てきました。マイホームにこだわらない身軽さから、海外投資生活を選択する人も目立ち始めます。

ミニマムライフ世代の特徴4 傷つかない生き方をする

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チャレンジして失敗する、それにより傷つくことを恐れることも、ミニマムライフ世代の特徴として挙げられます。何かにチャレンジして失敗するとあとがないというイメージを強く持っているミニマムライフ世代。夢が叶わないことで傷つくことを避け、むしろ心の安定を優先させます。

自分の心の安定を大切にする傾向

ミニマムライフ世代の少し上の世代が就職氷河期世代。小さいころから勉強をがんばり、受験戦争を乗り越えて大学に進学しても、就職活動で苦戦した世代でもあります。努力してもうまくいかないことから、ひきこもりになったり社会を騒がす事件がニュースになったりしました。

景気の悪化による恵まれない状態から精神的な荒みを目の当たりにすることが増加。一部の就職氷河期世代の傾向が反面教師になったという一面もあります。そこでミニマムライフ世代は大きなチャレンジによる刺激よりも、必要最低限の幸せによる心の安定を大切にするようになりました。

親からの教育の影響も

ミニマムライフ世代が傷つかない生き方を重視する理由として、親からの教育的な影響もあると言われています。バブル崩壊後にお金を一気に失う、就職難に陥るケースが増えるなか、子どもに「ああなってはいけない」と教育。失敗しないような生き方を教えるようになります。

そこでキーワードとなったのが安定。就職先として人気が出てきたのが公務員です。小さいころから公務員になるのがベストだと教えられるミニマムライフ世代も少なくありません。小学生に将来の夢を質問したとき、公務員がトップになったことも話題となりました。

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ミニマムライフ世代の特徴5 手ごたえを求める

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一見するとミニマムライフ世代は冷めている、夢がない、やる気がないというイメージを持たれがちですが、実際はそうではありません。彼ら・彼女らが重視するのは手ごたえ。手ごたえを感じることができれば大きなチャレンジに乗り出します。

無気力とは異なるミニマムライフ世代

無駄を嫌う、失敗を恐れる、大きな夢を見ないなど、ミニマムライフ世代の特徴について触れてきました。ここで注意したいのは、ミニマムライフ世代は必ずしも無気力なのではないということ。心のなかに野心を抱いており、やるときはやる人も多いのです。

節約、貯金、投資なども、将来のスキルアップのための軍資金という意識も濃厚。確かな手ごたえさえあれば、どこかで一気に投資しようと思っている人もいます。それまでは着実にスキルや経験を積み重ね、失敗しないための地固めをしているとも言えるでしょう。

30代以降にチャレンジするケースも

計画的であることも先に触れましたが、ミニマムライフ世代が30才や40代になったときに新たな動きが出てくるという予想もあります。30代を過ぎると経済的に安定し、さまざまな実績も蓄積。社会の一線で活躍できる世代に突入します。

インターネットを駆使した事業で起業するミニマムライフ世代が増加。会社に所属せずにフリーランスを選択する人も増えてきます。ミニマムライフ世代のチャレンジは20代ではなく30代さらには40代以降。コツコツと積み上げた資金や経験を発揮し始めています。

ミニマムライフ世代は日本経済とワンセット

日本経済の状況と密接に結びついているのがミニマムライフ世代の特徴。「消費しない」という点だけが強調されがちですが、ものを無駄に持たないという価値観から、新しい働き方や成功の法則を生み出したとも言えます。これからの日本経済の中核となるのがミニマムライフ世代。この世代がリーダーシップをとることで、どのような変化が生まれるのか注目していくと、思いがけない発見があるかもしれません。

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平成昭和現代社会

必要最低限だけでいい「ミニマムライフ世代」について元大学教員が3分でわかりやすく解説

ミニマムライフ世代とは、収入はあっても必要最低限のものだけで満足する人々のこと。1980年から1988年のあいだに生まれた層にこの傾向があるとされている。大きな買い物よりも貯金を優先、傷つくのが怖い、リスクを恐れるなどの特徴がある。ミニマムライフ世代は日本の消費にも大きな影響を与えると注目されるようになった。

ローリスク・ローリターンを良しとするミニマムライフ世代がどうして生まれたのか、現代社会に詳しいライターひこすけと一緒に解説していきます。

ライター/ひこすけ

アメリカ文化や歴史を専門とする元大学教員。マイホームやマイカーを持たず貯金や資産運用に興味を持つ人が周りに多い。そのような価値観を持つ世代をミニマムライフと表現されていることを知り、気になって調べてみた。

ミニマムライフ世代とは?

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ミニマムライフ世代とは、最低限の生活で満足する世代のこと。上昇志向が強く社会的に・経済的に成功することを目標とする上の世代と一線を画する価値観を持っています。消費行動にも大きな変化が見られることもあり、経済的な面からも注目されるようになりました。

1980年から1988年のあいだに生まれた世代

1980年から1988年のあいだに生まれた世代のことをミニマムライフ世代と表現されます。大企業に勤めており十分に収入があるにも関わらず貯金を重視。車を買わない、マイホームを持たない、出費を抑えた質素な生活を好みます。

この世代に属ずる人々は約1150万人。この時期に生まれた人たち全員の傾向ではありませんが、買い物から生き方に至るまで大きなチャレンジをしないと言われています。このような価値観から縮み思考の世代と表現されることも。それ以前の成功を求める価値観とは相反する世代として位置づけられています。

ミニマムライフ世代はコスパを重視

ミニマムライフ世代が大きなチャレンジを避けるのはコスパを重視するから。チャレンジをするためには一定のリスクを伴います。起業等する場合はそれなりの時間やお金をつぎ込むことも必要となるでしょう。リスクを負って確実に成功できるならいいのですが、必ずしもそうなるとは限りません。

リスクを背負わず楽に生活するのが一番、これがミニマムライフ世代に共通する価値観です。そこで生活にかかるお金や時間の量を最大限に節約。その結果、大きなチャレンジを避けて、生きがいややりがいよりも安定を重視するようになります。ポジティブな言い方をすれば現実志向。ネガティブな言い方をすれば冷めていると言ってもいいでしょう。

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