この記事では「養花天」について解説する。

端的に言えば養花天の意味は「春の曇り空」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は広告会社で経験を積み、文章の基本と言葉の使い方を知るライターのHataを呼んです。一緒に「養花天」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/Hata

以前は広告会社に勤務しており、多くの企業の広告作成経験を持つ。相手に合わせた伝え方や言葉の使い方も学び、文章の作成や校正が得意。現在はその経験をいかし、ライターとして活動中。

「養花天」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 49271215

それでは早速「養花天(ようかてん)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「養花天」の意味は?

「養花天」には、次のような意味があります。

サクラの咲くころのくもり空のこと

出典:季語・季題辞典(日外アソシエーツ)「養花天」

「養花天(ようかてん)」は、俳句などで特定の季節を表す言葉である季語の一種。「花曇(はなぐもり)」の異称であり、“桜が咲くころの曇り空”を意味する言葉です。雲が低くたちこめるほどではない、薄く太陽が隠れるような比較的明るい曇り空を指します。

「養花天」の語源は?

次に「養花天」の語源を確認しておきましょう。

「養花(ようか)」とは、“花を養う”という意で、春の花のつぼみが膨らむ様子を指しています。春の花が咲くころは曇り空が多く、天気がさまざまに移り変わるもの。花冷えという言葉もあるように、急に冷え込んだりすることもあれば、急に熱くなることもあります。このような天気が花を育てつぼみを膨らませていくことから、曇り空が花を育て養うという様子を指して「養花天(ようかてん)」と言うようになりました。

「花曇り(はなぐもり)」の異名として使われ、桜の花が咲くころの空一面がうすぼんやりと曇った晩春の様子を指します。

\次のページで「「養花天」の使い方・例文」を解説!/

「養花天」の使い方・例文

「養花天」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.周辺の紅葉スポットが観光客に人気の旅館だが、オーナーや関係者が言うには養花天の頃もオススメとのことだった。
2.暖かった昨日に比べて今朝はかなり寒く、今日も一日曇り空が広がっている。まさに養花天と言えるだろう。
3.雪解水や陽だまりの様子を見てもう養花天の頃かと思った。予想より早く春を楽しめそうだ。
4.関西では桜が開花したそうだが、まだこちらは養花天といったところだ。週末には花見を楽しみたいものだがどうだろう。
5.自然の食材を使った料理が有名な洋食レストランの予約が取れたんだ。桜を楽しむには天気が不安だけれど、養花天を満喫できる機会だと考え直すことにしたよ。
6.日本語には春霞や養花天など、さまざまな美しい言葉がある。季語を覚えれば詩や俳句の世界ももっと楽しめると祖母が教えてくれたんだ。
7.春先の曇り空も、寒くていやだと考えるか、養花天だと考えるか、どっちで捉えるかで随分印象が変わるものだ。
8.富士山近くのエリアにあるお店やカフェに聞くと、養花天の頃から訪問客の人出が増え始めるらしいよ。
9.春になっても曇り空が多く、養花天の日々が続いている。

「養花天」とは、春の花がさくころの薄く曇った空模様のこと。季節を表す季語としても用いられます。そのため例文のように、季節や情景を指して使うのが一般的。詩的で美しい表現としても使われ、今も俳句や詩で見られる言葉です。

「養花天」の類義語は?違いは?

image by PIXTA / 37821090

次に、「養花天」の類義語表現について紹介します。

「鳥曇り」

「鳥曇り(とりぐもり)」とは、渡り鳥が北方へ帰っていく春の曇り空のこと。雁や鴨など秋に日本に渡って来た鳥は、春先に北の繁殖地へと飛んでいきます。そして鳥の群れがあっという間に消え去ったあと、曇り空だけがそこに残っている様子から、この頃の曇り空を「鳥曇り」と呼ぶようになりました。

「養花天」と同じく、晩春を意味する季語としても用いられており、ほぼ類語表現と言えます。表現したいものに合わせて、それぞれ使い分けや解釈できるようにしておくといいでしょう。

\次のページで「「春陰」」を解説!/

「春陰」

「春陰(しゅんいん)」とは、“春の曇り空”のこと。春の空模様がくもりがちで、曇天が多いということを意味する季語のひとつです。これも春先の曇り空という点で「養花天」と似た意味の言葉と言えるでしょう。

「春霞」

「春霞(はるがすみ)」とは、“春の季節に立つ霞”のこと。春には、遠くの景色が見えにくく、まるで薄雲がかかったように見えることがあります。春の山野に水蒸気が立ち込めることで、あらゆるものがほのぼのと薄れて見える状況を、「春霞」と言うのです。

「養花天」とは、春の薄雲りで空全体に雲が広がっている様子。対して「春霞」は、霞がかっている様子として、実際には現象としても言葉としても異なる言葉です。ただし、どちらも春先の視界がぼんやりと薄暗い状況を指している点では類義語表現と言えます。

どちらも季語として使われる言葉であり、見える景色は似ているため、違いも合わせて覚えてしまうのがおすすめです。

「養花天」の英訳は?

image by PIXTA / 35746892

最後に「養花天」の英語訳についても確認していきましょう。

「hazy weather in spring」

「hazy weather in spring」とは、“春先のぼんやりとした天気”という表現。「hazy」とは“かすみがかった”という意味の単語です。

春先の天気そのものを伝えたいのであればこの英語表現でしょう。ただし景色を伝える言葉でしないため、「養花天」そのものの詩的なニュアンスは含んでいません。

「a cloudy day during the cherry blossom season」

「a cloudy day during the cherry blossom season」は、“桜の咲くころの曇り空の日”を意味する英語。「cherry blossom」“桜”のこと、「a cloudy day」“曇天の日”を指します。

かなり直訳に近いものの、「養花天」が持つ景色や情景を説明したいときには、このような表現で説明するといいでしょう。

\次のページで「「養花天」を使いこなそう」を解説!/

「養花天」を使いこなそう

この記事では「養花天」の意味・使い方・類語などを説明しました。

日常ではあまり耳なじみのない言葉かもしれませんが、雲が花を養うという意味の、とてもきれいで詩的な表現です。今後は春先の曇り空を見ても、「養花天」だと考えることで、曇り空もきれいな景色に見えるかもしれませんよ。

" /> 「養花天」の意味や使い方は?例文や類語を元広告会社勤務ライターがわかりやすく解説! – ページ 2 – Study-Z
国語言葉の意味

「養花天」の意味や使い方は?例文や類語を元広告会社勤務ライターがわかりやすく解説!

「養花天」の使い方・例文

「養花天」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.周辺の紅葉スポットが観光客に人気の旅館だが、オーナーや関係者が言うには養花天の頃もオススメとのことだった。
2.暖かった昨日に比べて今朝はかなり寒く、今日も一日曇り空が広がっている。まさに養花天と言えるだろう。
3.雪解水や陽だまりの様子を見てもう養花天の頃かと思った。予想より早く春を楽しめそうだ。
4.関西では桜が開花したそうだが、まだこちらは養花天といったところだ。週末には花見を楽しみたいものだがどうだろう。
5.自然の食材を使った料理が有名な洋食レストランの予約が取れたんだ。桜を楽しむには天気が不安だけれど、養花天を満喫できる機会だと考え直すことにしたよ。
6.日本語には春霞や養花天など、さまざまな美しい言葉がある。季語を覚えれば詩や俳句の世界ももっと楽しめると祖母が教えてくれたんだ。
7.春先の曇り空も、寒くていやだと考えるか、養花天だと考えるか、どっちで捉えるかで随分印象が変わるものだ。
8.富士山近くのエリアにあるお店やカフェに聞くと、養花天の頃から訪問客の人出が増え始めるらしいよ。
9.春になっても曇り空が多く、養花天の日々が続いている。

「養花天」とは、春の花がさくころの薄く曇った空模様のこと。季節を表す季語としても用いられます。そのため例文のように、季節や情景を指して使うのが一般的。詩的で美しい表現としても使われ、今も俳句や詩で見られる言葉です。

「養花天」の類義語は?違いは?

image by PIXTA / 37821090

次に、「養花天」の類義語表現について紹介します。

「鳥曇り」

「鳥曇り(とりぐもり)」とは、渡り鳥が北方へ帰っていく春の曇り空のこと。雁や鴨など秋に日本に渡って来た鳥は、春先に北の繁殖地へと飛んでいきます。そして鳥の群れがあっという間に消え去ったあと、曇り空だけがそこに残っている様子から、この頃の曇り空を「鳥曇り」と呼ぶようになりました。

「養花天」と同じく、晩春を意味する季語としても用いられており、ほぼ類語表現と言えます。表現したいものに合わせて、それぞれ使い分けや解釈できるようにしておくといいでしょう。

\次のページで「「春陰」」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: