君は日食を見たことがあるか?
日食と似た現象で月食というものもあるから、この2つを混同する人も多いと思う。日食とは太陽の前を月が横切るために太陽が欠けて見える現象のことなんです。だから観察するとすれば日中になるはずです。日食の中には月が完全に太陽を隠してしまう皆既日食という現象もあるんです。
今回は皆既日食のメカニズムと観察の仕方について、地学に詳しいライターオリビンと一緒に解説していきます。

ライター/オリビン

大学院では地球科学を専攻していた。同時に天文サークルにも所属し、日々望遠鏡を持って仲間と星の観察に勤しんでいた。

日食のメカニズム

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皆既日食の解説の前に、まずは日食がどのようにして起こるのかメカニズムを解説します。

地球は太陽の周りを回っています(公転)が、月は地球の周りを公転しているんですよ。月が地球と太陽の間を通るときに、太陽の光による月の影が地球に落ちるとき、月の影に入った地域では太陽が欠けていたり全く見えなくなったりします。この現象が日食です。日食はどこの地域で見るかによって欠け方や日食開始時刻が異なります。

皆既日食とは

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実は太陽と地球との距離は毎日全く同じ距離ではありません。年間で約3.5パーセントくらい差があるのです。月と地球の距離も同様に、年間1.2パーセント変化します。実は月や地球の公転軌道は真円ではなく楕円形をしているのです。太陽の距離が普段より遠く月の距離が近かった場合、月が完全に太陽を隠して見えなくしてしまうため皆既日食と呼ぶのですよ。皆既日食では太陽のまわりにあるガスのコロナや、運がいいとプロミネンスも見えます。皆既日食中は空全体が夕焼けのようになるため不思議な気分になるんですよ。

太陽が月にぴったりと隠れてしまう理由

太陽が月にぴったりと隠れてしまう理由

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太陽は地球や月よりもはるかに大きな天体ですが、なぜ月は太陽を隠すことができるのでしょうか?太陽の大きさはおよそ月の400倍あります。そして、地球から太陽までの距離は地球から月までの距離の400倍です。この400という数字の一致により見かけ上、月は太陽を隠すことができ、皆既日食や金環日食という天体ショーを引き起こすことができます。

皆既日食の周期

日食は部分日食も含めると平均4~5年に1度くらいの頻度で起こっています。しかし、実際は1年に1回起こる年もあれば1年に2回起こることもあり、その時々でいつ見えるかはかなりばらつきがあるのです。皆既日食だと約480年に1回、金環日食では約324年に1回の頻度となります。このようにいうと金環日食のほうが皆既日食より起こりやすそうな印象に思いますが、NASAが提供している5000年間に起こる日食一覧では部分日食は4200回、金環日食は3956回、皆既日食は3173回と金環日食のほうが皆既日食より頻度が多いのです。実際は月の平均距離だと月の影は地球まで届かないため皆既日食が起きても気づかないこともあるのでしょう。

皆既日食を観察できる地域

1回の皆既日食では地球全体の200分の1しか皆既の状態を観察することができません。つまり、その他の200分の199の地域では部分日食しか観察できないのです。自分が住んでいる地域で皆既日食を観察できるチャンスが訪れるのは350年に1度とも言われています。皆既日食を観察できる地域に行けば一生のうち何回か観察することができるので、旅行もかねて皆既日食を見に行ってみるのも楽しいでしょう。

日本での皆既日食

2050年までに日本で見られる皆既日食は2020年から換算して全部で2回です。1回目は2035年に茨城から富山を結ぶ線上で観察できます。2回目は2042年に種子島から南で観察できるそうです。金環日食も2050年までに2回見ることができます。1回目は2030年に北海道で、2回目は2041年に京都で観察できるそうですよ。

\次のページで「金環日食とは」を解説!/

金環日食とは

金環日食は月が地球からやや離れたところにあるせいで太陽を完全に隠すことができず、月の影の周りから太陽がはみ出してリングのように見える日食のことです。

日食の観察の仕方

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太陽は非常に強い光を放っているため、太陽を直視することは絶対にしてはいけません。また、望遠鏡などのレンズで太陽を見てしまうと失明してしまうおそれがあるため絶対にやめましょう。では日中の太陽を観察するにはどうしたらいいでしょうか?

ピンホールを利用して観察する

ピンホールとは小さな穴のことです。厚紙などの光を通さない紙やシートに小さな穴をあけて太陽の光を通します。すると、穴を通って影の中に移った太陽の光が欠けた形になっているのです。麦わら帽子などの隙間も同じように太陽を観察できるのでやってみましょう。

木漏れ日の形の変化から観察する

木漏れ日もピンホール法と同じ原理で太陽が欠けていく様子を観察することができます。日食中に木漏れ日を見てみましょう。

手鏡で壁に日光を反射させる

10センチくらいの手鏡で太陽の光を適当な壁などに反射させると、移った太陽の光が欠けている様子を観察できます。手鏡から壁までの距離は手鏡の直径の200倍離れる必要があるので計算しましょう。たとえば直径10センチの手鏡であれば手鏡から壁までは20メートル距離が必要になります。10センチ以上の大きな鏡しか持っていない場合は、光を通さない厚紙などで鏡を覆って反射できる面積を減らせば同じように観察することができますよ。

専用の日食グラスで観察する

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日食を観察するためのアイテムとして日食グラスや遮光板というものが販売されています。日食グラス越しであれば太陽を見ても大丈夫なので、日食グラスをかけて太陽を観察してみましょう。

\次のページで「望遠鏡の太陽投影版を使って観察する」を解説!/

望遠鏡の太陽投影版を使って観察する

望遠鏡に太陽投影版という板を付けて、望遠鏡を通った太陽の光を投影版に写します。すると、望遠鏡をのぞかなくても太陽が欠けていく様子を観察することができるのです。望遠鏡には屈折型と反射型の2通りがありますが、屈折型の望遠鏡でないとこの方法が行えないので使用する望遠鏡がどちらのタイプなのか確認しましょう。

その他の天文現象

皆既日食や皆既月食以外にも天文観察に適したものがあります。例えばほぼ年中見ることができるオリオン座。オリオン座にはオリオン大星雲と呼ばれる星雲があるのです。オリオン座をよく見ると白くぼうっとした部分があります。その部分がオリオン大星雲です。他には天の川や彗星、流星も1年を通して観察できる天体ショーですね。プレアデス星団や火星・土星などの倍率の低い望遠鏡でも観測できる惑星を撮影するのも非常に面白いです。大学や科学館ではこのような天文現象について講習会を開いている場合もあるので一度参加してみるのもいいですね。

 

イラスト使用元:いらすとや

皆既日食と皆既月食を混同しないように注意

皆既日食とは太陽が月の影に隠れて完全に見えなくなる天体現象のことです。天文学分野で最もメジャーな天体ショーとも言えるでしょう。月食は基本的に夕方以降から深夜にしか観察できませんが、皆既日食は日中に観察できるため注目が集まっています。また夜の天体観察は、わざわざ街灯のない暗い場所を探さないといけないので大変です。皆既日食を観察するには特殊なカメラのレンズや専用の機材を揃える必要がありますよね。しかし、各地方自治体には天文台付きの科学館が必ずあるため、その科学館で観察することも一つの方法です。

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地学地球宇宙理科

皆既日食はなぜ起こる?金環日食って何?日食のメカニズムと周期について地球科学専攻卒が5分でわかりやすく解説

金環日食とは

金環日食は月が地球からやや離れたところにあるせいで太陽を完全に隠すことができず、月の影の周りから太陽がはみ出してリングのように見える日食のことです。

日食の観察の仕方

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太陽は非常に強い光を放っているため、太陽を直視することは絶対にしてはいけません。また、望遠鏡などのレンズで太陽を見てしまうと失明してしまうおそれがあるため絶対にやめましょう。では日中の太陽を観察するにはどうしたらいいでしょうか?

ピンホールを利用して観察する

ピンホールとは小さな穴のことです。厚紙などの光を通さない紙やシートに小さな穴をあけて太陽の光を通します。すると、穴を通って影の中に移った太陽の光が欠けた形になっているのです。麦わら帽子などの隙間も同じように太陽を観察できるのでやってみましょう。

木漏れ日の形の変化から観察する

木漏れ日もピンホール法と同じ原理で太陽が欠けていく様子を観察することができます。日食中に木漏れ日を見てみましょう。

手鏡で壁に日光を反射させる

10センチくらいの手鏡で太陽の光を適当な壁などに反射させると、移った太陽の光が欠けている様子を観察できます。手鏡から壁までの距離は手鏡の直径の200倍離れる必要があるので計算しましょう。たとえば直径10センチの手鏡であれば手鏡から壁までは20メートル距離が必要になります。10センチ以上の大きな鏡しか持っていない場合は、光を通さない厚紙などで鏡を覆って反射できる面積を減らせば同じように観察することができますよ。

専用の日食グラスで観察する

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日食を観察するためのアイテムとして日食グラスや遮光板というものが販売されています。日食グラス越しであれば太陽を見ても大丈夫なので、日食グラスをかけて太陽を観察してみましょう。

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