端的に言えば「恐れをなす」の意味は「恐れをなす」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
学習塾で国語講師を4年間担当し、契約書校正業務を3年以上経験している、ミリーを呼んです。一緒に「恐れをなす」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/持木ミリー
今回の記事を担当するのは、塾講師として国語などを4年間担当し、その後契約書作成や校正に3年以上携わっている、Webライターのミリー。間違った日本語に目ざといミリーが、慣用句の意味について、分かりやすく解説していく。
「恐れをなす」の意味は?
「恐れをなす」には、次のような意味があります。
1. ひどい目にあうのではないかとこわがる。「仕返しされるのではないかと―・す」
2. あまりのすごさに、遠慮したい気持ちになる。「受験者の多さに―・して引き下がる」
出典:デジタル大辞泉(小学館)「恐れをなす」
「恐れをなす」ということわざの意味は、「ひどい目にあうのではないかとこわがる。」、「あまりのすごさに、遠慮したい気持ちになる。」です。「恐れ」という言葉から、前者の「こわがる」という意味の印象が強い人もいるのではないでしょうか。ですが、後者の「遠慮したい気持ちになる」という、必ずしも怖がっているわけではない意味合いもありますので、知らなかった人はこの機会に覚えておきましょう。
「恐れをなす」の使い方・例文
「恐れをなす」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。
1.新事業を起こしてから1年になるが、その業績の悪さにより、会社のトップからどんな処分が下りるのか、恐れをなしている。
2.不景気により株価も下がっているが、これまでの投資で育ててきた資産も減少し続けることが予測され、恐れをなしている。
3.ファンクラブのプレミアム会員に入っているとはいえ、そのライブ抽選の倍率の低さに恐れをなして、スマホの応募画面をそっと閉じた。
4. これから挑戦しようとしているトランポリンで、予想以上に高くジャンプできることが分かってしまい、そのあまりの高さに恐れをなしている。
「恐れをなす」というのは、大きく2つの意味があるとお話しました。そのため、例文1、2は、「こわがる」という意味で使う例文、3、4は「遠慮する」という意味で使う例文ということで紹介しています。とはいえ、「遠慮する」というのは、その程度に圧倒されて、マイナス感情を持って、「遠慮する」わけですから、「こわがる」という意味が派生したとも言えるでしょう。そうなると、「こわがる」という意味で使う場合と、「遠慮する」という意味で使う場合を、明確に分けられるわけではないことが分かります。
「縮み上がる」
「恐れをなす」の類義語として、「縮み上がる」という言葉が挙げられます。意味は、以下の通りです。
1. すっかりちぢんで小さくなる。
「あの霜が来てみたまえ、桑の葉はたちまち―・って」〈藤村・千曲川のスケッチ〉
2. 驚きや寒さ・恐怖などのため、からだがすくんで身動きできなくなる。「一喝されて―・る」
出典:デジタル大辞泉(小学館)「縮み上がる」
「縮み上がる」の意味は、「すっかりちぢんで小さくなる。」、「驚きや寒さ・恐怖などのため、からだがすくんで身動きできなくなる。」です。前者は、物理的にものが縮むという意味で使われ、後者が「恐れをなす」の類義語としての意味に該当します。特に、「こわがる」という意味の類義語と言えるでしょう。
ですが、「恐れをなす」が「こわがる」という心情面の描写にとどまっているのに対し、「縮み上がる」は、「怖くなって、【からだがすくんで身動きできなくなる。】」という、具体的な体の動きまで描写しているという点が、異なります。
「及び腰」
「恐れをなす」の類義語としてもう1つ、「及び腰」が挙げられます。意味は、以下の通りです。
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