
動物の体液循環に重要な開放血管系を知るためには、対照的な用語である「閉鎖血管系」についても知らなくてはいけない。せっかくなので、「血管系」全体を大まかに学んでいこうじゃないか。
大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ
生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。
血管系とは
まず、血管系とは血液の通過する器官である「心臓と血管」をまとめた呼び名です。からだの隅々まで体液を循環させる仕組みの一つですね。
脊椎動物の場合はリンパ液のながれるリンパ系と合わせて循環系とよばれたりもします。無脊椎動物は血液とリンパ液の区別がないので、血管系は循環系とほぼ同じ意味です。
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血管系は生物によって大きく2種類に分けることができます。それが、閉鎖血管系と開放血管系です。今回のテーマである開放血管系を理解するには、閉鎖血管系との違いをおさえることが重要なので、閉鎖血管系についても先に少しご紹介しましょう。
閉鎖血管系
閉鎖血管系(へいさけっかんけい)は、脊椎動物や無脊椎動物の一部にみられるタイプの血管系です。心臓とそれにつながる血管には切れ目がなく、血液は完全に閉じた回路の中を流れます。
私たち人間の血管系も、もちろんこの閉鎖血管系です。心臓というポンプの力で押し出された血液は動脈を流れ、からだの末端で毛細血管の中を通過し、静脈に回収されてまた心臓に戻ります。

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この血管系では、血しょうの一部が血管から染み出て、からだの一つ一つの細胞に栄養や酸素を運搬します。血管から組織中へ移動した血しょうの呼び名が組織液です。
組織液は老廃物などを回収し、毛細血管へ、そして静脈へ回収されていきますが、一部はリンパ管を流れる体液、リンパ液になります。リンパ液には生体防御(免疫)で重要な役割を果たす白血球のなかま、リンパ球が多く存在しているのです。リンパ管はヒトの場合、鎖骨のあたりで静脈に合流し、血液に戻ります。
無脊椎動物で閉鎖血管系をもっているのは、環形動物や紐型動物、軟体動物の頭足類などです。
環形動物にはミミズやヒル、ゴカイなどがふくまれます。頭足類で代表的なのはタコやイカですね。紐型動物というのは少し聞きなれない名前かと思いますが、ヒモムシとよばれる平べったいミミズのような動物を含むグループです。
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