
3分で簡単「毛細血管の仕組みとはたらき」を現役理系大学院生がわかりやすく解説!
毛細血管の構造
OpenStax College – Anatomy & Physiology, Connexions Web site. http://cnx.org/content/col11496/1.6/, Jun 19, 2013., パブリック・ドメイン, リンクによる
まずは毛細血管の構造から解説します。毛細血管はその働きから動脈や静脈とは異なる構造をしてるのが特徴です。
動脈、静脈の血管は内皮細胞と結合組織からなる内膜、平滑筋と弾性線維からなる中膜、疎性結合組織からなる外膜の3層の厚い壁から構成されているのに対し、毛細血管の壁は単層の内皮細胞(扁平上皮細胞)と基底膜の薄い2層から構成されます。内皮細胞と基底膜の構造は組織の種類によって違いがあり、連続型、有窓型、不連続型の3つです。それぞれの構造をまとめます。
・連続性毛細血管…内皮細胞が1層の連続したシートを作り、内皮細胞の外側を基底膜が覆っています。毛細血管でもっとも一般的なタイプです。ガス交換や小さな物質の出入りは容易にできますが、分子量が1kDを超える水溶性の物質はほとんど血管外に移行できません。
・有窓性毛細血管…内皮細胞に直径50〜80nmの窓が沢山開いた穴あきの構造をしています。腸や腎臓などの血管の内外の物質の透過の盛んな部位にみられる血管です。
・非連続性毛細血管…内皮細胞に大小の穴や細胞同士の接着にも隙間がある構造をしており、基底膜も連続していません(非連続)。このため100kDa程度の大きな分子でもに血管外に移行できます。肝臓や脾臓の一部の毛細血管に存在します。
毛細血管は場所によって構造が異なり、それぞれに臓器に適した物質交換が出来る仕組みになっています。共通するのは、毛細血管の壁は選択的透過性を持っている、つまり物質によって、毛細血管の壁を通れるものと通れないものがある、ということです。一般的に、毛細血管の壁を通り抜けることができるのは、水、酸素や二酸化炭素などのガス、糖や、脂肪、電解質など小さな分子。分子の大きなタンパク質は通ることができません。これが次に説明する毛細血管の物質交換の仕組みの多きなポイントです。
毛細血管の仕組み

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毛細血管が物質をやり取りしている仕組みを説明します。毛細血管での物質の移動を制御しているのは血圧と浸透圧です。まず、毛細血管から酸素と栄養素、小さな分子が溶け込んだ血漿(血液から血球成分を除いたもの)が毛細血管の外へと滲み出ていきます。毛細血管には小さな穴があるため、そこに血圧がかかると自然と血管の外に押し出される仕組みです。血圧は通常、動脈側では高く、静脈側では低くなっているため、動脈側の毛細血管で押し出されていきます。
次は浸透圧を介した物質交換の説明です。血液中にはアルブミンと呼ばれるタンパク質が多く存在していますが、前述したように、毛細血管はタンパク質は透過することができないため、他の小さな分子が血圧で毛細血管から押し出されてもアルブミンは血管内に残ります。これにより血管内外にアルブミンの濃度の差が生じ、これを均一にするために水分子(間質液)が血管の外から中へと移動するのです。この場合の浸透圧を膠質浸透圧と呼びます。この間質液には細胞排出した老廃物なども含まれており、一緒に血液中に取り込まれる仕組みです。
毛細血管の働き

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血液の量は全体重の7%~8%を占めており、体重が60キロの成人ならば、血液の量は約4.8キロになるのです。毛細血管は全身にくまなく網状に張り巡らされおり、組織や細胞へ血液中の栄養素や酸素を毛細管壁を通じて供給し、組織中の二酸化炭素や老廃物を受取るという血管系の最も基本的な役割を果たしています。
他にも血管が損傷した際には血小板を集め血液を凝固させ止血したり、ウイルスや細菌が感染した部位へ、免疫細胞を運ぶ生体防御機能、ホルモンや代謝産物を運び情報を伝達する情報伝達機能。さらには、体温を調節したり、体内の酸と塩基の平衡を維持してpHを調節、水分代謝を調整し、血圧や組織液の浸透圧などをコントロールする働きもしています。
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