今回のテーマは「毛細血管の仕組みと働き」に勉強していこう。毛細血管というと地味な組織な印象ですが実際には血液循環や新陳代謝の主役となる重要な働きをする血管なんです。
脊椎動物の血管は3種類で、心臓から出る血液を送る血管を「動脈」、心臓へ戻る血液を送る血管を「静脈」という。そして、それぞれの血管をつないで組織と物質のやり取りをしてるのが「毛細血管」です。生物に詳しいライターCaoriと一緒に解説していきます。

ライター/Caori

国立大学院の博士課程に在籍している現役の理系大学院生。とっても身近な現象である生命現象をわかりやすく解説する「楽しくわかりやすい生物の授業」が目標。

毛細血管とは

image by iStockphoto

ヒトのような多くの細胞からできた多細胞生物は、全ての細胞が生きて機能するために必要な栄養素や酸素を隅々まで行き渡らせ、そして細胞が作りだした不要な物質を除去しなければなりません。この働きをしているのが「心臓」と「血管」「リンパ管」からなる「循環器系」です。心臓は血液を循環させるためのポンプの役割をする器官。そして血管とは、血液を身体の各所に送るための通路となる管で、「動脈」「静脈」「毛細血管」この3つを総称して血管と呼びます。

毛細血管とは動脈と静脈をつなぐ場所で、組織と血液の物質交換をする場です。心臓から送り出された血液は動脈を通り、だんだんと細く分枝しながら全身にくまなく張り巡らされた細い毛細血管になり、組織との物質の交換をした後、だんだんと静脈と合流しながら再び心臓へと戻ります。毛細血管は全身の血管の9割以上を占め、内径は非常に細く5〜20µm、多くは7µm前後で赤血球が1列に並んでようやくすり抜けられるサイズです。

毛細血管の役割は、組織の細胞に酸素や栄養素を運び届け、二酸化炭素や老廃物の回収などを行うこと。 細胞と物質のやり取りをするために物質の透過性に優れた構造と特徴を持ちます。詳しく見ていきましょう。

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毛細血管の構造

2104 Three Major Capillary Types.jpg
OpenStax College - Anatomy & Physiology, Connexions Web site. http://cnx.org/content/col11496/1.6/, Jun 19, 2013., パブリック・ドメイン, リンクによる

まずは毛細血管の構造から解説します。毛細血管はその働きから動脈や静脈とは異なる構造をしてるのが特徴です。

動脈、静脈の血管は内皮細胞と結合組織からなる内膜、平滑筋と弾性線維からなる中膜、疎性結合組織からなる外膜の3層の厚い壁から構成されているのに対し、毛細血管の壁は単層の内皮細胞(扁平上皮細胞)と基底膜の薄い2層から構成されます。内皮細胞と基底膜の構造は組織の種類によって違いがあり、連続型、有窓型、不連続型の3つです。それぞれの構造をまとめます。

・連続性毛細血管…内皮細胞が1層の連続したシートを作り、内皮細胞の外側を基底膜が覆っています。毛細血管でもっとも一般的なタイプです。ガス交換や小さな物質の出入りは容易にできますが、分子量が1kDを超える水溶性の物質はほとんど血管外に移行できません。

・有窓性毛細血管…内皮細胞に直径50〜80nmの窓が沢山開いた穴あきの構造をしています。腸や腎臓などの血管の内外の物質の透過の盛んな部位にみられる血管です。

・非連続性毛細血管…内皮細胞に大小の穴や細胞同士の接着にも隙間がある構造をしており、基底膜も連続していません(非連続)。このため100kDa程度の大きな分子でもに血管外に移行できます。肝臓や脾臓の一部の毛細血管に存在します。

毛細血管は場所によって構造が異なり、それぞれに臓器に適した物質交換が出来る仕組みになっています。共通するのは、毛細血管の壁は選択的透過性を持っている、つまり物質によって、毛細血管の壁を通れるものと通れないものがある、ということです。一般的に、毛細血管の壁を通り抜けることができるのは、水、酸素や二酸化炭素などのガス、糖や、脂肪、電解質など小さな分子。分子の大きなタンパク質は通ることができません。これが次に説明する毛細血管の物質交換の仕組みの多きなポイントです。

毛細血管の仕組み

毛細血管の仕組み

image by Study-Z編集部

毛細血管が物質をやり取りしている仕組みを説明します。毛細血管での物質の移動を制御しているのは血圧と浸透圧です。まず、毛細血管から酸素と栄養素、小さな分子が溶け込んだ血漿(血液から血球成分を除いたもの)が毛細血管の外へと滲み出ていきます。毛細血管には小さな穴があるため、そこに血圧がかかると自然と血管の外に押し出される仕組みです。血圧は通常、動脈側では高く、静脈側では低くなっているため、動脈側の毛細血管で押し出されていきます。

次は浸透圧を介した物質交換の説明です。血液中にはアルブミンと呼ばれるタンパク質が多く存在していますが、前述したように、毛細血管はタンパク質は透過することができないため、他の小さな分子が血圧で毛細血管から押し出されてもアルブミンは血管内に残ります。これにより血管内外にアルブミンの濃度の差が生じ、これを均一にするために水分子(間質液)が血管の外から中へと移動するのです。この場合の浸透圧を膠質浸透圧と呼びます。この間質液には細胞排出した老廃物なども含まれており、一緒に血液中に取り込まれる仕組みです。

毛細血管の働き

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血液の量は全体重の7%~8%を占めており、体重が60キロの成人ならば、血液の量は約4.8キロになるのです。毛細血管は全身にくまなく網状に張り巡らされおり、組織や細胞へ血液中の栄養素や酸素を毛細管壁を通じて供給し、組織中の二酸化炭素や老廃物を受取るという血管系の最も基本的な役割を果たしています

他にも血管が損傷した際には血小板を集め血液を凝固させ止血したり、ウイルスや細菌が感染した部位へ、免疫細胞を運ぶ生体防御機能、ホルモンや代謝産物を運び情報を伝達する情報伝達機能。さらには、体温を調節したり、体内の酸と塩基の平衡を維持してpHを調節水分代謝を調整し、血圧や組織液の浸透圧などをコントロールする働きもしています。

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血管の基本「毛細血管」

成人の毛細血管をすべてつなげると総延長は10万kmを超えると言われ、これは地球2周半分の長さに相当します。こんなに大きなものが自分の身体の中に納まっているなんて、なんだか不思議な気持ちになりますね。

毛細血管は加齢に伴い減少し、運動不足や過度な飲酒、肥満、高血圧や高血糖、脂質異常などが重なるとより毛細血管の減少がより激しくなります。毛細血管が減ってしまうと、血流が断たれ、その先にある細胞に酸素や栄養が十分かず、これが原因でさまざまな病気の原因となるのです。

普段意識することのない血管ですが、どのような働きをしているのか、どのような仕組み血液が体内を流れているのかを知ることで血管の健康へ意識を向けてみてくださいね。

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タンパク質と生物体の機能理科生物細胞・生殖・遺伝

3分で簡単「毛細血管の仕組みとはたらき」を現役理系大学院生がわかりやすく解説!

今回のテーマは「毛細血管の仕組みと働き」に勉強していこう。毛細血管というと地味な組織な印象ですが実際には血液循環や新陳代謝の主役となる重要な働きをする血管なんです。
脊椎動物の血管は3種類で、心臓から出る血液を送る血管を「動脈」、心臓へ戻る血液を送る血管を「静脈」という。そして、それぞれの血管をつないで組織と物質のやり取りをしてるのが「毛細血管」です。生物に詳しいライターCaoriと一緒に解説していきます。

ライター/Caori

国立大学院の博士課程に在籍している現役の理系大学院生。とっても身近な現象である生命現象をわかりやすく解説する「楽しくわかりやすい生物の授業」が目標。

毛細血管とは

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ヒトのような多くの細胞からできた多細胞生物は、全ての細胞が生きて機能するために必要な栄養素や酸素を隅々まで行き渡らせ、そして細胞が作りだした不要な物質を除去しなければなりません。この働きをしているのが「心臓」と「血管」「リンパ管」からなる「循環器系」です。心臓は血液を循環させるためのポンプの役割をする器官。そして血管とは、血液を身体の各所に送るための通路となる管で、「動脈」「静脈」「毛細血管」この3つを総称して血管と呼びます。

毛細血管とは動脈と静脈をつなぐ場所で、組織と血液の物質交換をする場です。心臓から送り出された血液は動脈を通り、だんだんと細く分枝しながら全身にくまなく張り巡らされた細い毛細血管になり、組織との物質の交換をした後、だんだんと静脈と合流しながら再び心臓へと戻ります。毛細血管は全身の血管の9割以上を占め、内径は非常に細く5〜20µm、多くは7µm前後で赤血球が1列に並んでようやくすり抜けられるサイズです。

毛細血管の役割は、組織の細胞に酸素や栄養素を運び届け、二酸化炭素や老廃物の回収などを行うこと。 細胞と物質のやり取りをするために物質の透過性に優れた構造と特徴を持ちます。詳しく見ていきましょう。

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