「頭」の入る表現は日常生活でよく使われているな。「頭が切れる」、「頭に血が上る」、「頭を捻る」など、他にもたくさんあると思う。この「頭」は「脳」のことを指す。このように「頭」が入る慣用句が多いことからも、いかに私たちにとって生命維持や人として生きていくために頭、とりわけ脳が必要かわかるでしょう。そこで今回は、脳のはたらきについて生物に詳しいライターmimosa(ミモザ)と一緒に解説していきます。

ライター/mimosa

もともと文系出身で、独学で生物学、生化学を勉強し、現在医学系研究所の研究アシスタントとして理系の世界へ飛び込んだ。理科が苦手な方へも興味を持ってもらうべくわかりやすい説明を心掛けている。

脳の構造とはたらき

脳は生命活動や精神活動をするうえでなくてはならないものです。呼吸や心臓を動かして血管を通して体中に血液を巡らせる、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚という感覚を受け取り、情報を処理し、指令を出し手足の筋肉を動かしたり、快不快や喜怒哀楽の感情の処理も担っています。ここには挙げきれないくらいたくさんの機能が脳にはありますよ。そのことについて少し詳しく見ていきましょうね。

中枢神経系

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脊椎動物の中枢神経系は、脳と脊髄から成り立っています。今回は、その中で脳について説明してきますね。脳は、大脳、間脳、中脳、小脳、延髄の5つの部分に分かれていますよ。その中でも大脳はおよそ1300gあって、脳の大部分の質量や容積を占めますが、それ以外にも人たらしめる重要な働きを大脳は司っていますよ。

脳の全体像

脳の全体像

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まずは、脳の全体像について説明していきますね。上記の図は脳の断面図です。何がどこにあるのか図で確認しながら読んで行ってくださいね。間脳は大脳と中脳の中間部分で、視床と視床下部に分かれます。視床は、第3脳室の両側にあり、嗅覚以外の感覚を中継していて、視床下部は、自律神経系の中枢ですよ。内臓のはたらき、摂食、生殖、睡眠など本能的な活動の調節に直接関係していますよ。ちなみに、血糖濃度や体温調節も視床下部に関係していますが、こちらは内分泌系ですね。

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大脳

人間の脳でもっとも発達した部分で、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉に区別されます。前頭葉のブローカ野は発語に関係し、長期記憶の保持を行いますよ。側頭葉のウェルニッケ野は言語解を担っていて、頭頂葉は身体の様々な部位からの感覚情報の統合や、数字とそれらの関係に関する知識、対象の操作などに関する機能に重要な役割を持ちます。後頭葉は、視覚や色彩の認識を司る機能を持っていますよ。 

大脳を縦に切ったっ断面を見てみると、脳の表面近くに灰白色の層(灰白質)が見られ、それより内側の白色の層(白質)と明らかに区別されます。この大脳半球の灰白質は大脳皮質、白質は大脳髄質と呼ばれていますよ。大脳半球の表面には多くのしわがありますが、これは、大脳皮質の表面積を大きくするためなのですよ。

大脳は、情報を識別してそれに応じた運動を命じたり、記憶や情動という高度の精神作業を担っています。

小脳、脳幹

小脳は大脳の尾側、脳幹の背側にあり、ヒトでは脳全体の15%程度の容積しかないのですが、脳全体の神経細胞の約半分が存在するのですよ。小脳は、筋や腱、関節からの深部感覚や内耳からの平衡感覚、大脳脳皮質からの情報を受けて、運動調節機能を担当しています。

脳幹は、中脳、延髄、橋に間脳を含む部位のことですよ。呼吸、循環など生命活動の基本的な機能を支配していて、知覚情報を大脳に中継したり、末梢に向う運動指令を中継する機能を担っていますよ。

脳のはたらきを調べる

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医療現場において脳の検査で、CTスキャンやMRIは聞いたことがあるかもしれませんね。これらは、X線や電磁波を照射して脳内の画像を映し出すのですが、脳の機能検査もあります。脳の血流や脳波について調べると脳のはたらきについて理解することができますよ。これらについて見ていきましょうね。

脳機能検査

機能検査では、fMRI(機能的磁気共鳴映像法), PET(陽電子断層撮影),SPECT(脳血流レンチ), 光トポグラフィーがありますよ。fMRIは、MRI装置を使って、神経細胞の活動亢進にともなう血流量の局所的な増加を測定することによって、神経細胞の活動分布を把握します。他の検査では、放射性同位元素で標識化された薬剤を使用して、脳の局所的な活動を把握したり、神経伝達機能を把握しますよ。

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脳波と睡眠

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大脳には、微細な動作電流が流れています。その動作電流を脳波計により増幅記録したものを脳波と言いますよ。脳波の記録によって脳の活動自体の測定が可能となり、てんかんや脳器質疾患などの診断や認知機能の研究に役立てられますよ。正常なヒトの脳波は周波数0.5-35Hzの範囲内にあります。また、精神活動の状態によってδ(デルタ)波、θ(シータ)波、α波、β波の4つの周波数帯域があり、α波より周波数の小さいものを徐波、大きいものを速波と言いますよ。速波は、精神活動するときに見られます。

次に睡眠についてですが、レム睡眠ノンレム睡眠という性質の異なる睡眠が一晩のうちに90分の周期で3~5回程度繰り返されていることは知っていましたか。「レム」とは、「急速眼球運動」(Rapid Eye Movement)のことですよ。レム睡眠時には、この眼球運動が見られ、夢見の報告がたくさんなされています。レム睡眠は、身体は休んでいますが、脳波活動している状態なのですね。夢を見ない比較的深く眠っているノンレム睡眠は4段階に分けられ、一番深い眠りの時は、δ波が脳波の中で50%を占めるのですよ。

 

脳が損傷するとどうなるか

事故などにより脳に傷や病気を抱えてダメージを負わせると、記憶に障害をもたらしたり、ある対象について注意が持続しない障害などが起こることがあります。それを高次脳機能障害と言いますよ。脳の損傷部位によってどのような障害をかかえるかは変わってきます。それらについて詳しく見ていきましょう。

記憶障害と注意障害

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記憶障害において、健忘症候群があります。健忘症候群は、他の認知機能は正常なのに、記憶に関する機能が著しく障害されている状態ですよ。新しいことが覚えられない(前向性健忘)前のことが思い出せない(逆向性健忘)があります。また、ここはどこか、自分が誰なのかわからない(失見当識)、病識欠如、性格が変わってしまったり、話をでっちあげること(作話)も見られることがありますよ。

 

社会的行動障害

社会的行動障害は、意欲、発動性の低下、情動抑制の障害、対人関係の障害、退行、依存、反社会的行動などが見られますよ。記憶障害と注意障害と社会的行動障害以外にも、失行、失認、失語がありますが、これは別の機会に詳しく説明しますね。

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中枢神経系の中で脳は司令塔

中枢神経系の中で(体中でも)脳は一番多忙な部位ですね。脳は、大脳、間脳、中脳、小脳、延髄の5つの部分に分かれています。それぞれ高次のものから低次のものまで様々な情報処理を行っていますよ。脳の機能は活動ごとの脳の部位の血流量、脳波を調べれば良いですね。これらを調べるために、画像検査やfMRIなどを用いて機能を調べることがせきますね。ちなみに、大脳の中でも頭頂葉は、大脳葉の中で一番よくわかっていない部位です。今後科学が進歩して脳についてわかっていないことがわかるようになると、脳を損傷した場合の治療回復はもちろん、人類の発展に貢献していくでしょう。

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体の仕組み・器官理科生物

3分で簡単「脳のはたらき」!中枢神経系とは?医学系研究アシスタントがわかりやすく解説

「頭」の入る表現は日常生活でよく使われているな。「頭が切れる」、「頭に血が上る」、「頭を捻る」など、他にもたくさんあると思う。この「頭」は「脳」のことを指す。このように「頭」が入る慣用句が多いことからも、いかに私たちにとって生命維持や人として生きていくために頭、とりわけ脳が必要かわかるでしょう。そこで今回は、脳のはたらきについて生物に詳しいライターmimosa(ミモザ)と一緒に解説していきます。

ライター/mimosa

もともと文系出身で、独学で生物学、生化学を勉強し、現在医学系研究所の研究アシスタントとして理系の世界へ飛び込んだ。理科が苦手な方へも興味を持ってもらうべくわかりやすい説明を心掛けている。

脳の構造とはたらき

脳は生命活動や精神活動をするうえでなくてはならないものです。呼吸や心臓を動かして血管を通して体中に血液を巡らせる、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚という感覚を受け取り、情報を処理し、指令を出し手足の筋肉を動かしたり、快不快や喜怒哀楽の感情の処理も担っています。ここには挙げきれないくらいたくさんの機能が脳にはありますよ。そのことについて少し詳しく見ていきましょうね。

中枢神経系

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脊椎動物の中枢神経系は、脳と脊髄から成り立っています。今回は、その中で脳について説明してきますね。脳は、大脳、間脳、中脳、小脳、延髄の5つの部分に分かれていますよ。その中でも大脳はおよそ1300gあって、脳の大部分の質量や容積を占めますが、それ以外にも人たらしめる重要な働きを大脳は司っていますよ。

脳の全体像

脳の全体像

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まずは、脳の全体像について説明していきますね。上記の図は脳の断面図です。何がどこにあるのか図で確認しながら読んで行ってくださいね。間脳は大脳と中脳の中間部分で、視床と視床下部に分かれます。視床は、第3脳室の両側にあり、嗅覚以外の感覚を中継していて、視床下部は、自律神経系の中枢ですよ。内臓のはたらき、摂食、生殖、睡眠など本能的な活動の調節に直接関係していますよ。ちなみに、血糖濃度や体温調節も視床下部に関係していますが、こちらは内分泌系ですね。

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