
端的に言えば「女手一つ」の意味は「女の労力」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
学習塾で国語講師を4年間担当し、契約書校正業務を3年以上経験している、ミリーを呼んです。一緒に「女手一つ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/持木ミリー
今回の記事を担当するのは、塾講師として国語などを4年間担当し、その後契約書作成や校正に3年以上携わっている、Webライターのミリー。間違った日本語に目ざといミリーが、慣用句の意味について、分かりやすく解説していく。
「女手一つ」の意味は?
「女手一つ」という言葉以前に、「女手」には、次のような意味があります。
1. 女の労力。また、女の働き手。「女手一つで育てた息子」「女手が足りない」⇔男手。
2. 女の書いた文字。女性の筆跡。女文字。「女手の手紙」⇔男手。
3. 《主として女が用いたところから》平仮名。⇔男手。
「―を心に入れて習ひしさかりに」〈源・梅枝〉
[補説]1は、「女手一人で」とするのは誤り。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「女手」
「女手」の意味は、「女の労力。また、女の働き手。」、「女の書いた文字。女性の筆跡。女文字。」、「平仮名」です。今回は「女手一つ」の意味を確認していきますが、この場合は「女の労力。また、女の働き手。」が適用されます。
体力的な意味で言うと、女性の労力は男性のそれには劣ってしまいますが、総合的な「労力」、「働き手」として考えたら、女性と男性は対等であるはずです。実際の雇用現場では、男女平等も叫ばれていますが、給与の問題、セクハラやパワハラの問題等、未だ「女手」を軽視する現場も少なくありません。
「男手」と「女手」が真の意味で平等に扱われる日が来ることを願ってやみません。
「女手一つ」の使い方・例文
「女手一つ」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。
1. うちの母親は、私が小さなころに父親と離婚したため、それから女手一つで私を育ててくれたので、私が自立した今は自分のために時間を使ってほしい。
2. 私の彼氏は、私が女手一つで物を運んだりしていても、全然手伝ってくれないので、この先結婚して家族として過ごしていく未来が見えなくなった。
3. 当建設現場は、現状人が足りないため、体力勝負の現場とはいえ、女手一つで作業をしてもらっていることも多い。
元々、「女性だけが行う」ことであれば、わざわざ「女手一つ」という言葉を使用することはありません。例えば、「母乳を飲ませる」という行動は、男性にはどうにもできないことですので、「女手一つで母乳を飲ませる」とはなりません。
「女手一つ」は、「本来なら男性も協力して行う・行えるはずなのに、女性だけでやっている。」という状況において、「女性だけで」という意味を殊更強く表す時に使用されます。なるべく、こういった状況にならないように、社会全体で協力できたらいいですよね。
「女手一つ」の類義語・関連語は?違いは?

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ここからは、「女手一つ」の類義語・関連語を確認していきましょう。「女性の力」という意味だけにとらわれず、「自分の力だけで」という意味として、広く見ていきます。
「独立不撓」
「女手一つ」の類義語として、「独立不撓」が挙げられます。意味は、以下の通りです。
他人に頼らず、自力で行動し、困難にあってもくじけないこと。
出典:学研 四字熟語辞典「独立不撓」
「独立不撓」の意味は、「他人に頼らず、自力で行動し、困難にあってもくじけないこと。」です。どういう過程を踏んで「他人に頼らず」という状況になるのかは人それぞれですが、「独力で頑張る」という意味を考えると「女手一つ」の類義語と言えるのではないでしょうか。また、どちらの言葉も「独力で頑張る」ため、周りに頼らない(頼れない)ことによる力強さを表しています。
ただ、「独立不撓」は「女手一つ」よりも広い意味ですので、「女手一つ」が「本来なら男性も協力して行う・行えるはずなのに、女性だけでやっている。」状況なのに対し、「独立不撓」はそのような状況に限らず、「他人に頼らず、自力で行動する。」という状況で使われます。
「女手一つ」の対義語は?
ここからは、「女手一つ」の対義語を見ていきましょう。
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