今回は「上皮組織」という用語について学習していきたいと思う。

上皮組織の定義や分類だけでなく、生物の”組織”や”器官”という考え方や、上皮組織以外の”組織”についても学んでいこう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

そもそも”組織”とは?

今回のテーマは「上皮組織」ですね!上皮組織自体について説明する前に、まずは生物の体における”組織”という考え方を理解しておきましょう。

『細胞→組織→器官→器官系→個体』

あらゆる生物は細胞からなります。何個の細胞によってできているかは種によってさまざま。何億何兆という細胞があつまってできている多細胞生物もいれば、たった一つの細胞のみで生きている単細胞生物も存在します。

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進化の過程で、多細胞生物は細胞を多様に分化させてきました。そのなかで、同じような機能をもち、同じような形態をしている細胞を”組織”というグループに分けて考えます。動物の場合、組織は「上皮組織、結合組織、筋組織、神経組織」の4種類に分けて考えるのが一般的です。

さらに、いくつかの組織は集まり、特定の機能をもった”器官”をつくります。これは、一般的にいう”臓器”と同じようなイメージのものです。例えば、心臓や肺、胃、小腸、大腸、肝臓などがそれぞれ”器官”の一種ととれます。

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これらの器官は、特定の機能を果たすために連携して機能します。たとえば、胃、小腸、大腸、肝臓はまとまって「食べ物の消化・吸収・運搬」などの役割を担うのです。この時、胃、小腸、大腸、肝臓などの「食べ物の消化・吸収・運搬」にかかわる器官をまとめて「消化器系(または消化系)」といいます。

このように、連携してはたらく器官のグループを”器官系”といい、複雑な多細胞生物の”個体”は器官系が集まって構成されていると考えることができるのです。

上皮組織

それでは、今回のテーマである上皮組織についてみていきましょう。

「上」や「皮」という字が入っていることからも想像できますが、上皮組織は基本的に「からだの表面や器官の表面をおおっている細胞」の集まりです。上皮組織をつくっている細胞はまとめて上皮細胞ともよばれます。上皮細胞間は密着、結合しており、すき間なく敷き詰められているのも特徴です。

Illu epithelium.jpg
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上皮組織とそのほかの組織が集まって器官をつくりますが、結合組織とそれ以外の組織の間には膜のような構造が存在し、これを基底膜(きていまく)といいます。基底膜はどこでもすべて同じ、というわけではなく、その成分は場所によってさまざまです。

さて、上皮細胞はその機能、形態、並び方(配列)に基づいて、さらに細かく分類することができます

機能に基づく分類

上皮細胞がどんな機能をもっているかで、以下のように分類されます。

被蓋上皮(ひがいじょうひ)…からだの表面や、中空器官の内側を覆う。体内が傷つかないよう保護している。

腺上皮(せんじょうひ)…外分泌腺や内分泌腺を構成している。粘液やホルモンなどの物質をつくり、分泌する。分泌上皮とも。

吸収上皮…水分や栄養を吸収する機能がある上皮。腸の粘膜上皮など。

感覚上皮…外界の刺激を受け取り、それを神経系に伝える機能をもつ。網膜や、においを感じる鼻粘膜の上皮など。

呼吸上皮…ガス交換をする機能のある上皮。肺胞の上皮がこれにあたる。

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外分泌腺や内分泌腺も、上皮の仲間だということに注意しましょう。皮膚だけが上皮ではないのです。

細胞の形と配列に基づく分類

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上皮細胞の形に基づいて分類すると、扁平上皮(平べったい形)、立方上皮(正方形に近い形)、円柱上皮(円柱形)などの呼び方がつかわれます。

また、細胞の配列の仕方によって、単層上皮(一列に並んでいる)や多列上皮(細胞の層が重なり合っているが、各細胞は基底膜に接している)、重層上皮(細胞が何列も重なり合っている)に分類することも可能です。

これらの、形と配列を組み合わせて、各器官の上皮組織を表現します。医学の教科書などでもよく紹介される、代表的な6種類の上皮組織を見てみましょう。

単層扁平上皮…扁平上皮が単層になっている上皮組織。血管の内膜や、肺胞などにみられる。

単層立方上皮…立方上皮が単層になっている上皮組織。甲状腺の上皮などにみられる。

単層円柱上皮…円柱上皮が単層になっている上皮組織。胃や腸の粘膜上皮などにみられる。

重層扁平上皮…扁平上皮が重層になっている上皮組織。皮膚や食道の表面などにみられる。

多列上皮…多列円柱上皮ともいう。気道の上皮などにみられる。

移行上皮…細胞の形や配列が状況によって変わる。伸縮が必要な、膀胱や尿管などにみられる。

こうやって見ると、「上皮組織」のなかにもかなりの多様性があることが分かりますね。

医療関係の学生さんは、このあたりの用語をたくさん覚える必要があるでしょう。それぞれの上皮組織の名前だけでなく、どんな器官に存在するのかもおさえておかなくてはなりません。

上皮組織以外の組織

上皮組織以外の組織

image by Study-Z編集部

最後に、上皮組織以外の組織についても少しだけご紹介しておきましょう。4種類の組織のうち、上皮組織以外のものは結合組織、筋組織、神経組織です。

結合組織

組織同士を結合させる役割をもつのが結合組織です。名前からは少しイメージしにくいのですが、軟骨や骨、真皮、血液などがこれにあたります。

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そうなんです。骨格を形成する硬い骨や、弾力のある軟骨、赤血球、白血球のような血球まで、結合組織は多様性に富んでいます。むしろ、「上皮組織・筋組織・神経組織に含まれないものが結合組織」くらいに覚えておいてもいいくらいです。

筋組織

筋細胞のあつまりが筋組織。いうまでもなく、筋肉を構成する組織です。筋細胞は特別なタンパク質の配列により、細胞の形を伸ばしたり、縮めたりすることができます。これが筋肉の収縮となり、器官の運動につながるのです。

神経組織

神経を構成する、神経細胞の集まりが神経組織です。神経細胞は、その一部が細長く伸びたような、細胞突起をもちます。神経細胞同士がつながり、情報(興奮)の伝達や処理を行っているのです。私たちがいろいろな刺激を感じられるのも、からだを動かせるのも神経のおかげ。脳も、神経細胞が集まってできたものです。

生物の身体を構成する”組織”の種類を覚えよう

上皮組織をふくめた4種類の組織は、高校の生物学でも教科書で紹介されます。上皮組織の定義などはもちろんですが、そのほかの組織についてもしっかり覚えておきましょう。

なお、各組織の細胞を研究対象とする分野を”組織学”といいます。組織学は生物学の中でも基礎研究として重要な位置を占めるだけでなく、病気の診断(病理診断)などにも関わってくる分野。私たちの細胞が侵されている病気を見つける際には、組織学で編み出されてきた細胞の観察技術が不可欠なのです。みなさんも、自分が思っていないところで組織学のお世話になっているかもしれません。

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理科生物細胞・生殖・遺伝

「上皮組織」って何?皮膚も立派な身体の器官!現役講師がわかりやすく解説!

外分泌腺や内分泌腺も、上皮の仲間だということに注意しましょう。皮膚だけが上皮ではないのです。

細胞の形と配列に基づく分類

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上皮細胞の形に基づいて分類すると、扁平上皮(平べったい形)、立方上皮(正方形に近い形)、円柱上皮(円柱形)などの呼び方がつかわれます。

また、細胞の配列の仕方によって、単層上皮(一列に並んでいる)や多列上皮(細胞の層が重なり合っているが、各細胞は基底膜に接している)、重層上皮(細胞が何列も重なり合っている)に分類することも可能です。

これらの、形と配列を組み合わせて、各器官の上皮組織を表現します。医学の教科書などでもよく紹介される、代表的な6種類の上皮組織を見てみましょう。

単層扁平上皮…扁平上皮が単層になっている上皮組織。血管の内膜や、肺胞などにみられる。

単層立方上皮…立方上皮が単層になっている上皮組織。甲状腺の上皮などにみられる。

単層円柱上皮…円柱上皮が単層になっている上皮組織。胃や腸の粘膜上皮などにみられる。

重層扁平上皮…扁平上皮が重層になっている上皮組織。皮膚や食道の表面などにみられる。

多列上皮…多列円柱上皮ともいう。気道の上皮などにみられる。

移行上皮…細胞の形や配列が状況によって変わる。伸縮が必要な、膀胱や尿管などにみられる。

こうやって見ると、「上皮組織」のなかにもかなりの多様性があることが分かりますね。

医療関係の学生さんは、このあたりの用語をたくさん覚える必要があるでしょう。それぞれの上皮組織の名前だけでなく、どんな器官に存在するのかもおさえておかなくてはなりません。

上皮組織以外の組織

上皮組織以外の組織

image by Study-Z編集部

最後に、上皮組織以外の組織についても少しだけご紹介しておきましょう。4種類の組織のうち、上皮組織以外のものは結合組織、筋組織、神経組織です。

結合組織

組織同士を結合させる役割をもつのが結合組織です。名前からは少しイメージしにくいのですが、軟骨や骨、真皮、血液などがこれにあたります。

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