
3分で簡単「デンプン」と「ブドウ糖」!体内でどうやって分解される?現役理系大学院生がわかりやすく解説!
「デンプン」は動物に欠かせない栄養素の「ブドウ糖」が沢山結合してできた多糖類です。しかし、「デンプン」のままでは大きすぎて吸収できないため、たくさんの消化酵素をもちいて「ブドウ糖」にまで消化してから吸収している。この消化吸収の仕組みや、理科の実験でもおなじみの「ヨウ素デンプン反応」についても、生物に詳しいライターCaoriと一緒に解説していきます。

ライター/Caori
国立大学院の博士課程に在籍している現役の理系大学院生。とっても身近な現象である生命現象をわかりやすく解説する「楽しくわかりやすい生物の授業」が目標。
でんぷんとは

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デンプンという言葉は皆さんご存知だと思います。ではデンプンとはどんな構造でどのような性質をもった物質なのでしょう。この質問にすんなりと答えられる人は少ないのではないでしょうか?今回は、知っているようで知らない「デンプン」について解説していきます。一つずつ見ていきましょう。
デンプンとは植物が光合成によって実や根などに養分として貯蔵した炭水化物のことです。砂糖の成分でもあるブドウ糖(グルコース)が沢山結合した多糖類で、お米やとうもろこしなどは種子に、ジャガイモなどの芋類は根茎に多く貯えられています。ブドウ糖は生体にとってとても重要なエネルギー源です。そのため食糧として調理して食べたり、食品や医薬品の原料など、さまざまな用途に利用されています。
でんぷんの種類と利用

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実は一言に「デンプン」と言っても、植物によって「デンプン」の持つ性質が違うのです。食品加工の分野では、その性質の違いを利用して様々な用途に利用されています。たとえば、トウモロコシのデンプンは「コーンスターチ」、「片栗粉」は馬鈴薯(じゃがいも)のデンプンです。「コーンスターチ」はお菓子作りの際に使われ、「片栗粉」は揚げ物の際の衣にしたり、練り物のつなぎにしたり、食品にとろみをつけたりと幅広く利用されています。
あと、大流行した「タピオカ」は、キャッサバ芋から作られる「タピオカデンプン」が原料です。モチモチしていて、透明でとてもキレイなのが特徴で、タピオカ以外にもわらびもちなどにも使われています。
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デンプンの構造とブドウ糖

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前述したように植物によって「デンプン」の性質は異なりますが、「デンプン」の基本的な構造は同じでです。「デンプン」は「ブドウ糖(グルコース)」が沢山結合してできており、この「ブドウ糖」の結合の仕方の違いで「アミロース」と「アミロペクチン」の2つに分類されます。
「アミロース」はグルコースがα-1・4結合で結合した直鎖状の構造、「アミロペクチン」は「アミロース」の直鎖に、さらにα-1・6結合でグルコースが結合し分岐した構造をとった高分子化合物です。植物によって「アミロース」と「アミロペクチン」それぞれの含有量が異なり、それが「デンプン」の性質の違いを生んでいます。
デンプンのヒトでの消化吸収

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デンプンを構成する「ブドウ糖」は生物にとってとても大切で、特に大脳や神経、赤血球はブドウ糖が重要なエネルギー源です。デンプンを含む糖質は非常に多きな分子でそのままでは生体内に吸収することができないため、いくつかの消化酵素を用いて「ブドウ糖」まで分解されたのちに吸収されます。順番にみていきましょう。
ヒトがデンプンを含む食物を食べると、まず口腔内でだ液に含まれる消化酵素アミラーゼにより、アミロースとアミロペクチンのα1-4結合が切断されます。ここで生じるのは「ブドウ糖」が10個程度結合した「デキストリン」や2個結合した「マルトース(麦芽糖)」です。唾液に含まれるアミラーゼは胃液によって一度失活しますが、十二指腸に送られると、膵臓が分泌する消化液に含まれるアミラーゼにより「マルトース」にまで分解されます。最後に小腸の柔毛と呼ばれる突起に「マルトース」を分解する消化酵素「マルターゼ」が存在し、マルトースは「ブドウ糖」にまで分解され、小腸内壁から毛細血管中に取り込まれ血液に乗って細胞へと運ばれていくのです。
ヨウ素デンプン反応の原理

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小学校や中学校の理科授業で「ヨウ素デンプン反応」は習ったと思います。じゃがいもなど「デンプン」が多い植物をヨウ素溶液中に漬けると「赤褐色のヨウ素液が赤紫色~青紫色に変化」する反応でした。では、どんな原理で色が変化するのでしょうか?わかりやすくご説明していきますね。
先ほど、アミロースはグルコース分子が直鎖状に結合していると説明しました。実はこの直鎖状の部分は水素結合によりグルコース6個で約1巻きのらせん構造をとっています。「ヨウ素デンプン反応」とは、このらせん構造の中にヨウ素分子が入り込むことで色が変化する反応です。らせん構造の長さによって入り込めるヨウ素分子の量が変わるので、らせん構造の長いアミロースの場合は「青紫色」、らせん構造の短いアミロペクチンは「赤紫色」へと変化します。さらに、加熱するとこのらせん構造を作っている水素結合が壊れるため色が消え、常温に戻ると再びらせん構造をとるため色が戻ることも特徴の一つです。
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