この記事では「車軸を流す」について解説する。

端的に言えば車軸を流すの意味は「大雨が降る」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「車軸を流す」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で日本語学を専攻。若い頃は傘を持ち歩くのが大嫌いで、多少の雨なら濡れても全く気にしなかった。今では「車軸を流す」くらいだと出掛けるのはやめる。

「車軸を流す」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「車軸を流す」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「車軸を流す」の意味は?

「車軸を流す」には、次のような意味があります。

車軸のような太い雨脚の雨が降る。大雨の降るようすをいう。車軸を降らす。車軸をくだす。「雨―・すがごとく切子かな/万太郎」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「車軸(しゃじく)を流・す」

車軸を流す」(しゃじくをながす)とは、「大雨が降る」という意味の慣用句です。辞書にもある通り、車軸のように太い雨脚(あまあし、雨が線状に降り注いで見えるもの)の雨が降ることを言います。また、「車軸」だけを辞書で引くと、掲載されているのは「車輪を取り付けるための軸、心棒」だけではありません。「雨脚が車軸ほど太い雨」といった記載も見られます。

「車軸を流す」と言えば、古典では『顕雅の言ひ間違ひ』が有名です。特に学生の方は古典の試験にこの話が出題されることもありますので、入試対策に覚えておいて損はありません。『十訓抄』という鎌倉時代の説話集に収められている、楊梅大納言顕雅卿(やまもものだいなごんあきまさきょう)と言う人の話に「車軸を流す」が登場します。その場面だけ簡単に紹介しましょう。

顕雅卿は言い間違えの多い人で、「時雨が降ってくるから車を中に入れなさい」と言うべきところを「車が降ってくるから時雨を中に入れなさい」と言い、それを聞いた宮中の女房たちは「車軸が降ってくるんですって、恐ろしいわ」と笑い合ったというものです。確かにひどい言い間違いですが、車と時雨を言い間違えたことにより、時雨(小雨)と車軸(大雨)で意味が180度変わってしまうという技巧的な説話でもあります。

「車軸を流す」の使い方・例文

「車軸を流す」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「車軸を流す」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.車軸を流すような大雨により、今日の運動会は体育館で行うことに変更された。
2.降り始めの頃はすぐにやむ雨だと思っていたのがいきなり車軸を流すほどの大雨となり、今は傘をさしてもびしょ濡れだ。
3.観測史上でも類を見ない晴天続きで降水量が非常に少なく、ダムの水位低下が心配されたが、今日になって車軸を流さんばかりの雨に変わった。

例文にある通り、「車軸を流す」の後には「~ような」や「~ほどの」などの言葉が続きます。そういったことから、「車軸を流す」は大雨の比喩的な表現として使われることが多いと分かっていただけるでしょう。

とはいえ、実際に検索エンジンで「車軸を流す」という言葉が使われているサイトやニュース記事を探しても、たいして記事を見つけることが出来ませんでした。さらに「車軸」に絞って検索を試みた場合、ほとんどが自動車関連の記事です。よって、「車軸を流す」という表現は現代においてはあまり使われていないことになりますが、こういった表現を使うことで読み手の目を引いてもらえるのは間違いありません。

「車軸を流す」の類義語は?違いは?

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ところで、「車軸を流す」の類義語は何でしょうか。違いとともに見ていきましょう。

「盆を覆す」

盆を覆す」(ぼんをくつがえす)とは、「激しく雨が降ることの例え」です。「盆を傾ける」(ぼんをかたむける)などとも言います。違いがあるとすれば、「車軸を流す」が「太い雨脚」、「盆を覆す」が「雨の水量が多い」という些細なものでしょう。他にも、「大雨」「豪雨」「土砂降り」「ザーザー降り」「滝のような雨」「篠突く雨」(しのつくあめ、雨が竹林のように強く細かく高密度で振ること)なども「車軸を流す」の類義語です。

実際に「車軸を流す」「盆を覆す」ことがあれば、大変なのは承知の上ですよね。川の氾濫や堤防の決壊、土砂崩れや道路の寸断など、有形無形を問わずいろいろな被害や損失が予想できます。その他にも、農家の方々は作物の収穫量が減少して何百万何千万と収入が減るおそれがありますし、漁業を営んでいる人々も利益を得るための大切な漁に出る回数が高波や高潮の影響で減るなどと一大事です。近頃は高温や大雪など極端な気候が増加し、全国各地でいろいろな災害のニュースを聞くことが増えました。そう考えれば、何事もほどほどがちょうどいいですよね。

「車軸を流す」の対義語は?

逆に「車軸を流す」の対義語は何でしょうか。

\次のページで「「一点の曇りもない」」を解説!/

「一点の曇りもない」

大雨の反対はもちろん快晴ですよね。「一点の曇りもない」(いってんのくもりもない)とは、「隅々まで明るく晴れて雲一つないこと」を言います。ただし、この言葉は天気以外のことにも使われていることにもふれなければいけません。「一点の曇りもない証言」と言うように、「嘘や偽りがない」「完璧である」という意味で使われます。むしろ、こちらの意味で使われることが多いでしょう。

前項では大雨を表す言葉を紹介しましたが、晴れを表す言葉も多くあります。「好天」「晴天」「快晴」「上天気」「日本晴れ」「天気晴朗」「無辺の蒼穹」(むへんのそうきゅう、果てしない青空)などときりがありません。

「車軸を流す」の英訳は?

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さらに、「車軸を流す」の英訳も見ていきましょう。

「rain buckets」「rain cats and dogs」

「車軸を流す」とは、簡単に言えば「大雨が降る」ことなので、「rain heavily」などの表現でも十分です。しかし、英語にも慣用句的な大雨についての表現がありますので、ここでは2つ紹介します。

まず、「rain buckets」とは、「バケツをひっくり返したような雨」です。日本語でもなじみのある表現は、この英語を直訳して使われるようになったものと推測できます。実は気象庁の気象用語で「バケツをひっくり返したような雨」の定義があるとは意外なことですよね。1時間の降雨量が30ミリ以上50ミリ未満の激しい雨に相当するとしています。

さらに、「rain cats and dogs」と言う表現は、直訳すると「猫と犬の雨が降る」です。これで「土砂降り」の意味となり、知らなかったらいったい何のことやらですよね。これには諸説があり、北欧神話で犬と猫はそれぞれ風と雨を起こす力があると信じられていたからとするものや、土砂降りになると犬と猫が逃げ回るからだというものなどさまざまです。

「車軸を流す」を使いこなそう

この記事では「車軸を流す」の意味・使い方・類語などを説明しました。

日本語には、「車軸を流す」以外にも「馬の背を分ける」「篠を束ねる」「狐の嫁入り」など、雨に関することわざや慣用句がたくさんあります。さらに、ここで挙げた慣用句にはいずれも「雨」と言う字が入っていません。そのことを知って、慣用句はおもしろい、新たな言葉を覚えて語彙力を上げたいと思っていただければ本当にこの記事を作成した甲斐があります。その気持ちが大切です。ぜひとも多くの言葉を知って、情緒豊かな生活を送りましょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「車軸を流す」の意味や使い方は?例文や類語を雑学大好きwebライターがわかりやすく解説!

この記事では「車軸を流す」について解説する。

端的に言えば車軸を流すの意味は「大雨が降る」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「車軸を流す」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で日本語学を専攻。若い頃は傘を持ち歩くのが大嫌いで、多少の雨なら濡れても全く気にしなかった。今では「車軸を流す」くらいだと出掛けるのはやめる。

「車軸を流す」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「車軸を流す」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「車軸を流す」の意味は?

「車軸を流す」には、次のような意味があります。

車軸のような太い雨脚の雨が降る。大雨の降るようすをいう。車軸を降らす。車軸をくだす。「雨―・すがごとく切子かな/万太郎」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「車軸(しゃじく)を流・す」

車軸を流す」(しゃじくをながす)とは、「大雨が降る」という意味の慣用句です。辞書にもある通り、車軸のように太い雨脚(あまあし、雨が線状に降り注いで見えるもの)の雨が降ることを言います。また、「車軸」だけを辞書で引くと、掲載されているのは「車輪を取り付けるための軸、心棒」だけではありません。「雨脚が車軸ほど太い雨」といった記載も見られます。

「車軸を流す」と言えば、古典では『顕雅の言ひ間違ひ』が有名です。特に学生の方は古典の試験にこの話が出題されることもありますので、入試対策に覚えておいて損はありません。『十訓抄』という鎌倉時代の説話集に収められている、楊梅大納言顕雅卿(やまもものだいなごんあきまさきょう)と言う人の話に「車軸を流す」が登場します。その場面だけ簡単に紹介しましょう。

顕雅卿は言い間違えの多い人で、「時雨が降ってくるから車を中に入れなさい」と言うべきところを「車が降ってくるから時雨を中に入れなさい」と言い、それを聞いた宮中の女房たちは「車軸が降ってくるんですって、恐ろしいわ」と笑い合ったというものです。確かにひどい言い間違いですが、車と時雨を言い間違えたことにより、時雨(小雨)と車軸(大雨)で意味が180度変わってしまうという技巧的な説話でもあります。

「車軸を流す」の使い方・例文

「車軸を流す」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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