外膜
外膜は核を取り巻くように存在している他に、外側に向かって広がり小胞体とつながっています。外膜周辺からリボソームが存在しており、リボソームは小胞体にある膜タンパク質と結合して合成したばかりのタンパク質を小胞体内部へと送り込んでいますが、このリボソームが無数に結合した小胞体を粗面小胞体と呼び、リボソームがない滑らかな面をもつ小胞体を滑面小胞体と呼んでいるのです。
内膜
内膜は細胞核内部にある膜で、その細胞核内部側には核ラミナと呼ばれるタンパク質が局在しており、繊維状に絡みついて細胞核の骨格となっています。内膜には染色体を保持するための機能があり、細胞核内部において染色体は自由に浮遊しているわけではなく、内膜に保持されてある程度場所が定められているのです。
核ラミナの役割
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細胞核の骨格を形成する核ラミナは、ラミンと呼ばれる分子量6万から8万の繊維状のタンパク質からできています。ラミンは少なくとも7種類のタンパク質があり、ラミン分子は他のラミン分子と反応してラミンペアを形成し、ラミンペアはさらに他のラミンペアと絡み合うことを繰り返して巨大な網状の骨格を形成しているのです。
核ラミナは、DNAとタンパク質の混合したクロマチンと結合する性質を持っており、その性質により染色体を核膜内側に保持することが可能となっています。染色体が結合する部位は均一ではなく、染色体同士の間には染色体間ドメインと呼ばれる隙間が作られているのです。
染色体間ドメインは、転写されたRNAが運ばれる通路になったり、加工される場になっています。ラミナによって染色体が結合している部分を倉庫だとすれば、染色体間ドメインは倉庫と倉庫の間にある道路や作業場というイメージです。
実際の倉庫でも在庫の把握が重要であることと同様に、細胞核の内部でも遺伝子の場所は常に整理されています。良く使われる遺伝子は使いやすいように染色体間ドメインに近いところに配置され、普段はあまり使わない遺伝子は倉庫の奥に追いやられますがこの配置は流動的で、現在の研究では常に変化していることは分かっていても、その仕組は未だに十分解明されてはいません。
核小体とは何か
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冒頭で細胞の絵を描くとしたらどのように描くかという質問をしましたが、核を描くことができてもさらに内部に核小体まで描ける人はあまり多くないかもしれません。核小体とは仁とも言われ、細胞の中央部分に存在していますが、細胞膜で覆われてはいなくて、むき出しの状態で存在しています。
核小体の役割は、完成したリボソームを作り出すことです。リボソームは複数のタンパク質が結合した複合体ですが、その材料は細胞核外から核膜孔複合体を通って核小体まで運ばれます。核小体にはrRNA(リボソームRNA)が存在しており、そのrRNAと材料のタンパク質が次々と結合していくことで完成形のリボソームが作られているのです。
そして完成したリボソームは核膜孔複合体を通じて細胞質基質中に送り出されていきます。リボソームは基質中でmRNAと結合し、アミノ酸を材料にしてタンパク質の合成を行っており、核小体とはいわば工作機械の組立工場といえる役割をしているのです。
無核細胞
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真核生物ではほとんどの細胞が細胞核を持っています。しかし細胞の役割によっては核を持たない無核細胞が存在しており、無核細胞は核をはじめは持っていた点で原核生物とは全く異なる細胞です。哺乳類では無核細胞として有名なのが赤血球で、赤血球は成熟に伴い酸素を運搬するという役割に特化するために全ての細胞小器官を吐き出します。
核が無いということは、新たに細胞機能の維持のためにタンパク質を生産できないことを意味しますから、赤血球は3ヶ月程度の寿命しかもっていません。酸素を効率よく運ぶという一点に適応した結果といえるのです。
真核生物はどのように核を獲得できたのか
真核生物は核を手に入れることで高度に進化することができたとも言えますが、一体どのようにして核を獲得するに至ったのでしょうか。様々な仮説が提唱されていますが実はまだ確実なことは分かっていません。ここでは仮説を簡単にご紹介しておきます。
1つ目は栄養共生モデル。古細菌と細菌の共生関係から進化したと主張する説で、ミトコンドリアと葉緑体の起源として広く受け入れられている説と類似しています。2つ目は細菌から内部共生段階を経ることなく進化したと主張される説です。
3つ目は細胞核ウイルス起源説。ウイルスの感染により真核生物へと進化したと唱える説です。最後4つ目は細胞が2つ目の外膜を発達させ、内側の膜が核膜となったと主張する説で、どの説もある程度の根拠を示していますが明確な証拠はつかめていません。