この記事では「声なき声」について解説する。

端的に言えば声なき声の意味は「もの言わない意見」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

情報誌系のライターを10年経験したコトバアソビを呼んです。一緒に「声なき声」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/コトバアソビ

人材派遣会社の採用担当者の経験から、言葉を正確に伝えることの重要性を認識。現在は、幅広くネットワークを持つ情報屋。また福祉事業者の声なき声を届け、支援するフリーライターとしての側面を持つ言葉マニア。声なき声とは、その本質を解明する。

「声なき声」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「声なき声」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「声なき声」の意味は?

「声なき声」には、次のような意味があります。

1.口には出さないが心の中で思っている意見。
2.表立たない意見。

出典:精選版 日本国語大辞典(小学館)「声なき声」

「声なき声」とは、口に出さない押し殺した声のことです。しかし心の中には確かに記憶(理解)していることを意味します。したがって表立たない意見です。

近年「サイレントマジョリティー」という楽曲が発売され、ヒットしたため、再度脚光を浴びている言葉ですね。政治的な意味合いもあり、物言わぬ大衆を意味する言葉です。政治色を持たない中立的な人との、意味も含まれています。

この「声なき声」とは、声をあげない人という意味から、弱者の声という意味でも使いますね。

「声なき声」の語源は?

次に「声なき声」の語源を確認しておきましょう。

諸説はありますが「声なき声」とは、本来はしゃべること、口に出すことができるのにもかかわらず、声をあげないことから派生した言葉です。声なき声とは、2000年代から頻繁に使われるようになりました。

もともとはアメリカのニクソン大統領が「silent majority(サイレント・マジョリティー)」と用いて「物言わぬ大衆」と評したことが始まりです。こののちベトナム戦争への反戦活動などに、この「サイレント・マジョリティー」を用い、活動家らのキャッチコピーや活動名として使いました。

日本で最初に、歴史の文献として残っている「声なき声」は、1960年に岸信介首相の記者会見のマスコミに向けた返答です。当時は日米安保条約の締結に反対する団体へ向けて「サイレント・マジョリティー」を訳し引用、アレンジをして「声なき国民の声」と言いました。それに反発した団体側は「声なき声」という名をもって活動をします。

このことから極めて政治色の強いこの言葉は、1900年代後半にはあまり好まれてはいません。ただ今の国語辞典のように定義されるようになってからは、声をあげられない人の意味と、使うようになりました。

「声なき声」の使い方・例文

「声なき声」の例文を使い、見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.「広く国民の声なき声に耳を傾け、正しい政治を行うべきだ。」と駅前での演説にて、支持者に熱心に語った。そして支援者を集めた彼は、見事に選挙に当選した。
2.声なき声に力をください。どうかご賛同くださいますよう、よろしくお願いいたします。
3.上司にひどく怒られている彼は、声なき声をあげようと我慢していた。

1の例文と2の例文は、よく「声なき声」と用いられるパターンです。政治などのスピーチでは、中立の人へ向けて訴えることや市民運動などを代弁する言葉として用います。

3の例文は筆者が会社にて働いていてときに、上司から叱責を受けている同僚をみて、思ったことです。声なき声は実際には口に出さない思いですが、明らかに気持ちを我慢しているさまを意味します。

「声なき声」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

「声なき声」の類義語をみてみましょう。「声なき声」に関連するワードを取り上げます。

\次のページで「「心の声」」を解説!/

「心の声」

「心の声」とは自分の中では思っている(感じている)気持ちです。秘めた思いや内に秘めるなどと似たような表現ですね。「声なき声」との違いは、一定の主張(きわめて中立的な)や意見を意味するのに対し「心の声」は、思っていることに定義を持ちません。

「世論・民意」

「世論・民意」とは、政治的な大衆の意向です。「声なき声」との違いは、伝えているかいないかの違いですね。「声なき声」は伝えていない意見で「世論・民意」とは伝わった(公表された)意見です。

「もたざる者」

「もたざる者」とは、富や名声を得ていない人を示します。「もつ者ともたざる者」として、対比されて使うケースもありますね。「声なき声」とは、少しだけ違っていますが、近年では「生活弱者や一般庶民」を示す言葉としても「声なき声」使うため、この「もたざる者」も類義語です。

「声なき声」の対義語は?

それでは「声なき声」の対義語をみてみましょう。

「ラウド・マイノリティー」

日本語で対義語として定義する言葉は、おそらく使用ができないため、英訳の「サイレント・マジョリティー」に対する対義語を定義しました。

「ラウド・マイノリティー」とは、政治的な主張をする少数派の団体を言い表します。英訳については、この言葉を差別的と使いません。むしろマイノリティーが許容される今、彼らの主張も一意見として、認めるべき(聞き入れて許容すべき)と理解して、英語圏では用いています。

「声なき声」の英訳は?

image by iStockphoto

それでは英訳をみてみましょう。「声なき声」の英訳は、次の2つの言葉です。

\次のページで「「silent majority」」を解説!/

「silent majority」

もともとはこの「silent majority」から生まれたため、英訳をするとそのまま「声なき声」という意味です。英語では政治的な「物言わぬ多数派」という意味が強いため、使う場面は限られます。

・Politicians must speak for the silent majority.(政治家は声なき声の代弁者でなければいけません。)

「the voice of the voiceless」

the voice of the voiceless」で「声なき声」と訳せ、この言葉を単語で分けて、使っている論文は数多くあります。また映画のタイトルにもなり、キャッチコピーでよく使われるフレーズです。

・We are the voice of the voiceless.(われわれは声なき声です。)(※自身を都合よく、自由主義で中立的に主張したいと言うニュアンスです。)

「声なき声」を使いこなそう

この記事では「声なき声」の意味・使い方・類語などを説明しました。「声なき声」とは語源を知ると英語から派生した言葉です。元が政治家のスピーチからだと知ると、今の使い道とを比較して、かなり大衆向けになった言葉ですね。

これから特にビジネスは、声なき声をうまく生かし、共感を得ることが大事です。私もライターという仕事柄、いろいろな言葉のチョイスを求められる以上、声なき声に背くことはできはしないと感じました。

" /> 【慣用句】「声なき声」の意味や使い方は?例文や類語を言葉のマニアライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「声なき声」の意味や使い方は?例文や類語を言葉のマニアライターがわかりやすく解説!

この記事では「声なき声」について解説する。

端的に言えば声なき声の意味は「もの言わない意見」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

情報誌系のライターを10年経験したコトバアソビを呼んです。一緒に「声なき声」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/コトバアソビ

人材派遣会社の採用担当者の経験から、言葉を正確に伝えることの重要性を認識。現在は、幅広くネットワークを持つ情報屋。また福祉事業者の声なき声を届け、支援するフリーライターとしての側面を持つ言葉マニア。声なき声とは、その本質を解明する。

「声なき声」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「声なき声」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「声なき声」の意味は?

「声なき声」には、次のような意味があります。

1.口には出さないが心の中で思っている意見。
2.表立たない意見。

出典:精選版 日本国語大辞典(小学館)「声なき声」

「声なき声」とは、口に出さない押し殺した声のことです。しかし心の中には確かに記憶(理解)していることを意味します。したがって表立たない意見です。

近年「サイレントマジョリティー」という楽曲が発売され、ヒットしたため、再度脚光を浴びている言葉ですね。政治的な意味合いもあり、物言わぬ大衆を意味する言葉です。政治色を持たない中立的な人との、意味も含まれています。

この「声なき声」とは、声をあげない人という意味から、弱者の声という意味でも使いますね。

「声なき声」の語源は?

次に「声なき声」の語源を確認しておきましょう。

諸説はありますが「声なき声」とは、本来はしゃべること、口に出すことができるのにもかかわらず、声をあげないことから派生した言葉です。声なき声とは、2000年代から頻繁に使われるようになりました。

もともとはアメリカのニクソン大統領が「silent majority(サイレント・マジョリティー)」と用いて「物言わぬ大衆」と評したことが始まりです。こののちベトナム戦争への反戦活動などに、この「サイレント・マジョリティー」を用い、活動家らのキャッチコピーや活動名として使いました。

日本で最初に、歴史の文献として残っている「声なき声」は、1960年に岸信介首相の記者会見のマスコミに向けた返答です。当時は日米安保条約の締結に反対する団体へ向けて「サイレント・マジョリティー」を訳し引用、アレンジをして「声なき国民の声」と言いました。それに反発した団体側は「声なき声」という名をもって活動をします。

このことから極めて政治色の強いこの言葉は、1900年代後半にはあまり好まれてはいません。ただ今の国語辞典のように定義されるようになってからは、声をあげられない人の意味と、使うようになりました。

「声なき声」の使い方・例文

「声なき声」の例文を使い、見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.「広く国民の声なき声に耳を傾け、正しい政治を行うべきだ。」と駅前での演説にて、支持者に熱心に語った。そして支援者を集めた彼は、見事に選挙に当選した。
2.声なき声に力をください。どうかご賛同くださいますよう、よろしくお願いいたします。
3.上司にひどく怒られている彼は、声なき声をあげようと我慢していた。

1の例文と2の例文は、よく「声なき声」と用いられるパターンです。政治などのスピーチでは、中立の人へ向けて訴えることや市民運動などを代弁する言葉として用います。

3の例文は筆者が会社にて働いていてときに、上司から叱責を受けている同僚をみて、思ったことです。声なき声は実際には口に出さない思いですが、明らかに気持ちを我慢しているさまを意味します。

「声なき声」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

「声なき声」の類義語をみてみましょう。「声なき声」に関連するワードを取り上げます。

\次のページで「「心の声」」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: