
端的に言えば声なき声の意味は「もの言わない意見」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
情報誌系のライターを10年経験したコトバアソビを呼んです。一緒に「声なき声」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/コトバアソビ
人材派遣会社の採用担当者の経験から、言葉を正確に伝えることの重要性を認識。現在は、幅広くネットワークを持つ情報屋。また福祉事業者の声なき声を届け、支援するフリーライターとしての側面を持つ言葉マニア。声なき声とは、その本質を解明する。
「声なき声」の意味は?
「声なき声」には、次のような意味があります。
1.口には出さないが心の中で思っている意見。
2.表立たない意見。
出典:精選版 日本国語大辞典(小学館)「声なき声」
「声なき声」とは、口に出さない押し殺した声のことです。しかし心の中には確かに記憶(理解)していることを意味します。したがって表立たない意見です。
近年「サイレントマジョリティー」という楽曲が発売され、ヒットしたため、再度脚光を浴びている言葉ですね。政治的な意味合いもあり、物言わぬ大衆を意味する言葉です。政治色を持たない中立的な人との、意味も含まれています。
この「声なき声」とは、声をあげない人という意味から、弱者の声という意味でも使いますね。
「声なき声」の語源は?
次に「声なき声」の語源を確認しておきましょう。
諸説はありますが「声なき声」とは、本来はしゃべること、口に出すことができるのにもかかわらず、声をあげないことから派生した言葉です。声なき声とは、2000年代から頻繁に使われるようになりました。
もともとはアメリカのニクソン大統領が「silent majority(サイレント・マジョリティー)」と用いて「物言わぬ大衆」と評したことが始まりです。こののちベトナム戦争への反戦活動などに、この「サイレント・マジョリティー」を用い、活動家らのキャッチコピーや活動名として使いました。
日本で最初に、歴史の文献として残っている「声なき声」は、1960年に岸信介首相の記者会見のマスコミに向けた返答です。当時は日米安保条約の締結に反対する団体へ向けて「サイレント・マジョリティー」を訳し引用、アレンジをして「声なき国民の声」と言いました。それに反発した団体側は「声なき声」という名をもって活動をします。
このことから極めて政治色の強いこの言葉は、1900年代後半にはあまり好まれてはいません。ただ今の国語辞典のように定義されるようになってからは、声をあげられない人の意味と、使うようになりました。
「声なき声」の使い方・例文
「声なき声」の例文を使い、見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。
1.「広く国民の声なき声に耳を傾け、正しい政治を行うべきだ。」と駅前での演説にて、支持者に熱心に語った。そして支援者を集めた彼は、見事に選挙に当選した。
2.声なき声に力をください。どうかご賛同くださいますよう、よろしくお願いいたします。
3.上司にひどく怒られている彼は、声なき声をあげようと我慢していた。
1の例文と2の例文は、よく「声なき声」と用いられるパターンです。政治などのスピーチでは、中立の人へ向けて訴えることや市民運動などを代弁する言葉として用います。
3の例文は筆者が会社にて働いていてときに、上司から叱責を受けている同僚をみて、思ったことです。声なき声は実際には口に出さない思いですが、明らかに気持ちを我慢しているさまを意味します。
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