この記事では「腰を抜かす」について解説する。

端的に言えば腰を抜かすの意味は「立てなくなる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「腰を抜かす」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

長年の腰痛持ちで、ぎっくり腰になったときは寝返りやトイレに行くことすら辛かったという。温めることと運動が必要だと思いながらなかなか生活改善は難しいというヤザワナオコに、「腰を抜かす」について解説してもらう。

「腰を抜かす」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「腰を抜かす」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「腰を抜かす」の意味は?

「腰を抜かす(こしをぬかす)」には、次のような意味があります。

1.腰の関節が外れたり、腰の力がなくなったりして立てなくなる。

2.驚きや恐れのために立ち上がれなくなる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

急に重いものを持ち上げたときや、同じ姿勢を長時間続けたあとなどは、腰の関節が外れたり腰に力が入らなくなったりしたことがありませんか。これは腰の筋肉に炎症が起こるためと考えられていて、筆者は長く勉強や執筆をしたあとは腰の骨がずれているような感覚に襲われます。

また、恐怖や驚きといった精神的なショックが大きい事柄に遭遇した際も、実際に倒れるわけではなくとも比喩的に使うことがある表現です。この精神的な衝撃は悪いことに限らず、喜びの度合いがはなはだしいなどよいことにも使えますよ。

このように、肉体的、精神的を問わず腰に力が入らなくなるような状態をいうのが「腰を抜かす」。時には、頼りにしていた存在を失って気力が湧かない様子を表現することもあります。なお、「腰が抜ける」と表現される場合もありますが、「人」を主語にするか「腰」を主語にするかというだけで、意味の違いはありません。

「腰を抜かす」の語源は?

次に「腰を抜かす」の語源を確認しておきましょう。「腰」はもちろん上半身と下半身の境となる骨盤周辺の部分。人類が二足歩行するようになったことに伴い、前傾した骨盤の上に上半身が乗る体勢になりました。手で物を持てるようになったのは便利なのですが、この進化が急激だったために腰には大きな負担がかかり、腰痛の原因になっているそうですよ。

また「抜かす」には力を失わせるという意味もあります。体の要ともいえる腰に力が入らなくなったら、立っていられなくなり、へなへなと座り込んでしまうのも仕方ありませんね。こうして使われるようになったのが「腰を抜かす」という表現です。

\次のページで「「腰を抜かす」の使い方・例文」を解説!/

「腰を抜かす」の使い方・例文

「腰を抜かす」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・洗濯物を干していて腰を抜かすなんて、体の状態が不安に思えてきた。

・重いものを持ったら腰が抜けてしまったようだ。整形外科で診断してもらわなければ。

・先生から所属チームが優勝したと聞き、あまりの喜びに腰を抜かした。

・留学生の彼は来日した際、便座にヒーターが入っていることに腰を抜かすほど驚いたそうだ。

・あんな上司に腰抜けとののしられて悔しかった。次回の会員向け説明会は立派にやり遂げて見返してやりたい。

現実に身体に負担がかかって力が入らなくなるという意味の例文と、感情の振幅の大きさで力が抜ける様子を表す例文を2つずつご紹介しました。

また、最後の例文に挙げたように「腰抜け」という言葉もあります。元は腰が立たずに動けない人のことを言いましたが、今はもっぱら「いくじなし、臆病者」のような意味で使いますよ。

「腰を抜かす」の類義語は?違いは?

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では、「腰を抜かす」の類義語を見ていきましょう。驚きを表すことわざや慣用句はたくさんありますが、ここでは「腰」を使う表現と、そうでないものを紹介します。

「腰が砕ける」

腰に力が入らず体が安定しない様子や、気力がなくなることをいいます。「恐怖や驚きで」というニュアンスとは少々異なりますが、「腰を抜かす」とかなり近い表現ではないでしょうか。

ちなみに短縮して「腰砕け」と使う場合には、2つの意味があります。1つは相撲用語で、技をかけられたわけでもないのに自らバランスを崩して倒れた場合のこと。もう1つはものごとが途中でダメになることをいいます。

\次のページで「「足がすくむ」」を解説!/

「足がすくむ」

恐怖や緊張で足がこわばり、自由に動けない様子をいいます。よく使われるのは、大勢の前で何かを披露するようなシーンで「緊張で足がすくむ」というパターン。足は前進するのに欠かせませんから、「出ていくのが怖い」というニュアンスがよく出ていますね。

この「足がすくむ」は「立ちすくむ」と言い換えてもほぼ同じ意味です。どちらも身動きが取れない様子を表しています。

・かわいがっていたハムスターが死んでからというもの、喪失感で腰が砕けた状態が続いている。

・計画が腰砕けに終わり、突如手に入れた自由な時間に戸惑っています。

・子供とはいえ、全校生徒を前に講演するなんて足がすくむ思いだ。

・高所恐怖症の彼は、展望台でエレベーターから降りるなり番組撮影も忘れて立ちすくんでいた。

「腰を抜かす」の対義語は?

次に「腰を抜かす」と反対の意味を表す言葉を見てみましょう。同じく「腰」を使う表現がありますよ。

「腰が据わる(こしがすわる)」

腰を落として重心を下げると安定感があることから、落ち着いて物事を行うことや、暮らしや職業が安定していることを指します。「腰を抜かす」のように一時的な体の状態や心の動きをいうものではありませんが、動揺することなくどっしり構えるさまが想像できるのではないでしょうか。

・やっと試験期間が終わったので、これからは腰を据えて趣味の編み物に取り組めます。

・縁もゆかりもなかった田舎町に腰を据えて、もう20年になる。

「腰を抜かす」の英訳は?

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英語でも「腰を抜かす」に相当する表現はあるのでしょうか。近いと思われるものを紹介します。

\次のページで「「be unable to stand up」」を解説!/

「be unable to stand up」

「be unable to」は「~することができない」の意味なので、「立つことができない」という意味です。ぎっくり腰など肉体的にダメージを受けたケースならこの表現がいいでしょう。

「paralyzed with terror」

「paralyze」は「しびれる、麻痺させる」という意味で、「terror(恐怖)」でしびれるのですから精神的なショックを受けて「腰を抜かす」場合に使える表現です。

同様に「weak at the knees」も強い感情のために立っていられなくなる際に使えますよ。

ネコにイカを食べさせるとどうなる?

最後に、桜木先生からの課題、「猫にイカを食べさせると腰を抜かす」についてお話します。筆者などは猫が魚をくわえて逃げていくイメージがあるので魚介類は好物かと思っていました。ところがイカ、中でも生のイカで鮮度が落ちたものは猫には禁物だそうです。

というのも猫の体は人の7倍ものビタミンB1を必要としているのですが、イカに含まれるチアミナーゼという成分がこのビタミンB1を分解してしまうとか。ビタミンB1が不足した状態になると、成長の遅れや運動失調、麻痺やけいれんが起こるとのことで、イカを食べてふらついた猫を見た人がいたことからこう言われるようになったようです。人間が食べておいしいものはつい猫にもあげたくなりますが、気をつけてあげたいですね。

「腰を抜かす」を使いこなそう

この記事では「腰を抜かす」の意味・使い方・類語などを説明しました。

身体的な意味と精神的な意味の両方を持つ「腰を抜かす」。筆者は今のところ、腰を抜かすほど驚いた経験はありません。一生のうちにそんな機会が訪れるのか、楽しみに待ちたいと思います。

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国語言葉の意味

【慣用句】「腰を抜かす」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「腰を抜かす」について解説する。

端的に言えば腰を抜かすの意味は「立てなくなる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「腰を抜かす」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

長年の腰痛持ちで、ぎっくり腰になったときは寝返りやトイレに行くことすら辛かったという。温めることと運動が必要だと思いながらなかなか生活改善は難しいというヤザワナオコに、「腰を抜かす」について解説してもらう。

「腰を抜かす」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「腰を抜かす」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「腰を抜かす」の意味は?

「腰を抜かす(こしをぬかす)」には、次のような意味があります。

1.腰の関節が外れたり、腰の力がなくなったりして立てなくなる。

2.驚きや恐れのために立ち上がれなくなる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

急に重いものを持ち上げたときや、同じ姿勢を長時間続けたあとなどは、腰の関節が外れたり腰に力が入らなくなったりしたことがありませんか。これは腰の筋肉に炎症が起こるためと考えられていて、筆者は長く勉強や執筆をしたあとは腰の骨がずれているような感覚に襲われます。

また、恐怖や驚きといった精神的なショックが大きい事柄に遭遇した際も、実際に倒れるわけではなくとも比喩的に使うことがある表現です。この精神的な衝撃は悪いことに限らず、喜びの度合いがはなはだしいなどよいことにも使えますよ。

このように、肉体的、精神的を問わず腰に力が入らなくなるような状態をいうのが「腰を抜かす」。時には、頼りにしていた存在を失って気力が湧かない様子を表現することもあります。なお、「腰が抜ける」と表現される場合もありますが、「人」を主語にするか「腰」を主語にするかというだけで、意味の違いはありません。

「腰を抜かす」の語源は?

次に「腰を抜かす」の語源を確認しておきましょう。「腰」はもちろん上半身と下半身の境となる骨盤周辺の部分。人類が二足歩行するようになったことに伴い、前傾した骨盤の上に上半身が乗る体勢になりました。手で物を持てるようになったのは便利なのですが、この進化が急激だったために腰には大きな負担がかかり、腰痛の原因になっているそうですよ。

また「抜かす」には力を失わせるという意味もあります。体の要ともいえる腰に力が入らなくなったら、立っていられなくなり、へなへなと座り込んでしまうのも仕方ありませんね。こうして使われるようになったのが「腰を抜かす」という表現です。

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