この記事では「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の意味について解説する。

このことわざの意味は端的に言うと「あるものを憎むと、それに関連するすべてが憎くなる」といったところですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

公務員として公文書作成や出版社での校閲業務といった経験を持つwebライターの本木を呼んです。一緒に「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/本木

大学では理系専攻で、物事の仕組みや成り立ちについて考えることを得意としている。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の意味についても由来を含めてじっくりと解説していく。

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の意味や使い方を見ていきましょう。

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の意味は?

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」には、次のような意味があります。

その人を憎むあまり、その人に関係のあるものすべてが憎くなるというたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」

直接的な意味としては「お坊さんを憎んでいる人にとっては、彼らの身に着けている袈裟までもが憎く思えてくる」となり、そこから嫌いなものに関係するものすべてが憎い、ということを例えたことわざです。

「袈裟(けさ)」は、現在の日本においては仏教の僧侶が衣服の上から身に着ける布状の衣装のことを指します。上の画像でいうと、左肩からかかっている緑色の衣服ですね。袈裟は普段はあまり聞かない言葉ですが、例えば「おおげさ」という言葉も漢字では「大袈裟」と書き、これも僧侶が着る袈裟に由来する言葉であると言われています。

なお「坊主が憎ければ袈裟まで憎し」、「法師が憎ければ袈裟まで憎し」などといった表現もありますが、こちらも同じ意味です。

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「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の語源は?

次に「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の語源を確認しておきましょう。

このことわざの由来は、江戸時代に始められた「寺請制度」にあるという説があります。当時この制度により、寺院が「寺請証文」という身分証を発行し住民の戸籍を管理する、いわば幕府の出先機関の役割を担うこととなり、僧侶によって民衆の管理がなされることとなりました。そうした管理体制への不満や批判の高まりが要因となり、嫌いなものの例えとしてのことわざに僧侶が登場した、というのが一つの説です。

ほか、僧侶が悪いものに例えられたことわざとしては「坊主の不信心」や「坊主丸儲け」などがあります。

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の使い方、例文

それでは「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の使い方を、例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.前の恋人とは最後には喧嘩別れとなったが、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いで、もらっていたプレゼントもにわかに気に入らなくなってしまい、すべて捨ててしまった。

2.過去に不倫騒動を起こしたあの芸能人は、今や何をやっても批判されるようになってしまった。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いというように、彼を嫌う人にとっては行動のすべてが気に入らなくなってしまったみたいだ。

3.うちの課長は気に入らない部下の仕事には徹底的に文句をつける。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いとはいうが、仕事の出来を感情的に評価しているようでは管理職失格だよ。

このように、憎しみのあまり関係するすべてのものが嫌いになってしまったことやその様子に対して、例えとして「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ということわざを使うことができます。

しかし、理性ではなく感情によって理不尽な扱いをしてしまうことに対して暗に批判するような場面で用いられることがあるため、実際に使うときにはその場面に気をつけましょう。

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の類義語は?違いは?

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ここでは「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」に似た意味を持つ言葉について説明します。

「親が憎けりゃ子も憎い」

ある人を憎いと思うとその子どもすら憎いと感じる、つまりある人やものを憎むあまりそれに関係するものまで嫌いになる、意味のことわざです。「坊主憎けりゃ~」とほとんど同じ意味であると言ってよいでしょう。

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「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の対義語は?

さらに、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の対義語も確認します。

「あばたもえくぼ」

顔にあるあばたも、恋する者から見るとえくぼに見える、つまり好きになった相手のことなら欠点でさえも長所に思える、という意味です。「あばた(痘痕)」は顔の出来物の跡のことで、それですら魅力的に映るという、「坊主憎けりゃ~」とはまったく反対の意味の言葉となります。

似た言葉としては「恋は盲目」や「惚れた欲目」があり、こちらも好きになった相手のことは実際より良く見えてしまい、欠点も長所と思えることと、いう意味です。

「屋烏の愛」

「おくうのあい」と読み、人を愛するとその人の家の屋根にとまっている烏(からす)までも愛おしく思えること、という意味で、愛情が深いことを例えたことわざです。好きな人のものであれば本来関係のないものまで何でも好きになる、ということですから、「坊主憎けりゃ~」とはまさに正反対と言ってよい言葉ですね。

同じ意味で「愛は屋上の烏にも及ぶ」という表記もあります。

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の英訳は?

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「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」を英語で表すとすればどのような表現になるのでしょうか。

「To hate the ground he treads on.」

こちらを直訳すると「彼が歩いた地面をも憎む」となり、人を憎むとそれに関連するものまで憎い、という「坊主憎けりゃ~」のまさに日本語訳そのものといえる言い回しです。なお「tread」には「歩く」のほか「踏む」という意味もあり、「彼が踏んだ地面をも憎む」と訳すこともできます。

\次のページで「「He who hates Peter harms his dog.」」を解説!/

「He who hates Peter harms his dog.」

こちらを直訳すると「ピーターを憎む人は彼の犬を傷つける」となります。人を憎むとその人の持つものまで憎いという意味となり、こちらも「坊主憎けりゃ~」の日本語への言いかえ表現そのものと言ってよいことわざです。なお「harm」には傷つける、害を与えるという意味があります。

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」を使いこなそう

この記事では「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「坊主憎けりゃ~」も、また対義語で紹介した「あばたもえくぼ」も、どちらも大きく解釈すると、「主観や感情によって物事の捉え方がまったく異なることがある」という意味となります。逆に言うと、「主観や感情が冷静な判断を妨げる」ということを読み取ることもできますね。

何か情報を得たとき、自分にとって都合の良いように解釈したり、気持ちや気分によって感情的な判断をしてしまっては事を見誤ってしまうということを、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」が教えてくれているように思えます。情報のあふれかえっている現代ですから、このことを念頭におきながら情報への対処に気を付けていきたいですね。

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国語言葉の意味

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の意味について解説する。

このことわざの意味は端的に言うと「あるものを憎むと、それに関連するすべてが憎くなる」といったところですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

公務員として公文書作成や出版社での校閲業務といった経験を持つwebライターの本木を呼んです。一緒に「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/本木

大学では理系専攻で、物事の仕組みや成り立ちについて考えることを得意としている。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の意味についても由来を含めてじっくりと解説していく。

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の意味や使い方を見ていきましょう。

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の意味は?

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」には、次のような意味があります。

その人を憎むあまり、その人に関係のあるものすべてが憎くなるというたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」

直接的な意味としては「お坊さんを憎んでいる人にとっては、彼らの身に着けている袈裟までもが憎く思えてくる」となり、そこから嫌いなものに関係するものすべてが憎い、ということを例えたことわざです。

「袈裟(けさ)」は、現在の日本においては仏教の僧侶が衣服の上から身に着ける布状の衣装のことを指します。上の画像でいうと、左肩からかかっている緑色の衣服ですね。袈裟は普段はあまり聞かない言葉ですが、例えば「おおげさ」という言葉も漢字では「大袈裟」と書き、これも僧侶が着る袈裟に由来する言葉であると言われています。

なお「坊主が憎ければ袈裟まで憎し」、「法師が憎ければ袈裟まで憎し」などといった表現もありますが、こちらも同じ意味です。

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