君は化石を手にとったことがあるかな?恐竜の化石やアンモナイトの化石は誰でも知っている有名な化石ですね。実は化石にはどの時代の生き物なのかが推定できる他に、その生き物がどんな環境で暮らしていたのかという情報も含まれているんです。その生き物が生息していた環境を推定できる化石を示相化石という。
今回は示相化石の種類や覚え方について、地学に詳しいライターオリビンと一緒に解説していきます。

ライター/オリビン

大学院では地球化学専攻だった。趣味は岩石や鉱物、化石を採集すること。人一倍化石が好きで人一倍化石に詳しい。

化石とは

恐竜やアンモナイトは現代に存在していませんが、化石という形で彼らを見たことはあると思います。化石という言葉はメディアや漫画、映画にも頻繁に出てくるため、馴染みのあるキーワードの一つですね。では、化石の定義とは具体的に何でしょうか。

化石とは大昔に生物の遺骸(いがい)が砂や泥などに埋まって何億年、何万年という長い時間をかけて地層の中に残されたものを言います。生物の遺骸だけではなく、足跡や巣穴など生物が生活していた痕跡も化石になることがあるんですよ。

化石の出来方

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普通、生物の遺骸は放っておくと腐敗して微生物に分解され、跡形もなく消えてしまいます。ではなぜ化石は何万年もの間地層の中に残っていることができるのでしょうか。

まず生物の遺骸が湖沼などの流れのない水中に沈んだとき、水底の微生物などによって肉などの柔らかい部分は食べられてなくなります。その後骨や貝殻など硬い部分が残り、時間の経過とともに砂や泥が堆積して埋もれていくのです。砂や泥に埋もれるとその中はほとんど酸素がないので微生物による分解は止まります。もっと砂などが堆積すると、骨や貝殻に含まれるカルシウムが鉱物の組成に置換されて石のように固くなるのです。さらに堆積が進むほど圧縮されて岩石のように固くなります。

遺骸が化石になった後

地球の表面はプレートの運動により大地が上昇したり(隆起)下降したり(沈降)しています。そのため、海底で化石化しても隆起によって地表に現れることがあるのです。その結果、私達は化石を見ることができます。

示相化石と示準化石

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化石は地質学的にどのような意味合いをもっているかよって示相化石と示準化石の2通りに分けることができます。示相化石はその生物がどのような環境で暮らしていたかの手がかりになる化石で、示準化石からはその生物が生息していた時代を推測することができるんです。ではそれぞれについて詳しく解説していきます。

\次のページで「示準化石とは」を解説!/

示準化石とは

古代の生物は、ある地域である時期にだけ繁栄しある時期を境に全く存在しなくなる生物がいます。このような生物はある一時期にしか存在しなかったため、この生物の化石が発掘されたときその地層の堆積時代をかなり限定することができるのです。このように、その化石が含まれている時代を特定するために役立つ化石を示準化石と言います。示準化石の基準は現代に生存していないこと、短い期間の間に形態変化していないこと、分布が広くたくさん産出することの3つです。

今回のテーマである示相化石を混同されることが多いので注意しましょう。

示準化石の例

示準化石となる生物にはアンモナイト・恐竜・有孔虫・フズリナなどがあります。三葉虫は古生代、アンモナイトや恐竜は中生代、マンモスなどの哺乳類とビカリアという巻き貝の化石は新生代を示す化石です。また、海洋に住む有孔虫などの微化石も示準化石として利用されています。

示準化石として使用できる微化石には有孔虫の他に放散虫・珪藻などもあるぞ。これらの微細な化石が示準化石として使用できるのも電子顕微鏡や放射性同位体技術の発展のおかげだな。

示相化石とは

示相化石とは

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一方、サンゴやシジミは現代にも存在しているためそれらがどのような環境で生息しているのかが分かります。化石となった生物ががどのような環境で生息していたのかを推定することのできる化石が示相化石です。

示相化石の条件

示相化石の条件として、現在も地球上に生息していることがあります。そうでなければその生物がどのような環境で暮らしているのかがわからないからです。また、プレート運動などによって実際にその生物が暮らしていた地域から遠く離れた場所に移動してしまうと、示相化石が採掘できた場所の正しい環境を推定することができないため化石が現地性であることも重要なポイントとなります。

示相化石の例

示相化石は現代にも生存している生き物なので、聞いたことのある名前の生物ばかりです。示相化石にはアサリ・ハマグリ・ホタテといった二枚貝、ブナやカエデといった植物、サンゴなどが当てはまります。

また、最近は放射性同位体の分析技術が進歩しているため、海洋のプランクトンの化石からそのプランクトンがどのような環境で生息していたかがわかってきました。いずれはこのようなプランクトンも示相化石に追加されるかもしれませんね。

\次のページで「アサリとハマグリ」を解説!/

アサリとハマグリ

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アサリは汽水域を好み、浅くて温かい海に生息しています。つまり、アサリの化石からはその場所が暖かくて浅い海であったということです。ハマグリもアサリとほぼ同じ環境に生息していることから、ハマグリの化石が産出された場所も浅くて温かい海であったことが推測できます。

ホタテ

現代のホタテは海水温が-4度から22度くらいの冷たい海に生息しています。よって、ホタテは冷たくて中浅の海であったことを示す示相化石です。ホタテの化石の分布を調べるとその地域がどのような気候変動を受けてきたのかも推測することができます。

ブナ

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葉の縁がのこぎりの刃のようにギザギザしており、葉脈の主脈から出ている側脈が並行に並んでいることが特徴のブナ。ブナはヨーロッパや北アメリカなどのやや寒冷な地域に生息していることから、ブナの化石が産出した場所は以前寒い地域であったことが分かります。

花粉

花粉は生き物ではありませんが、示相化石として使用することも可能です。花粉にはDNAが含まれているため周囲を硬い殻で覆われています。そのため、湖沼に堆積すると分解されずに化石として残ることができるのです。花粉は植物細胞なので細胞壁があります。実は細胞壁は植物の系統と密接に関連しているため、細胞壁を調べるとその花粉がどんな植物のものだったのか推定できるのです。暖かい地域と寒い地域では植生が異なっているため、花粉からある程度の環境が推測できるんですよ。また、イネなどの農作物の花粉であればいつ頃から農耕が始まったかも分析することができます。

示相化石の覚え方

示相化石と示準化石を混同する人が多いようですので、かんたんな覚え方を紹介します。

環境に優しそう(示相)と覚えると環境と示相化石をすぐ連想できるため、残りの示準化石は年代を表す化石であることが分かりますね。この覚え方をぜひ使ってみてくださいね。

化石を見つけたら示相化石かどうか見ることも大切

示相化石とはその生物が暮らしていた環境を推定することのできる化石です。示相化石としてふさわしい生物は太古から現代まで生息していること、化石ができてから地殻変動によってその場所から移動していないことが挙げられます。示相化石の代表はアサリやハマグリ、サンゴ、ブナです。これらの生物は中学校理科では常連の生物で、頻繁に試験にも登場します。

筆者も化石採集が趣味ですが、化石を採取したら必ず何の化石なのかと産地は記録するんですよ。そうすることでその場所が昔どのような環境であったかをいつでも見返せるからです。皆さんも化石を採取したらその化石からどのようなことがわかるのか調べてみましょう。

イラスト使用元:いらすとや

" /> 示相化石とはどんな化石?示準化石との違いや見分け方について地球科学専攻卒が5分でわかりやすく解説 – ページ 3 – Study-Z
地学地球地質・歴史岩石・鉱物理科

示相化石とはどんな化石?示準化石との違いや見分け方について地球科学専攻卒が5分でわかりやすく解説

アサリとハマグリ

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アサリは汽水域を好み、浅くて温かい海に生息しています。つまり、アサリの化石からはその場所が暖かくて浅い海であったということです。ハマグリもアサリとほぼ同じ環境に生息していることから、ハマグリの化石が産出された場所も浅くて温かい海であったことが推測できます。

ホタテ

現代のホタテは海水温が-4度から22度くらいの冷たい海に生息しています。よって、ホタテは冷たくて中浅の海であったことを示す示相化石です。ホタテの化石の分布を調べるとその地域がどのような気候変動を受けてきたのかも推測することができます。

ブナ

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葉の縁がのこぎりの刃のようにギザギザしており、葉脈の主脈から出ている側脈が並行に並んでいることが特徴のブナ。ブナはヨーロッパや北アメリカなどのやや寒冷な地域に生息していることから、ブナの化石が産出した場所は以前寒い地域であったことが分かります。

花粉

花粉は生き物ではありませんが、示相化石として使用することも可能です。花粉にはDNAが含まれているため周囲を硬い殻で覆われています。そのため、湖沼に堆積すると分解されずに化石として残ることができるのです。花粉は植物細胞なので細胞壁があります。実は細胞壁は植物の系統と密接に関連しているため、細胞壁を調べるとその花粉がどんな植物のものだったのか推定できるのです。暖かい地域と寒い地域では植生が異なっているため、花粉からある程度の環境が推測できるんですよ。また、イネなどの農作物の花粉であればいつ頃から農耕が始まったかも分析することができます。

示相化石の覚え方

示相化石と示準化石を混同する人が多いようですので、かんたんな覚え方を紹介します。

環境に優しそう(示相)と覚えると環境と示相化石をすぐ連想できるため、残りの示準化石は年代を表す化石であることが分かりますね。この覚え方をぜひ使ってみてくださいね。

化石を見つけたら示相化石かどうか見ることも大切

示相化石とはその生物が暮らしていた環境を推定することのできる化石です。示相化石としてふさわしい生物は太古から現代まで生息していること、化石ができてから地殻変動によってその場所から移動していないことが挙げられます。示相化石の代表はアサリやハマグリ、サンゴ、ブナです。これらの生物は中学校理科では常連の生物で、頻繁に試験にも登場します。

筆者も化石採集が趣味ですが、化石を採取したら必ず何の化石なのかと産地は記録するんですよ。そうすることでその場所が昔どのような環境であったかをいつでも見返せるからです。皆さんも化石を採取したらその化石からどのようなことがわかるのか調べてみましょう。

イラスト使用元:いらすとや

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