この記事では「鼻毛を抜く」について解説する。

端的に言えば鼻毛を抜くの意味は「相手をだます」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「鼻毛を抜く」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で日本語学を専攻。若い頃はドライブが大好きで、汚い話だが眠気覚ましによく鼻毛を抜いていた。今は前の日に十分な睡眠をとってから運転するように心掛けている。

「鼻毛を抜く」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「鼻毛を抜く」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「鼻毛を抜く」の意味は?

「鼻毛を抜く」には、次のような意味があります。

相手をだます。出し抜く。「―・かれて家産を蕩尽しても」〈魯庵・社会百面相〉

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鼻毛(はなげ)を抜・く」

文字だけを追えば、「鼻毛を抜く」(はなげをぬく)とは長くなった鼻毛を抜いてしまうことでしかありません。しかし、慣用句になると違った意味となります。それは「相手をだます、出し抜く」というものです。

「鼻毛を抜く」の語源は?

次に「鼻毛を抜く」の語源を確認しておきましょう。出典は不明ですが、鼻毛が付く慣用句は男女関係にまつわるものが多くあります。どんなものがあるか挙げてみると、

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・「鼻毛が長い」:女の色香に迷いだらしがない

・「鼻毛を伸ばす」:女に心を奪われてだらしなくなる

・「鼻毛を数える」:女が自分に好意を持っている男を思うとおりに操る

・「鼻毛を読む」:女が自分に好意を持っている男を思うとおりに操る

といったように、男が女にうつつを抜かす言葉ばかりです。今も昔も男は女に目がないということですよね。

「鼻毛を抜く」の使い方・例文

「鼻毛を抜く」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.突如ライバル会社が新料金プランを発表して、わが社としては鼻毛を抜かれた気分だ。
2.あの子に鼻毛を抜かれているようでは、君もまだまだ女というものをわかっていないな。
3.彼女に関してはいろいろな噂が立っているようだが、ああ見えて彼女に限って男をたぶらかして鼻毛を抜くなんてことはありえない。

「鼻毛」の入った慣用句ですので、女性と男性のことにふれた例文2と3が「鼻毛を抜く」を使ったものとしてはふさわしいと言えます。しかし、例文1のように、単に相手をだましたりあざむいたりするという意味で使ってもかまいません。

また、例文3のような「鼻毛を抜く」というそのものの形よりも、例文1と2の「鼻毛を抜かれる」といった受け身の形の方が多く見られます。おそらくは、相手をだます方はあまりそのことを口に出さないのに対して、だまされた方は声を大してそのことを訴える必要があるからではないでしょうか。

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「鼻毛を抜く」の類義語は?違いは?

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ところで、「鼻毛を抜く」の類義語は何でしょうか。違いとともに見ていきましょう。

「足を掬う」

足を掬う」(あしをすくう)とは、「相手の隙をついて失敗させる」という意味の慣用句です。相手をおとしめるという意味や「足を掬われる」という受け身の形で使われることが「鼻毛を抜く」と同じですが、「鼻毛を抜く」のように相手をだますというよりは、相手の隙をつくということを表します。

ところで、以前の文化庁の調査では、「足をすくわれる」よりも「足元をすくわれる」を正しいと思っていた人が全体の3分の2ほどいました。そもそもこの言葉は立っている人の足を払って倒してしまうことが由来です。柔道や相撲をイメージすると良いでしょう。よって、足が地面に付いている付近のことである「足元」をなぎ払おうとしても人を倒せません。辞書も「足を掬う」での掲載がほとんどです。しかし、「足元を掬う」が正しいと思って使っている人が大半を占めている状況では、もはや誤用とは簡単に片付けられないでしょう。

「鼻毛を抜く」の対義語は?

さらに、「鼻毛を抜く」の対義語は何でしょうか。

「口車に乗る」「一杯食わされる」

「鼻毛を抜く」という慣用句には「だます、あざむく」という意味があると前述しました。ならば、対義語には「だまされる、あざむかれる」という意味のものがふさわしいでしょう。

口車に乗る」(くちぐるまにのる)と「一杯食わされる」(いっぱいくわされる)には、どちらも「だまされる」という意味があります。さらに、「口車に乗せる」と「一杯食わす」にすればどちらも「だます」という意味です。つまり、2つとも「鼻毛を抜く」の類義語になりえるということですよね。

「鼻毛を抜く」の英訳は?

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では、「鼻毛を抜く」は英語で何と言うでしょうか。

「deceive」「cheat」

単に「鼻毛を抜く」を英訳すれば「pull out nostril hairs」となります。しかし、それはこの記事で意図するものではありません。

「鼻毛を抜く」という慣用句の意味は「だます、あざむく」です。これを英語では「deceive」「cheat」「play a dirty trick」などと言います。eスポーツの世界で、ゲームの製作者の意図しない方法でプレーヤーが不正を働くことを「チート(行為)」と言いますが、まさにこのチートこそがだますという意味の「cheat」です。

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「鼻毛を抜く」を使いこなそう

この記事では「鼻毛を抜く」の意味・使い方・類語などを説明しました。

ムダ毛やヒゲ、そして鼻毛を処理することはめんどくさいですよね。人によってはワックスやレーザーでキレイに脱毛処理したりなどさまざまです。しかし、鼻毛をゴッソリとなくしてしまうのは得策ではありません。鼻毛には、鼻の穴の中の乾燥を防いだり、呼吸時に異物を吸い込まないようにして感染症を防ぐなどの重要な役割があります。そんな鼻毛ですが、長いままにしたり伸ばしたりすると「女にだらしない」と思われ、数えられたり読まれたりすると「女の意のままに操られる」という何だか気の毒なものです。そして、「鼻毛を抜かれる」ことが「人にだまされる」ことになるのは、鼻毛の立場からすればたまったもんじゃありません。そう思えば、鼻毛ですらもいとおしく思えるのではないでしょうか。見た目や清潔感も大事ですが、「鼻毛を抜く」ことを少しは考えた方がいいということです。

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国語言葉の意味

「鼻毛を抜く」の意味や使い方は?例文や類語を雑学大好きwebライターがわかりやすく解説!

この記事では「鼻毛を抜く」について解説する。

端的に言えば鼻毛を抜くの意味は「相手をだます」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「鼻毛を抜く」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で日本語学を専攻。若い頃はドライブが大好きで、汚い話だが眠気覚ましによく鼻毛を抜いていた。今は前の日に十分な睡眠をとってから運転するように心掛けている。

「鼻毛を抜く」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「鼻毛を抜く」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「鼻毛を抜く」の意味は?

「鼻毛を抜く」には、次のような意味があります。

相手をだます。出し抜く。「―・かれて家産を蕩尽しても」〈魯庵・社会百面相〉

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鼻毛(はなげ)を抜・く」

文字だけを追えば、「鼻毛を抜く」(はなげをぬく)とは長くなった鼻毛を抜いてしまうことでしかありません。しかし、慣用句になると違った意味となります。それは「相手をだます、出し抜く」というものです。

「鼻毛を抜く」の語源は?

次に「鼻毛を抜く」の語源を確認しておきましょう。出典は不明ですが、鼻毛が付く慣用句は男女関係にまつわるものが多くあります。どんなものがあるか挙げてみると、

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