小胞体には3種類が存在する!バイオ系ライターがそれぞれの役割をわかりやすく解説!
小胞体は細胞内でのタンパク質合成にとって大変重要な役割をもっている。タンパク質が合成されてから機能を完全に持つまでにどのような加工を受けるのか知っておくことは重要です。ゴルジ体とともに小胞体内部で行われている現象についてもしっかりと学習しておこう。小胞体の種類とその役割の違いについても見落とさず整理しておくことが大切です。
大学院で遺伝子工学を専攻していたバイオ系ライターこざよしと一緒に解説していきます。
ライター/こざよし
遺伝子工学を中心にマリンバイオテクノロジーを大学院まで専攻したバイオ系ライター。バイオサイエンス、生化学、化学分野のトピックスをわかりやすく解説する。
小胞体の働き
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小胞体とは、細胞の中でタンパク質合成のメインの場となる細胞小器官です。核で転写されたメッセンジャーRNA(mRNA)の核酸配列にしたがい、リボソームではアミノ酸が次々と連結されて、遺伝子のコドンに対応したアミノ酸配列がつながっていきます。リボソームはある仕組みによって小胞体の膜に付着し、合成されたタンパク質を小胞体内部へと送り出していくのです。小胞体の役割について解説していきます。
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タンパク質合成の場
メッセンジャーRNAからタンパク質を合成するのはリボソームの働きがあってこそです。そのリボソームの働く場所が小胞体の膜となります。小胞体には、リボソームが無数に付着している部位があり、その場所ではタンパク質がどんどん合成されているのです。合成されたタンパク質は膜に付着するリボソームから小胞体膜を通過して内部へと送られます。
小胞体内部では、合成されたばかりのひも状のタンパク質がそのアミノ酸配列の性質にしたがって丸まったりシート状になったりと、立体構造を形成していくのですが、紐状のままのタンパク質はこわれやすく、立体構造を形成することでより頑丈になるのです。この立体構造をとるにはジスルフィド結合と呼ばれる結びつきがとても重要な働きを持っています。
さらに、小胞体内部ではタンパク質のアミノ酸側鎖に対する糖鎖付加、アセチル化、リン酸化、脂質付加といった化学修飾も行われ、この修飾はタンパク質が正常な働きを行うためには必要な加工なのです。これらのタンパク質加工のプロセスを翻訳後修飾と呼びます。
カルシウム貯蔵
細胞内では、カルシウムイオンが様々な細胞機能を調整しています。カルシウムイオンの濃度変化が神経伝達物質の放出、シナプス可塑性の誘導などの生理機能に関わっている他、細胞死にも関与していますが、そのカルシウムイオンの貯蔵庫となるのが、細胞内では小胞体とミトコンドリアです。小胞体の膜に存在するカルシウムポンプと呼ばれるタンパク質が、カルシウムイオンを取り込むことで小胞体内部にはカルシウムイオンが高濃度で貯蔵されています。
小胞体内部に貯蔵されたカルシウムイオンが、小胞体の膜にある放出チャンネルを通じて細胞内へと一気に放出されると、それが信号となり、筋収縮が起こったり神経情報伝達が引き起こされたりしまが、このカルシウムイオン放出も他の刺激によって引き起こされるわけですから、カルシウムイオンはセカンドメッセンジャーとも呼ばれているのです。
3種類の小胞体の形
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小胞体の役割について先に解説しましたが、次は小胞体の形そのものに焦点を当ててみましょう。細胞には核がありますが、その核膜も他のオルガネラ同様に二重膜から成り立っています。この二重膜の外膜が、小胞体とつながっているのです。小胞体は核を包むようにして何層にも折れ曲がりながら大きく広がり、細胞内へと伸びています。さらに、小胞体は場所によって形と役割が異なっており、それぞれ粗面小胞体、移行型小胞体、滑面小胞体と呼ばれているのです。
粗面小胞体
粗面小胞体は、その名の通り粗い面が特徴です。顕微鏡写真でその姿をみると、ブツブツとしたものがびっしりと膜の外側についています。このブツブツのひとつひとつが実はリボソームなのです。リボソームはタンパク質を合成する装置ですから、粗面小胞体の主な役割というのはタンパク質の合成の場であるということになります。粗面小胞体の存在部位は核に近い場所です。
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