この記事では「気違いに刃物」について解説する。

端的に言えば、「気違いに刃物」の意味は「非常に危険であること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

学習塾で国語講師を4年間担当し、契約書校正業務を3年以上経験している、ミリーを呼んです。一緒に「気違いに刃物」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/持木ミリー

今回の記事を担当するのは、塾講師として国語などを4年間担当し、その後契約書作成や校正に3年以上携わっている、Webライターのミリー。間違った日本語に目ざといミリーが、慣用句の意味について、分かりやすく解説していく。

「気違いに刃物」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「気違いに刃物」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「気違いに刃物」の意味は?

「気違いに刃物(きちがいにはもの)」には、次のような意味があります。

非常に危険であることのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「気違いに刃物」

「気違いに刃物」の意味は、「非常に危険であること」です。まず、「気違い」というのは「気狂い」とも書き、以下のような意味を持っています。

 精神状態が普通でなく、正常ではない言動をすること。気が狂うこと。

(多く他の語の下に付いて)ある一つのことに異常に熱中すること。また、その人。マニア。「野球―」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「気違い」

「気違い」の意味は、「気が狂うこと。」「ある一つのことに異常に熱中すること。また、その人。」です。今回は、「気違いに刃物」と言っているので、今回の「気違い」の意味は「」を表しているとすれば、意味が通りますね。

「気が狂っている人」や、「異常に熱中する人」に刃物を渡したらどうなるでしょうか。後者の「異常に熱中する人」に刃物を渡すなら、特段事件は起こらないかもしれません。ですが、前者の「気が狂っている人」に刃物を渡したら…。刃物を振り回して来たり、刺してくる可能性もなくはないですね。とても危険です。そこから転じて、「気違いに刃物」が「非常に危険であること」という意味になりました。

「気違い」という言葉は使われているのか?

さて、先ほど「気違い」の言葉の意味について説明しました。ですが、この「気違い」という言葉、今はあまり使われていません。というのも、「気違い」は「差別用語」としてとらえられることがあったからです。

「気違いに刃物」という言葉そのものも、ことわざかるたや、いろはかるた等に載らなくなったそうで、「気違いに刃物」という言葉が一般的に用いられることは少なくなりました。ですから、「気違い」または「気違いに刃物」という言葉を使う時には、「差別用語」と思われる可能性があることを留意しておきましょう。

「気違いに刃物」の使い方・例文

「気違いに刃物」は、あまり積極的に使われる言葉ではないと説明しましたが、その使い方について例文を使って見ていきましょう。

1.ただでさえ頭にきている相手に、煽るような質問をするなんて、気違いに刃物だ。
2.いつも通る道に凶暴な犬が寝ているが、もしも尻尾を踏んでしまったりしたら、気違いに刃物を渡すようなものだ。

「気違いに刃物」の意味は、「非常に危険であること」ですね。ただでさえ危険な「気違い」に、これまた危険な「刃物」を渡すということで、「危険」に「危険」を重ねています。そのため、使うとしたら上記のようなシチュエーションで使われるでしょう。

「気違いに刃物」の類義語は?違いは?

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さて、ここからは「気違いに刃物」という言葉の類義語を見ていきましょう。

「虎の尾を踏む」

「気違いに刃物」という言葉の類義語として、「虎の尾を踏む」という言葉が挙げられます。意味は、以下の通りです。

《「易経」履卦から》非常に危険なことをすることのたとえ。虎の口へ手を入れる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「虎の尾を踏む」

「虎の尾を踏む」の意味も、「非常に危険なことをすること」です。人間としては怖くて近づきがたい「虎」の、「尾を踏む」ということは、ただでさえ危険な虎が暴れる可能性があり、非常に危険ですね。よって、「気違いに刃物」という言葉の類義語と言えるでしょう。

「猫に鰹節」

また、「猫に鰹節」も、「気違いに刃物」の類義語として挙げられます。意味は、以下の通りです。

 猫のそばに、その好物の鰹節を置くこと。油断できないこと、危険であることのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「猫に鰹節」

「猫に鰹節」の意味は、「油断できないこと、危険であること。」です。確かに、猫の大好物である鰹節を猫のそばに置いたら、すぐ食べられそうで油断できないですよね。「気違いに刃物」とは、「危険」の種類が異なりますが、どちらの言葉も、「危険であること」という意味になるのは、共通しています。

「気違いに刃物」の類似パターン語は?

さて、「気違いに刃物」という言葉の類義語を紹介してきましたが、ここで「類似パターン語」について、いくつか紹介したいと思います。「気違いに刃物」は、「危険」に「危険」を重ねて追い打ちをかけていますよね。同様に、追い打ちをかけるようなことわざや、故事成語は他にも存在します。

\次のページで「「幽霊の浜風に逢ったよう」」を解説!/

「幽霊の浜風に逢ったよう」

類似パターン語の1つとして、「幽霊の浜風に逢ったよう」という言葉が挙げられます。意味は、以下の通りです。

1 幽霊が浜辺の強い風にあおられたように、元気のないさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「幽霊の浜風に逢ったよう」

「幽霊の浜風に逢ったよう」の意味は、「元気のないさま」です。元々元気のない(生気のない)幽霊が、浜辺の強い風(浜風)に吹かれることで、さらに力なく揺れる様子を、「元気のないさま」と表しています。

「目の上のたんこぶ」

追い打ちをかける「類似パターン語」として、「目の上のたんこぶ」も挙げられます。意味は以下の通りです。

 邪魔なもの、うっとおしいものなどを意味する表現。目の上にこぶができるととりわけ邪魔であることから作られたことわざ。「目の上の瘤」とも言う。

出典:実用日本語表現辞典「目の上のたんこぶ」

「目の上のたんこぶ」の意味は、「邪魔なもの、うっとおしいもの」です。目の上に何かあると、場所が場所だけにかなり邪魔ですが、あるものがたんこぶともなると、視界の邪魔になる上に痛みもあるため、「邪魔」に追い打ちをかけた言葉と言えるでしょう。

「気違いに刃物」の対義語は?

ここからは、「気違いに刃物」の対義語を見ていきましょう。「安心」や「安全」、「信頼」といった意味を持つものが「対義語」として挙げられます。

「転ばぬ先の杖」

「安心」、または「慎重」ということで、「転ばぬ先の杖」が「気違いに刃物」の対義語として挙げられます。意味は、以下の通りです。

前もって用心していれば、失敗することがないというたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「転ばぬ先の杖」

「転ばぬ先の杖」の意味は、「前もって用心していれば、失敗することがない。」という意味です。「気違いに刃物」が「ただでさえ危険なものに危険なものを与えて追い打ちをかける」という意味に対し、「転ばぬ先の杖」では、慎重に用心しています。そのため、対義語として挙げました。

思い切りも大事ですが、何事もできるだけ用心して、前準備をしておくことが大切ですね。

\次のページで「「餅は餅屋」」を解説!/

「餅は餅屋」

「安心」、「信頼」という意味で、「餅は餅屋」という言葉も紹介します。意味は以下の通りです。

餅は餅屋のついたものがいちばんうまい。その道のことはやはり専門家が一番であるというたとえ。餅屋は餅屋。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「餅は餅屋」

多少派生していますが、「餅は餅屋」という言葉も、「気違いに刃物」の対義語として挙げました。「その道のことはやはり専門家が一番である」という意味です。まさに「安心」、「信頼」を意味する言葉なので、危険の塊である「気遣いに刃物」の対義語になりますね。

何かサービスを依頼する時は、その道のプロに頼むのが、一番安心できて信頼できるということですね。

「気違いに刃物」の英訳は?

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最後に、「気違いに刃物」の英訳についても見ていきましょう。

"sword to an insane person"

「気違いに刃物」の英訳は、"sword to an insane person"です。"sword"は、「剣」、「刃」という意味の単語、"insane"は、「狂人」、「風狂」という意味の単語なので、"sword to an insane person"で「狂った人への刃」となります。

日本語の慣用表現や比喩表現は、直接英語に翻訳すると意味が通らないことが多いですが、「気違いに刃物」は比較的分かりやすく英訳できる言葉ですね。

「気違いに刃物」などのことわざを使いこなそう

この記事では「気違いに刃物」の意味・使い方・類語・対義語などを説明しました。「気違い」という言葉は、なかなか使いづらいですが、似た意味の言葉や、似たパターンの言葉、反対の意味の言葉などについても紹介しています。

これを機に色々なことわざ・故事成語などを調べてみると楽しいですよ。私も、今回の記事を書く中で初めて知った言葉もあり、知識欲を満たされ、楽しかったです。

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国語言葉の意味

「気違いに刃物」の意味や使い方は?例文や類語を元塾講師のWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「気違いに刃物」について解説する。

端的に言えば、「気違いに刃物」の意味は「非常に危険であること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

学習塾で国語講師を4年間担当し、契約書校正業務を3年以上経験している、ミリーを呼んです。一緒に「気違いに刃物」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/持木ミリー

今回の記事を担当するのは、塾講師として国語などを4年間担当し、その後契約書作成や校正に3年以上携わっている、Webライターのミリー。間違った日本語に目ざといミリーが、慣用句の意味について、分かりやすく解説していく。

「気違いに刃物」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「気違いに刃物」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「気違いに刃物」の意味は?

「気違いに刃物(きちがいにはもの)」には、次のような意味があります。

非常に危険であることのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「気違いに刃物」

「気違いに刃物」の意味は、「非常に危険であること」です。まず、「気違い」というのは「気狂い」とも書き、以下のような意味を持っています。

 精神状態が普通でなく、正常ではない言動をすること。気が狂うこと。

(多く他の語の下に付いて)ある一つのことに異常に熱中すること。また、その人。マニア。「野球―」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「気違い」

「気違い」の意味は、「気が狂うこと。」「ある一つのことに異常に熱中すること。また、その人。」です。今回は、「気違いに刃物」と言っているので、今回の「気違い」の意味は「」を表しているとすれば、意味が通りますね。

「気が狂っている人」や、「異常に熱中する人」に刃物を渡したらどうなるでしょうか。後者の「異常に熱中する人」に刃物を渡すなら、特段事件は起こらないかもしれません。ですが、前者の「気が狂っている人」に刃物を渡したら…。刃物を振り回して来たり、刺してくる可能性もなくはないですね。とても危険です。そこから転じて、「気違いに刃物」が「非常に危険であること」という意味になりました。

「気違い」という言葉は使われているのか?

さて、先ほど「気違い」の言葉の意味について説明しました。ですが、この「気違い」という言葉、今はあまり使われていません。というのも、「気違い」は「差別用語」としてとらえられることがあったからです。

「気違いに刃物」という言葉そのものも、ことわざかるたや、いろはかるた等に載らなくなったそうで、「気違いに刃物」という言葉が一般的に用いられることは少なくなりました。ですから、「気違い」または「気違いに刃物」という言葉を使う時には、「差別用語」と思われる可能性があることを留意しておきましょう。

「気違いに刃物」の使い方・例文

「気違いに刃物」は、あまり積極的に使われる言葉ではないと説明しましたが、その使い方について例文を使って見ていきましょう。

1.ただでさえ頭にきている相手に、煽るような質問をするなんて、気違いに刃物だ。
2.いつも通る道に凶暴な犬が寝ているが、もしも尻尾を踏んでしまったりしたら、気違いに刃物を渡すようなものだ。

「気違いに刃物」の意味は、「非常に危険であること」ですね。ただでさえ危険な「気違い」に、これまた危険な「刃物」を渡すということで、「危険」に「危険」を重ねています。そのため、使うとしたら上記のようなシチュエーションで使われるでしょう。

「気違いに刃物」の類義語は?違いは?

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さて、ここからは「気違いに刃物」という言葉の類義語を見ていきましょう。

「虎の尾を踏む」

「気違いに刃物」という言葉の類義語として、「虎の尾を踏む」という言葉が挙げられます。意味は、以下の通りです。

《「易経」履卦から》非常に危険なことをすることのたとえ。虎の口へ手を入れる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「虎の尾を踏む」

「虎の尾を踏む」の意味も、「非常に危険なことをすること」です。人間としては怖くて近づきがたい「虎」の、「尾を踏む」ということは、ただでさえ危険な虎が暴れる可能性があり、非常に危険ですね。よって、「気違いに刃物」という言葉の類義語と言えるでしょう。

「猫に鰹節」

また、「猫に鰹節」も、「気違いに刃物」の類義語として挙げられます。意味は、以下の通りです。

 猫のそばに、その好物の鰹節を置くこと。油断できないこと、危険であることのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「猫に鰹節」

「猫に鰹節」の意味は、「油断できないこと、危険であること。」です。確かに、猫の大好物である鰹節を猫のそばに置いたら、すぐ食べられそうで油断できないですよね。「気違いに刃物」とは、「危険」の種類が異なりますが、どちらの言葉も、「危険であること」という意味になるのは、共通しています。

「気違いに刃物」の類似パターン語は?

さて、「気違いに刃物」という言葉の類義語を紹介してきましたが、ここで「類似パターン語」について、いくつか紹介したいと思います。「気違いに刃物」は、「危険」に「危険」を重ねて追い打ちをかけていますよね。同様に、追い打ちをかけるようなことわざや、故事成語は他にも存在します。

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