今回のテーマは「多細胞生物」です。

生物にはいろいろな分類がある。その大きな分類の1つが「単細胞生物」と「多細胞生物」です。単にはただひとつ・複雑ではないという意味が、多には多くのものという意味がある。このことから予想できるように単細胞生物は1つの細胞からできた生き物で多細胞生物はたくさんの細胞からできた生き物です。

ではそんな多細胞生物について科学館職員のたかはしふみかが解説します。

ライター/たかはし ふみか

最近、ウサギを飼うことになった動物好きのリケジョ。大学院時代の研究では微生物を培養したりしていた。日々勉強、動物についてももっと知りたい科学館職員。

多細胞生物とは?

多細胞生物とは?

image by Study-Z編集部

最初に簡単に多細胞生物がどんな生物かを確認しましょう。

多細胞生物とは多くの細胞で体が作られている生物のこと、反対に1つの細胞でできている生物を単細胞生物といいます。単細胞生物は生きるのに必要な器官がすべて1つの細胞に収まっている生物です。細胞ひとつでその生き物となります。一方で多細胞生物はいろいろな器官の役割を果たす細胞が集まっているのです。ヒトには頭、口、消化器官などいろいろな器官がありますね。その一つ一つが細胞が集まってできています。

多細胞生物にはどんな生き物が分類されているのでしょうか。ヒト、犬、猫など周りにいる多くの生物がこの多細胞生物に分類されています。というよりも動植物はほぼみんな多細胞生物です。そして菌類には多細胞生物と単細胞生物の両方がいます。

単細胞生物についてはこちらの記事を参考にしてください。

単細胞生物と多細胞生物、先に現れたのはどっち?

単細胞生物と細胞生物、先に誕生したのはどちらでしょうか。答えは単細胞生物で、38億年ほど前に誕生しました。そして単細胞生物が多細胞生物へと進化していったのです。多細胞生物が生まれたのは10億から6億年ほど前のこと。単細胞が多細胞になるのには25億年以上もの長い時間がかかっているのです。単細胞生物は一体どうやって多細胞生物に進化したのでしょうか。そのキーワードが「酸素」です。

生命に必要なもの、と言えば酸素ですね。しかし酸素は細胞を傷つけることもあるのです。人間も高濃度の酸素を吸いすぎると酸素中毒となってしまいます。そこで細胞同士が集まって酸素を共有しあうことで、その影響を減らすようになったのです。

単細胞は細胞分裂によって増え、細胞ひとつですべての機能を果たしています。しかし多細胞生物の場合、細胞それぞれが専門的な機能を持っているのです。短時間で増殖できるという面では単細胞生物の方が有利ですが、多細胞生物は複雑な機能を持つことで生存を有利なものとしました。

これはどっち?単細胞か多細胞かちょっと迷う生物

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大きく複雑な体の生き物はまず間違いなく多細胞生物です。しかし、顕微鏡で見る小さな生物が単細胞生物なのか多細胞か迷ったことがある人も多いでしょう。というわけでここで間違いやすい生物のご紹介です。

1.ゾウリムシ

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中学校の理科の教科書によく登場するゾウリムシ、単細胞が多細胞か悩む生物の代表と言ってよいでしょう。17世紀末にレーウェンフックに発見されたゾウリムシ、英語ではslipper animalculeといいます。スリッパを直訳して草履なのですね。

ゾウリムシは単細胞生物で、分裂によって増えます。泳ぐことができるため単細胞生物の中では移動範囲が広い生き物です。

\次のページで「2.海ブドウ」を解説!/

2.海ブドウ

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海ブドウとは暖かい海に生息する海藻の一種で、「クビレズタ」のことです。沖縄のイメージを持っている人も多いでしょう。栄養たっぷりの海ブドウですが実は以外胃も単細胞生物。1m以上育つこともありますが、それでもたった一つの細胞でできているというから驚きですね。

3.クラミドモナス

池や川で意外と簡単に見つけることのできるクラミドモナスこれも単細胞生物です。楕円形の真核生物で、2本の鞭毛をもっています。大きさは10μm、約0.01㎜です。葉緑体を持っていて、効率よく光合成できるよう鞭毛で明るい場所へと泳いでいきます。ちなみに、このように生物が光に反応し移動することを「走光性」といい、光によって行くことを正の走光性というので覚えておきましょう。

4.アメーバ

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多くのアメーバは0.1㎜程度と小さいですが、大きなものは1㎜を超える個体もあります。分裂によって増殖し、仮足(かそく)で移動する生物です。このアメーバも単細胞生物になります

病気の原因となることもあり、例えばコンタクトレンズや保存液についたアメーバによって失明する、という事例があります。コンタクトを使う人は注意が必要ですね。

5.ミドリムシ

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鞭毛虫(細胞に生えた毛、鞭毛で移動する生物)の一種、ミドリムシ。大きさは0.1㎜以下と小さく、2本の鞭毛による鞭毛運動で動く一方で葉緑体を持つという動物と植物の両方の特徴を持つ単細胞生物です(ただし1本の鞭毛は短くて見えない)。水田などで見ることができます。

栄養が豊富という事でサプリメントや野菜ジュースなどにも使われているミドリムシ。またバイオ燃料への活用も期待されています。

6.ミジンコ

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ミジンコは多細胞生物です。微生物と言えばミジンコ、という人も多いでしょう。しかしミジンコは大型なものは5㎜近くにもなり、肉眼でも見れます。ただし微生物は1㎜以下としつつ、1㎜以上のミドリムシなど例外も多く、ミジンコが微生物かどうかという定義はあいまいです。

ミジンコは甲殻類であり、意外にもエビやカニの仲間。丸っこい体で、ちょっとかわいいフォルムをしていますね。

6.アオミドロ

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教科書で写真で見たことがあるかもしれない多細胞生物、アオミドロ。糸のような形状をしています。直径は20~60μm程、大きいものでは200μm以上にもなるのです。細胞壁、葉緑体を持っています。

海ブドウが単細胞であるのに対し、アオミドロは多細胞生物です

\次のページで「これはどっち?ユードリナとボルボックス」を解説!/

これはどっち?ユードリナとボルボックス

単細胞生物と多細胞生物を紹介してきましたが、単細胞生物同士が集まっている生物もいます。ユードリナやボルボックスは「細胞群体(定数群体)」といって無性生殖で増えた個体同士が細胞が集合した状態で生存しているのです。この細胞群体は単細胞が多細胞へと進化する過程の途中と考えられています。

ユードリナはクラミドモナスの仲間が進化したもので、和名はタマヒゲマワリです。ユードリナは16個から32個の細胞が集まって細胞群体を形成しています。

一方、ボルボックスもクラミドモナスの仲間が進化したものです。しかし細胞群体を作る数は大きく異なり、500以上の細胞が集まって細胞群体を作っています。和名ではオオヒゲマワリ。細胞群体を単細胞の集まりとしている参考書もありますが、ボルボックスは多細胞生物として扱うのが一般的です。なおこのボルボックス、面白いことに普段は無性生殖で繁殖していますが、生存しづらくなると有性生殖に切り替わります。

役割分担で複雑な構造、多細胞

38億年ほど前に地球に単細胞生物が登場しました。初期は単純なつくりの生き物しかいなかったのが多細胞生物へと進化し、より複雑な生物が誕生したのです。多様性を身に着けたことで生物はより生き残りやすくなりました。

単細胞化多細胞で迷う生物と言えばゾウリムシやアメーバ、ミジンコなどでしょう。どれが単細胞生物でどれが多細胞生物課は図鑑などでしっかりと確認してくださいね。

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理科生物生物の分類・進化細胞・生殖・遺伝

3分で簡単「多細胞生物」!単細胞・多細胞か迷いやすい生物について科学館職員が説明

今回のテーマは「多細胞生物」です。

生物にはいろいろな分類がある。その大きな分類の1つが「単細胞生物」と「多細胞生物」です。単にはただひとつ・複雑ではないという意味が、多には多くのものという意味がある。このことから予想できるように単細胞生物は1つの細胞からできた生き物で多細胞生物はたくさんの細胞からできた生き物です。

ではそんな多細胞生物について科学館職員のたかはしふみかが解説します。

ライター/たかはし ふみか

最近、ウサギを飼うことになった動物好きのリケジョ。大学院時代の研究では微生物を培養したりしていた。日々勉強、動物についてももっと知りたい科学館職員。

多細胞生物とは?

多細胞生物とは?

image by Study-Z編集部

最初に簡単に多細胞生物がどんな生物かを確認しましょう。

多細胞生物とは多くの細胞で体が作られている生物のこと、反対に1つの細胞でできている生物を単細胞生物といいます。単細胞生物は生きるのに必要な器官がすべて1つの細胞に収まっている生物です。細胞ひとつでその生き物となります。一方で多細胞生物はいろいろな器官の役割を果たす細胞が集まっているのです。ヒトには頭、口、消化器官などいろいろな器官がありますね。その一つ一つが細胞が集まってできています。

多細胞生物にはどんな生き物が分類されているのでしょうか。ヒト、犬、猫など周りにいる多くの生物がこの多細胞生物に分類されています。というよりも動植物はほぼみんな多細胞生物です。そして菌類には多細胞生物と単細胞生物の両方がいます。

単細胞生物についてはこちらの記事を参考にしてください。

単細胞生物と多細胞生物、先に現れたのはどっち?

単細胞生物と細胞生物、先に誕生したのはどちらでしょうか。答えは単細胞生物で、38億年ほど前に誕生しました。そして単細胞生物が多細胞生物へと進化していったのです。多細胞生物が生まれたのは10億から6億年ほど前のこと。単細胞が多細胞になるのには25億年以上もの長い時間がかかっているのです。単細胞生物は一体どうやって多細胞生物に進化したのでしょうか。そのキーワードが「酸素」です。

生命に必要なもの、と言えば酸素ですね。しかし酸素は細胞を傷つけることもあるのです。人間も高濃度の酸素を吸いすぎると酸素中毒となってしまいます。そこで細胞同士が集まって酸素を共有しあうことで、その影響を減らすようになったのです。

単細胞は細胞分裂によって増え、細胞ひとつですべての機能を果たしています。しかし多細胞生物の場合、細胞それぞれが専門的な機能を持っているのです。短時間で増殖できるという面では単細胞生物の方が有利ですが、多細胞生物は複雑な機能を持つことで生存を有利なものとしました。

これはどっち?単細胞か多細胞かちょっと迷う生物

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大きく複雑な体の生き物はまず間違いなく多細胞生物です。しかし、顕微鏡で見る小さな生物が単細胞生物なのか多細胞か迷ったことがある人も多いでしょう。というわけでここで間違いやすい生物のご紹介です。

1.ゾウリムシ

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中学校の理科の教科書によく登場するゾウリムシ、単細胞が多細胞か悩む生物の代表と言ってよいでしょう。17世紀末にレーウェンフックに発見されたゾウリムシ、英語ではslipper animalculeといいます。スリッパを直訳して草履なのですね。

ゾウリムシは単細胞生物で、分裂によって増えます。泳ぐことができるため単細胞生物の中では移動範囲が広い生き物です。

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