この記事では「推敲」について解説する。

端的に言えば推敲の意味は「文章を練りなおすこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「推敲」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「推敲」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「推敲」の意味や語源・使い方まとめ

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推敲(すいこう)」は、良く知られている故事成語ですから、学校で習った人も少なくないでしょう。ビジネスシーンでも使われる言葉ですから、正しい使い方を覚えておいた方がいいですね。それでは早速「推敲」の意味や語源・使い方を説明していきます。

「推敲」の意味は?

まず初めに、「推敲」の正確な意味や使い方を辞書からの引用で確かめてみましょう。「推敲」には、次のような意味があります。

1.文章の字句を何度も練り直すこと。

出典:新明解国語辞典(三省堂)「推敲」

2.詩文の字句や文章を十分に吟味して練りなおすこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「推敲」

「推敲」は、文章や詩などをより良くするために字句を色々考えて何度も練り直すことです。現在では、レポートや提案書に対して使われることも多いため、ビジネスシーンでもしばしば耳にすることがあるでしょう。自分で書いた文を何度も読み返し、改善し、磨き上げると言うことです。

「推敲」の語源は?

次に「推敲」の語源を確認しておきましょう。ところで、「推」は押す「敲」は叩くと言う意味の漢字なのですが、いったいどうして、「推敲」が文章を何度も練りなおすと言う意味になったのでしょう。「推敲」は故事成語であり、由来は中国の「唐詩紀事」の一節にあります。

昔、唐の時代に賈島と言う詩人が、科挙の試験を受けるため長安にやってきた時のことです。長安の街で、賈島は馬に乗りながら詩を作っていました。そして「鳥は宿る地中の樹 僧は推す月下の門」と言う一句を思いつきます。ですが、賈島は「推す(おす)」を「敲く(たたく)」とした方が良いような気がしてきました。賈島は「推す」と「敲く」がどちらにした方が、良い詩になるか悩みました。ところが、考えにふけっているうちに、賈島は長安の知事である韓愈の行列に突っ込んでしまったのです。賈島はすぐに捕まり、罰せられるところでしたが、行列に突っ込んでしまった理由を聞いた韓愈は漢詩の大家であったため、賈島の失敗を許し、「敲く」の方が良い詩になると教えてくれたのでした。のちに、賈島は韓愈の弟子となり、詩人として大成しました。

このエピソードから、文章や詩を吟味し練り直すことを「推敲」と言うようになったのです。

\次のページで「「推敲」の使い方・例文」を解説!/

「推敲」の使い方・例文

それでは、「推敲」の使い方を実際の例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.苦労して構成を考え、書き上げた後も推敲を重ねた卒業論文は、めでたくA評価をもらうことができた。

2.その小説家は、締め切り日を過ぎても納得いくまで原稿を推敲するので、編集者はいつもハラハラしている。

3.あなたの作文は感情表現が単調で伝わらないから、しっかり推敲する必要がある。

このように、「推敲」は自分自身で文章を何度も練り直し改善していくと言う意味で用いられます。文章を自分で読み、しっかり伝わるか、もっと適切な表現はないかと、改善しようとすることです。ビジネスシーンでは、レポートやスピーチ文、企画書などで同じように「推敲」を使うことができます。学校などでは作文や論文で良く使われるでしょう。

「推敲」の類義語は?違いは?

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「推敲」の類義語には「試行錯誤」があげられます。

「試行錯誤」

試行錯誤」の読み方は「しこうさくご」です。良く使われる言葉なので、知っている人も多いでしょう。「試行錯誤」は、物事をするとき、何度も試みと失敗を繰り返しながら適切な方法を見いだしていくことです。

文章を作る事に対しても使うことができ、色々と語句を試し、良いものにしていくようすを表現できますので、「推敲」の類義語としてふさわしいでしょう。「推敲」と「試行錯誤」の違いは、「推敲」が文章や詩句にだけ用いられるのに対し、「試行錯誤」はどんな物事にも使うことができる言葉ということです。

\次のページで「「推敲」の対義語は?」を解説!/

「推敲」の対義語は?

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「推敲」の対義語には「杜撰」が挙げられます。

「杜撰」

杜撰(ずさん)」とは、 詩や文章に、典拠の確かでないことを書くことや、 物事がいいかげんで、誤りが多いことです。「杜撰」も中国の故事成語ですが、「杜」は宋の杜黙 (ともく) と言う詩人のことで、「撰」は詩文を作ることを意味します。

杜黙の詩は、格式に合わないものが多かったことから、物事がいい加減で間違いが多いことを「杜撰」と言うようになりました。このことからも「杜撰」は「推敲」の対義語としてもふさわしいと言えるでしょう。また、「杜撰」は、もともとは文章や詩歌などを指しましたが、文だけでなく色々なことに、いい加減だと言う意味で用いる事ができます。

「推敲」「校正」「校閲」の違いとは??

1つの文章を作り上げ、印刷、頒布にいたるまでの作業に「推敲」「校正(こうせい)」「校閲(こうえつ)」があります。似ているようで違うこの三つの作業について説明しておきましょう。

まず「推敲」は今回の記事で勉強しましたが、詩や文を作った本人が、それをより良い出来にするためになんども語句や内容を練り直すことを言います。そして「校正」は、原稿などが完成した後に誤字や脱字など、文章に誤りがないか確認する作業です。その後に、「校閲」と言う作業に入ります。「校閲」はその文章が誤っていないか、適否を調べる作業です。内容の矛盾や、違法性がないかなど確かめることなどが含まれますね。「校正」と「校閲」は、作者とは違う人が行うのが普通です。文章を手直しすると言う意味では同じ「推敲」「校正」「校閲」ですが、その内容は全然違うものなのですね。

「推敲」を使いこなそう

この記事では「推敲」の意味・使い方・類語などを説明しました。「推敲」は中国の故事成語であることを先述しましたが、普段使われている熟語の中にも中国の故事成語は多くあります。今回は対義語として紹介した「杜撰」も中国の故事成語でした。これらは、一見全く関係のないような漢字で意外な意味を持っているものが多いですから、覚えるのが大変なように思えますね。しかし、エピソードを読んでみると、なかなかに面白かったのではないでしょうか。人はエピソードがあると、記憶にも残りやすいものです。興味を持ったり面白く思うとなおさらでしょう。一見覚えにくい熟語も、語源から学ぶことで楽しくしっかり覚えられるのですね。現代はインターネットも身近にあり、語源を調べることも楽になりました。辞書はもちろん、インターネット等も利用して楽しく学習してくださいね。

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国語言葉の意味

「推敲」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学部卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「推敲」について解説する。

端的に言えば推敲の意味は「文章を練りなおすこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「推敲」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「推敲」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「推敲」の意味や語源・使い方まとめ

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推敲(すいこう)」は、良く知られている故事成語ですから、学校で習った人も少なくないでしょう。ビジネスシーンでも使われる言葉ですから、正しい使い方を覚えておいた方がいいですね。それでは早速「推敲」の意味や語源・使い方を説明していきます。

「推敲」の意味は?

まず初めに、「推敲」の正確な意味や使い方を辞書からの引用で確かめてみましょう。「推敲」には、次のような意味があります。

1.文章の字句を何度も練り直すこと。

出典:新明解国語辞典(三省堂)「推敲」

2.詩文の字句や文章を十分に吟味して練りなおすこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「推敲」

「推敲」は、文章や詩などをより良くするために字句を色々考えて何度も練り直すことです。現在では、レポートや提案書に対して使われることも多いため、ビジネスシーンでもしばしば耳にすることがあるでしょう。自分で書いた文を何度も読み返し、改善し、磨き上げると言うことです。

「推敲」の語源は?

次に「推敲」の語源を確認しておきましょう。ところで、「推」は押す「敲」は叩くと言う意味の漢字なのですが、いったいどうして、「推敲」が文章を何度も練りなおすと言う意味になったのでしょう。「推敲」は故事成語であり、由来は中国の「唐詩紀事」の一節にあります。

昔、唐の時代に賈島と言う詩人が、科挙の試験を受けるため長安にやってきた時のことです。長安の街で、賈島は馬に乗りながら詩を作っていました。そして「鳥は宿る地中の樹 僧は推す月下の門」と言う一句を思いつきます。ですが、賈島は「推す(おす)」を「敲く(たたく)」とした方が良いような気がしてきました。賈島は「推す」と「敲く」がどちらにした方が、良い詩になるか悩みました。ところが、考えにふけっているうちに、賈島は長安の知事である韓愈の行列に突っ込んでしまったのです。賈島はすぐに捕まり、罰せられるところでしたが、行列に突っ込んでしまった理由を聞いた韓愈は漢詩の大家であったため、賈島の失敗を許し、「敲く」の方が良い詩になると教えてくれたのでした。のちに、賈島は韓愈の弟子となり、詩人として大成しました。

このエピソードから、文章や詩を吟味し練り直すことを「推敲」と言うようになったのです。

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