
「酸化還元酵素」とはどんな酵素?化学変化を促進?現役講師が5分でわかりやすく解説します!
酵素は体内でおきる化学反応を促進する、”触媒”となる物質です。酵素の種類や機能について学ぶことは、さまざまな生命活動について理解を深めることにつながる。少し専門的になるが、ぜひチャレンジしてほしい学習内容です。
大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ
生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。
酸化還元酵素
酸化還元酵素(oxidoreductase:オキシドレダクターゼ)は、名前の通り、酸化還元反応を促進する酵素の総称です。体内でおきている様々な酸化還元反応は、この酵素が作用することがきっかけですすみます。
この酵素についてより理解を深めるために、酸化還元反応について知っておきましょう。
酸化還元反応
酸化還元反応は、高校の化学で詳しく学びます。普段の生活で最もイメージしやすい酸化還元反応といえば、「ものの燃焼」や金属の「さび」でしょう。いずれも、物質が酸素原子と化合する化学変化です。酸化とは「酸素原子と結びつくこと」であり、還元はその反対「酸素原子が奪われること」と説明されます。
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もう一段階、酸化還元反応の考え方を拡張したのが、水素原子の授受による定義です。酸化は「水素が奪われること」、還元は「水素と結びつくこと」と説明されます。酸素が含まれていない物質の化学反応でも、水素原子のやりとりがあれば、酸化還元反応が起きていると考えるのです。
さらに、電子の授受による酸化還元の定義が使われるようになりました。酸化は「電子が奪われること」、還元は「電子を受け取ること」です。酸素原子や水素原子がなくても、物質間で電子のやりとりが生じていれば、それは酸化還元反応だといえます。

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生体内でおきる酸化還元反応も、この3種類の定義によるものがそれぞれ存在します。とはいえ、酸素や水素の移動があるということは、それに伴って電子の授受が生じているはずなので、結局はどれも「電子の授受がある酸化還元反応」であると考えることもできますね。
酸化還元酵素は、そのはたらき方によって大別され、それぞれに名前がついています。代表的なものをピックアップしてご紹介しましょう。
酸化酵素
オキシダーゼともよばれます。酸化酵素は、酸素分子と他の物質の間でおきる酸化還元反応で、とくに「酸素分子が水素を受け取る反応」を促進する酵素です。これは、反対に考えると「水素を失った物質=酸化された物質が存在する」ということになります。
反応の結果、酸素原子と水素原子が結合して、過酸化水素もしくは水が生成するのも特徴です。
シトクロムcオキシダーゼ
酸化酵素に分類されるシトクロムcオキシダーゼは、ミトコンドリアの膜に存在している酵素です。シトクロムcという分子と、水素イオン(プロトン)、酸素分子が反応し、水分子などが生成します。
これは、ミトコンドリアが行う呼吸(細胞呼吸または内呼吸)でも、とくに重要な反応。なぜならば、この時生じる電気的なエネルギーがATP合成に使われるためです。
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