
優性の形質の別名
優性形質とは以前までの呼び方で、現在は顕性形質と表現が変わりました。顕性形質へ正式に変更になったのは2017年9月のことで、日本遺伝学会は10年以上も話し合いを続けていたそうです。学問的にはどちらの表現でも全く問題ありませんが、社会の流れに合わせたほうがいいとのことでした。やはり優性・劣性という字はそのアレルが優れていたり・劣っていたりという印象を受けるますよね。しかし、実際はヘテロ接合体の場合に優性形質のほうが表現型として表れやすいというだけで優劣は関係ありません。また、アレルという言葉も以前までは対立遺伝子という表現でした。
最初に優性形質や劣性形質という言葉を使ったのはメンデルでしたね。メンデルがエンドウマメの実験をしている段階では、まだ対立遺伝子や二倍体が発見されていませんでした。なので表現型として表れやすい形質を優性遺伝子と読んだのです。
優性形質の例外
優性の法則によって、親の遺伝子型がわかれば子供に優性形質と劣性形質が何対何の割合で生まれるかが推定できます。例えば1遺伝子雑種でヘテロどうしの交配だと、優性形質と劣性形質の生まれる割合は3:1となるのです。しかし、遺伝子には一部例外があります。これから紹介する遺伝子はメンデルの法則に従わない遺伝子のため、生まれてくる子の表現型の比が優性の法則から計算された値とは異なっているのです。では1つずつ解説します。
致死遺伝子

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遺伝子がある組み合わせになったとき、その個体が生まれる前に亡くなるようにする遺伝子を致死遺伝子と呼びます。ハツカネズミの致死遺伝子を例に説明しましょう。ハツカネズミには体毛を黄色にする遺伝子Yと灰色にする遺伝子yがあります。しかし、Yがホモ接合体になるとその個体は胎内で死んでしまうのです。つまり、ヘテロ同士の組み合わせの交配で黄色:灰色=3:1となるはずが、黄色:灰色=2:1となります。

ハツカネズミの致死遺伝子について紹介したが、ヒトにももちろん致死遺伝子はあるぞ。また、タコは産卵が終わると死んでしまうんだが、これは致死遺伝子が産卵後に発現するためだと考えられているんだ。
不完全優性

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不完全優性とは優性と劣勢の関係が不完全な遺伝子のことです。不完全優性についてはマルバアサガオやオシロイバナでその表現を確認することができます。マルバアサガオでは花の色を赤色にする遺伝子Rと白色にする遺伝子rがあるんですよ。
このヘテロ同士を交配したとき、RRは赤色の花、rrは白色の花の表現型ですがRrだとピンク色になります。マルバアサガオのR遺伝子は色素を合成する酵素に影響を与える遺伝子ですが、rはその酵素の働きを抑制する遺伝子なのです。しかし、Rのほうがrよりも影響が大きいので酵素の合成を完全にい抑えることができずに花の色がピンク色になります。
補足遺伝子

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2種類以上の遺伝子が互いにその表現型を補い合って1つの形質を発現する遺伝子を補足遺伝子といいます。補足遺伝子についてはスイートピーの花を例に解説しますね。スイートピーには花の色素の材料を作る遺伝子Cと、色素の材料から色素を作りだす遺伝子Pがあります。Cはそれ単体では色素を作り出すことができず、必ずPの遺伝子が必要です。
つまり、CCppやCcppという遺伝子型では花の色は白くなります。花に色を付けるためにはCcPpやCCPPなどのようにCとPが揃っている必要があるのです。
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