今日はメンデルの法則で最もなじみのある法則といってもいい優性の法則がテーマです。生物の表現型にはヘテロ接合体になったときに表に出てきやすい形質(優性形質)と、出てきにくい形質(劣性形質)の2つがあるんだったな。ヘテロ接合体になったときに優性形質が発現する法則が優性の法則です。ではヒトではどのような表現型が優性形質かしっているか?
今回はメンデルの法則の1つ、優性の法則について、生物に詳しいライターオリビンと一緒に解説していきます。

ライター/オリビン

医学部の研究室で実験助手として勤務している。日頃から患者さんの遺伝子の解析や細胞培養を行っているため、分子生物学や化学については熟知している。

メンデルの法則とは

メンデルの法則について聞いたことがあるでしょうか?1866年、メンデルは修道院の庭に植えたエンドウの種子の形・サヤの硬さや色・花の位置・茎の高さなどの形質について交配実験を行い、論文としてまとめました。その論文の中でメンデルは̬遺伝の法則として優劣の法則・分離の法則・独立の法則の3つを提唱しており、3つ合わせてメンデルの法則と呼ばれています。メンデルの法則は1900年に3人の研究者によって再発見され、メンデルの法則が再現性のあるものだということが証明されました

 

優性の法則を発見したきっかけ

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メンデルは同じエンドウでも種子にしわのあるものとないもの、背の高いものと低いものなどいろいろな特徴があることに着目しました。生物が持っている特徴を生物学用語で形質と呼びます。また、種子にしわがある・しわがないというように2通りの型があるとき、ある生き物がその一方の形質が表れているときはもう一方は現れません。このような形質のことを対立形質といいます。メンデルは遺伝についての実験を行う際に、この対立形質に着目したおかげでメンデルの法則を発見したのです

純系を作る

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対立形質があるため、メンデルはまず純系を作るところから始めました。エンドウの花を自家受粉して何世代か累代し、1つの形質しか出現しなくしたのです。

優性の法則とは

優性の法則とは

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エンドウの種子の形を例に優性(ゆうせい)の法則について解説しますね。エンドウの種子でしわがあるもの(a)としわがなくきれいな丸形のもの(A)を交配するとします。遺伝子は対になっているため、しわのないきれいな丸形の遺伝子はAA、しわのあるものはaaという遺伝子型になりますね。生まれる子は両親の遺伝子を一つずつ受け継ぐので、子の遺伝子型はすべてAaとなります。このとき、子の形質はずべてきれいな丸形となるんですよ。つまり、きれいな丸の方が優性形質ということになりますね。このように、対立する形質が対となったときは優性形質が現れるようになるという法則が優性の法則です。

\次のページで「優性の形質の別名」を解説!/

優性の形質の別名

優性形質とは以前までの呼び方で、現在は顕性形質と表現が変わりました。顕性形質へ正式に変更になったのは2017年9月のことで、日本遺伝学会は10年以上も話し合いを続けていたそうです。学問的にはどちらの表現でも全く問題ありませんが、社会の流れに合わせたほうがいいとのことでした。やはり優性・劣性という字はそのアレルが優れていたり・劣っていたりという印象を受けるますよね。しかし、実際はヘテロ接合体の場合に優性形質のほうが表現型として表れやすいというだけで優劣は関係ありません。また、アレルという言葉も以前までは対立遺伝子という表現でした。

最初に優性形質や劣性形質という言葉を使ったのはメンデルでしたね。メンデルがエンドウマメの実験をしている段階では、まだ対立遺伝子や二倍体が発見されていませんでした。なので表現型として表れやすい形質を優性遺伝子と読んだのです。

優性形質の例外

優性の法則によって、親の遺伝子型がわかれば子供に優性形質と劣性形質が何対何の割合で生まれるかが推定できます。例えば1遺伝子雑種でヘテロどうしの交配だと、優性形質と劣性形質の生まれる割合は3:1となるのです。しかし、遺伝子には一部例外があります。これから紹介する遺伝子はメンデルの法則に従わない遺伝子のため、生まれてくる子の表現型の比が優性の法則から計算された値とは異なっているのです。では1つずつ解説します。

致死遺伝子

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遺伝子がある組み合わせになったとき、その個体が生まれる前に亡くなるようにする遺伝子を致死遺伝子と呼びます。ハツカネズミの致死遺伝子を例に説明しましょう。ハツカネズミには体毛を黄色にする遺伝子Yと灰色にする遺伝子yがあります。しかし、Yがホモ接合体になるとその個体は胎内で死んでしまうのです。つまり、ヘテロ同士の組み合わせの交配で黄色:灰色=3:1となるはずが、黄色:灰色=2:1となります。

不完全優性

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不完全優性とは優性と劣勢の関係が不完全な遺伝子のことです。不完全優性についてはマルバアサガオやオシロイバナでその表現を確認することができます。マルバアサガオでは花の色を赤色にする遺伝子Rと白色にする遺伝子rがあるんですよ。

このヘテロ同士を交配したとき、RRは赤色の花、rrは白色の花の表現型ですがRrだとピンク色になります。マルバアサガオのR遺伝子は色素を合成する酵素に影響を与える遺伝子ですが、rはその酵素の働きを抑制する遺伝子なのです。しかし、Rのほうがrよりも影響が大きいので酵素の合成を完全にい抑えることができずに花の色がピンク色になります。

補足遺伝子

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2種類以上の遺伝子が互いにその表現型を補い合って1つの形質を発現する遺伝子を補足遺伝子といいます。補足遺伝子についてはスイートピーの花を例に解説しますね。スイートピーには花の色素の材料を作る遺伝子Cと、色素の材料から色素を作りだす遺伝子Pがあります。Cはそれ単体では色素を作り出すことができず、必ずPの遺伝子が必要です。

つまり、CCppやCcppという遺伝子型では花の色は白くなります花に色を付けるためにはCcPpやCCPPなどのようにCとPが揃っている必要があるのです

\次のページで「ヒトにはどんな優性形質があるのか探してみよう」を解説!/

ヒトにはどんな優性形質があるのか探してみよう

優性の法則とは対立遺伝子とヘテロ接合体になったときに、優性形質のほうが表現型として表れるという法則です。優性の法則はメンデルの法則の中で最もメジャーな法則であり、優性の法則を理解していれば生物の交配の応用に活かすことができます。しかし、致死遺伝子や不完全優性といった例外も存在し、これらは優性の法則から導きだした比率で子を得ることができません。

ヒトにはどのような優性形質があるでしょうか。例えば耳たぶの形や髪の毛はわかりやすい表現型なので、両親から遡っていけばどのような表現が優性形質なのかわかると思います。まずは自身の家系から調べてみましょう。

イラスト使用元:いらすとや

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理科生物細胞・生殖・遺伝

メンデルの法則の1つ「優性の法則」とは何?医学部の実権助手が5分でわかりやすく解説

今日はメンデルの法則で最もなじみのある法則といってもいい優性の法則がテーマです。生物の表現型にはヘテロ接合体になったときに表に出てきやすい形質(優性形質)と、出てきにくい形質(劣性形質)の2つがあるんだったな。ヘテロ接合体になったときに優性形質が発現する法則が優性の法則です。ではヒトではどのような表現型が優性形質かしっているか?
今回はメンデルの法則の1つ、優性の法則について、生物に詳しいライターオリビンと一緒に解説していきます。

ライター/オリビン

医学部の研究室で実験助手として勤務している。日頃から患者さんの遺伝子の解析や細胞培養を行っているため、分子生物学や化学については熟知している。

メンデルの法則とは

メンデルの法則について聞いたことがあるでしょうか?1866年、メンデルは修道院の庭に植えたエンドウの種子の形・サヤの硬さや色・花の位置・茎の高さなどの形質について交配実験を行い、論文としてまとめました。その論文の中でメンデルは̬遺伝の法則として優劣の法則・分離の法則・独立の法則の3つを提唱しており、3つ合わせてメンデルの法則と呼ばれています。メンデルの法則は1900年に3人の研究者によって再発見され、メンデルの法則が再現性のあるものだということが証明されました

 

優性の法則を発見したきっかけ

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メンデルは同じエンドウでも種子にしわのあるものとないもの、背の高いものと低いものなどいろいろな特徴があることに着目しました。生物が持っている特徴を生物学用語で形質と呼びます。また、種子にしわがある・しわがないというように2通りの型があるとき、ある生き物がその一方の形質が表れているときはもう一方は現れません。このような形質のことを対立形質といいます。メンデルは遺伝についての実験を行う際に、この対立形質に着目したおかげでメンデルの法則を発見したのです

純系を作る

image by iStockphoto

対立形質があるため、メンデルはまず純系を作るところから始めました。エンドウの花を自家受粉して何世代か累代し、1つの形質しか出現しなくしたのです。

優性の法則とは

優性の法則とは

image by Study-Z編集部

エンドウの種子の形を例に優性(ゆうせい)の法則について解説しますね。エンドウの種子でしわがあるもの(a)としわがなくきれいな丸形のもの(A)を交配するとします。遺伝子は対になっているため、しわのないきれいな丸形の遺伝子はAA、しわのあるものはaaという遺伝子型になりますね。生まれる子は両親の遺伝子を一つずつ受け継ぐので、子の遺伝子型はすべてAaとなります。このとき、子の形質はずべてきれいな丸形となるんですよ。つまり、きれいな丸の方が優性形質ということになりますね。このように、対立する形質が対となったときは優性形質が現れるようになるという法則が優性の法則です。

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