
テロメラーゼや、テロメラーゼの関係する「テロメア」は、近年急速に研究が進んでいる。生物の”死”や”老化”、がんなどの病気にも関係しているとも考えられる、重要な物質です。これからの生命科学で大きな存在となるであろうテロメラーゼについて知っておくことは、決して無駄ではないぞ。
大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ
生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。
テロメラーゼ
テロメラーゼ(telomerase)とは、真核生物の染色体末端に存在するテロメアとよばれる部分を伸長する酵素です。そのはたらきから、日本語では”テロメア合成酵素”と紹介してもよいでしょう。
テロメラーゼの役割や重要性を理解するためには、テロメラーゼがはたらくテロメアについて知っておかなくてはなりません。
こちらの記事もおすすめ

フランクリンとウィルキンスって誰?DNAの構造解明に貢献した2人の科学者について現役講師が5分でわかりやすく解説!
テロメアとは
テロメア(telomea)とは、前述の通り染色体の末端に存在する特別な構造です。真核生物の染色体は、長いDNAの2本鎖とタンパク質によって構成されています。細胞分裂のおきるとき、それぞれの細胞がもつDNAは複製され、新しい細胞に分配されますよね。
2本鎖がほどけ、DNA合成酵素(DNAポリメラーゼ)によってDNA鎖がつくられていきますが…じつはこの時、DNAの末端部分の配列は、複製をすることができません。言い換えるなら、細胞分裂のためDNAが複製される度に、DNAは短くなっていってしまうのです。
それを防ぐのがテロメアの役割なんです!
テロメア部分のDNAの塩基配列は、何かのタンパク質をコードしているというわけではなく、とくに意味がありません。DNAの複製をするたびに短くなっていくのは、このテロメア部分であり、テロメアが短くなることで、生命に必要な遺伝情報に影響を与えないようになっているのです。
逆にいえば、テロメアが短くなり、その構造がなくなってしまった時こそが、DNA複製の限界であり、細胞分裂の限界ということができます。テロメアが失われてしまった細胞は回復せず、それ以上細胞分裂しない”細胞老化”とよばれる状態になるのです。
テロメラーゼの役割
ここまでくれば、テロメラーゼの存在する意味が理解できるでしょう。テロメラーゼは、短くなってしまったテロメアの塩基配列を伸長する酵素です。テロメアが伸びれば、細胞老化までの時間を引き延ばすことができます。
このため、テロメラーゼは「細胞を若返らせる」とか「細胞を不死にする酵素」などといって紹介されたりもするんです。

image by Study-Z編集部
\次のページで「ヒトの細胞のテロメラーゼは?」を解説!/