
蛍光とは?原理と身近な蛍光現象を京大卒の研究員が分かりやすくわかりやすく解説!

今回は蛍光という現象の原理を量子化学の理論を使って説明する。その後に一つ一つの身近な蛍光現象のメカニズムについて考えていこう。京都大学卒のメーカー研究員で過去に蛍光材料を研究したこともある珈琲マニアと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。
ライター/珈琲マニア
京都大学理学部・理学研究科で化学を学び、現在はメーカーの研究員として勤務。過去には発光材料を研究した実績もあり。高校理科の教員免許も所有しており、専門外の人でも理解しやすい説明を心がけている。
1.「蛍光」とはどんな現象?

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みなさんは「蛍光」という言葉を聞いて何を思い浮かべますか。例えば「蛍光灯」や「蛍光ペン」、または言葉の由来となったホタルの光を思い浮かべる人もいるかもしれませんね。
では蛍光という現象はなぜ起こるのでしょうか。なぜ物質が発光することができるのでしょうか。実は蛍光という現象を説明するためには量子化学の理論が必要です。この記事では量子化学の理論を基に蛍光の原理を説明した後、身近にある蛍光現象について一緒に考えていきましょう。
1-1蛍光とは余ったエネルギーが光として放出される現象
蛍光とは物質に溜まったエネルギーが光として放出される現象です。外部からエネルギーをもらった物質は時間とともにもらったエネルギーを放出していきます。例えば沸騰したお湯は時間とともに温度が下がりますよね。これはお湯が持つエネルギーを外に放出するために起こる現象です。
物質がエネルギーを放出する方法は2つあります。一つは先ほどの例のように熱として放出する方法、もう一つは光として放出する方法。そして光によるエネルギーの放出の一つが「蛍光」と呼ばれる現象です。
1-2物質によって放出できる光の波長は決まっている
蛍光現象の大きな特徴は「物質ごとに放出する光の色(光の波長)は決まっている」ことです。この理由は「物質ごとに持つことができるエネルギーの量は決まっている」という量子化学の理論で説明できます。
物質が持つエネルギーをはしごのように書いてみましょう。はしごの一段一段がエネルギーの高さに対応します。このはしごの上から下に落ちるときに、その高さに対応するエネルギーを光として放出する現象が蛍光です。そして上から落ちるときに段と段の間に行くことはできません。はしごの段の幅は決まっているので放出されるエネルギーの量も決まる、すなわち決まった波長の光が放出されるのです。
1-3人は目に入る光の波長で色を判断している

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蛍光現象を深く理解するには人間の目が色を認識する仕組みを理解することも大切です。人間は「赤」や「青」といった色をどのように認識しているのでしょうか。人間は目に入る光の波長から色を認識しています。例えば青は450nmの波長を持つ光、赤は700nm前後の波長を持つ光です。
蛍光現象では先ほど説明したとおり、放出される光の波長が決まっています。つまり物質ごとに特定の色の光を放出するということです。例えばホタルは560nm付近の光を放出します。この波長の光を人間は緑色と認識するため、ホタルは黄緑に光るように見えるのです。

蛍光とは物質に蓄えられたエネルギーを放出する現象の一つだ。物質によって蛍光の色が変わるのは物質ごとに放出される光の波長が決まっていることが原因だ。物質ごとに持つことができるエネルギーが決まっているということは量子化学の重要な考え方なのでしっかり覚えておこう。
次に身近な蛍光現象について一緒に考えていこう。キーワードは物質がどこからエネルギーを受け取り、どのように光を放出しているかという点だ。
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